ビタミンDは神経系において重要な役割を果たすことが分かっている。研究に参加した同院分子・ゲノム医学研究所の荘志立研究員によれば、過去の研究でビタミンDの欠乏と認知症発症のリスクに関係があることが明らかになっており、因果関係ははっきりしていないものの、ビタミンDの補充によって認知症のリスクを下げようとする人も多くいるという。
今回の研究では、国民健康保険(健保)のデータベースを分析。認知症でない65歳以上の高齢者1万4648人を2000年から11年間追跡調査し、活性型ビタミンD3製剤のカルシトリオールの継続的な使用が認知症リスクに与える影響を調査した。研究結果では、カルシトリオール0.25マイクログラムを年間146錠以上服用した人は、認知症を発症するリスクが非服用者の1.8倍だったことが分かった。また、カルシトリオールを年間146錠以上処方された認知症患者は、処方されなかった患者と比較して死亡リスクが2.17倍になることも分かったという。
アルツハイマー病モデルマウスを使った実験では、モデルマウスにビタミンDを投与すると大脳の病変を悪化させ、知能が退化することが明らかになったとしている。
荘研究員は、この研究結果はビタミンDの働きを完全に覆すものではないと強調。高齢者や認知症患者に対し、注意を促すものだとした。
これらの研究成果は2021年と2022年にそれぞれ学術誌「Aging Cell」で発表されている。
(張茗喧/編集:名切千絵)