座談会は駐ニューヨーク台北文化センターと米ペンクラブ「アメリカ・ペン」が共同で開催。「戦争への瞑想」と題し、呉さんに加え、フランスのロラン・ゴデさんやイラク出身で米国在住のサイナン・アントンさんら各地の作家が招かれた。
「自転車泥棒」では、父親の失踪とともに消えた自転車に20年の時を経て再会した主人公が、その自転車の20年間の足跡を辿っていくというストーリーを軸に、1941年の旧日本軍によるマレー半島侵略や、戦争に翻弄されて最後に台湾にたどり着いたアジアゾウ「林旺」(リンワン)などの歴史が織り交ぜられる。
8日に駐ニューヨーク台北経済文化弁事処で取材に応じた呉さんは、作品が放つ強烈な台湾アイデンティティーについて、現代の作家は世界文学の教養を身に付けたせいで、独自性を失ってしまいがちだと言及。その上で、土着化すればするほど世界で独特の地位を築くことができ、注目をされると話す。
今後の作品に関しては、テーマが世界的なものであっても、素材は必ず土着性のあるものにすると明言する。
(尹俊傑/編集:名切千絵)