(ワシントン中央社)米バージニア州に暮らす台湾系米国人の李逸潔さんは、台湾の違法な繁殖場などにいた秋田犬をこれまでに20匹以上保護して育てている。犬の医療費などを工面するため、仕事を二つ掛け持ちする李さんに救われた高齢の秋田犬たちは、海を越えたバージニアの農場で余生を過ごしている。


ある日、野良犬の情報を掲載する台湾のSNSページで秋田犬の情報を目にした李さん。自身が飼っている秋田犬のMomoのことが頭に浮かび、心が痛んだ。一度は野良犬に引き取り手が現れ安心したものの、その後同じ犬の情報が再び投稿された。飼い主に精神上の問題があり返されたということだった。掲載された写真に写った犬の状態は非常に悪く、皮膚は全身ぼろぼろで、傷も多く見られたという。李さんは、もっと早く知っていれば台湾に住む母に様子を確認するよう依頼したのにと自責の念に駆られた。


その時の後悔は心の中でくすぶり続け、2018年、台湾の墓地をさまよっていた秋田犬を友人に依頼して米国まで連れてきてもらった。さらにその翌年、台湾中部・雲林県の違法なペット繁殖場で犬や猫が劣悪な環境にさらされているのを知り、救い出すことを決心した。大きな庭がある田舎の農場へ引っ越した後、友人や有志などの力を借り、秋田犬を次々とバージニアに移送した。李さんが自宅で飼う犬の数は、最も多い時期で21匹に上った。

犬の航空輸送や検疫にかかる費用の金額は大きいが、李さんはこれらは一度だけの支出で、むしろその後の世話で生じる医療費こそが最も重い負担だと明かす。現在は犬のために看護師の仕事を二つ掛け持ちし、週5日、1日12時間の勤務をこなしている。


韓国人の夫を持つ李さん。李さんの犬の世話への執着に夫が耐え兼ね、一度は別居協議に署名するまでに発展したこともあるという。二人は話し合いを重ね、現在は交代で犬の世話をしている。李さんは、全ての費用は自身が負担し、秋田犬を二人の間の足かせにはさせないと夫と約束した。「犬たちは皆、私が自分の手で救い出した。一匹一匹が生命で、今助けなかったら犬たちはひどいことになってしまう」と犬の世話への決意を語った。


(鍾佑貞/編集:田中宏樹)