(台北中央社)戒厳令下の台湾で不審死を遂げた民主化運動支援者の陳文成氏を記念した広場が2日、台北市の台湾大学台北キャンパスで正式に供用開始された。同大の管中閔学長は式典で、広場のオープンは陳氏の事件を教訓に、人権と民主主義を堅持することを台湾に思い起こさせたとし、早期の真相解明を願った。


陳氏は1950年、現在の新北市林口生まれ。同大で数学を専攻し、卒業後に渡米。博士号を取得した。台湾の民主化運動に深い関心を示していた陳氏は反体制派機関誌「美麗島」に寄付をするなどして活動を支援していた。1981年に台湾に帰省した際、公安当局から事情聴取をされ、その翌日に台湾大構内で遺体で発見された。同事件は「陳文成事件」と呼ばれ、真相はいまだに明らかになっていない。


同大は2015年、陳氏の遺体が見つかったキャンパス中心部の一画を「陳文成事件紀念広場」と命名することを校務会議で決めた。だが資金調達が難航し、昨年7月にようやく整備工事が始まった。工事費用は陳文成博士紀念基金会から1100万台湾元(約4120万円)が寄付された。

台湾大の楊子昂学生会長によれば、広場は「空」をコンセプトにデザイン。中央には黒の立方体のオブジェが置かれ、真相が解明されていないことを表した。オブジェは一面に入口があり、中には薄暗い空間が広がる。
牢屋や取調室を象徴しているという。広場のデザインは2016年に公募で選ばれた。

(許秩維/編集:名切千絵)