(台北中央社)半導体受託製造世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の機密情報を不正に取得した事件で、知的財産・商業法院(裁判所)は1日、国家安全法違反などの罪で起訴された同社元従業員ら被告3人について、勾留と接見禁止の継続を決定した。口裏合わせや証拠隠滅の恐れがあると判断した。


裁判所は、3人は犯行を認めている一方で、犯罪の状況や手段、目的に関する供述が前後で食い違い、重大な部分を避ける傾向があったと指摘。また検察官が法廷で、他にも関与した可能性がある法人や個人が存在し、現在捜査中だと明らかにしたことを説明した。

3人は同僚または元同僚で、通信アプリを通じて随時連絡を取り合うことが可能であり、事件発覚後には通信アプリの会話記録を削除するという証拠隠滅とみられる動きが確認されたとし、口裏合わせや証拠隠滅の恐れがあると認定するに足る事実があるとした。

裁判所は、3人の行為は国家の安全や産業競争の秩序に深刻な影響を与えたとし、保釈、身元引受または住居制限などでは、今後の審理や判決確定後の刑罰執行手続きの円滑な実施を十分に確保できないとし、勾留の必要があると結論付けた。

台湾高等検察署(高検)知的財産検察分署の起訴状によれば、3人のうち1人は元TSMCのエンジニアで、後に半導体製造装置大手、東京エレクトロン(TEL)の台湾子会社に入社し、マーケティング部門で勤務していた。この男はTEL入社後の2023年下半期から今年上半期にかけて、当時TSMCに在籍していた被告2人に中核的技術や営業秘密の提供を繰り返し要求し、表面加工に用いるエッチング装置の業績改善に役立てていた。TSMCが年内に量産開始予定の回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートル半導体のエッチング工程で、量産装置の供給資格を得るのが目的だったという。

異常に気づいたTSMCが内部調査を実施したところ、在職者と元従業員が中核的技術と営業秘密を不正に取得した疑いが浮上し、7月8日に告訴した。知的財産検察分署は同25日から28日にかけて関係先を家宅捜索し、8月5日に3人への勾留請求が裁判所に認められた。同27日に国家安全法違反などで3人を起訴し、最大で懲役14年を求める意見を出した。

(林長順/編集:名切千絵)
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