
歴史における英雄の偉業は皆が知るところだろうが、それ以外のことはどうだろう?
例えば、有名なローマ皇帝はどんな香りを漂わせていたのか? 考えてみたことはあるだろうか?
古代の香りの普及活動を行っている「香りの文化観光協会」(SCTA)がかのユリウス・カエサルが使用していたという香水「テリナム」を再現させた。
シンプルな調合の香水を好んだ古代ローマ人
ローマ人はシンプルな調合の香りを好んだそうだ。バラ油と剣闘士の汗を調合したロジウムは、古代ローマでもっとも広く使われていた組み合わせだという。
剣闘士の汗や体についた泥はその血よりも価値があり、彫刻や絵画にも使われるほど貴重だったらしい。
古代ローマでは、ロジウムとバラ、スイセンとクロッカスやサフラン、メトピウム(ウルシ科の植物)とビターアーモンドの組み合わせはもっとも好まれた。
しかし、皇帝がまとう香りは間違いなくもっとも特別なものだったことだろう。
とくに高官、将軍、聖職者、富裕層は他者との差別化をはかるために、世界中から珍しい香水を取り寄せたり、当時の一流調合師に特別な香水を作るよう注文したりした。
ユリウス・カエサルが使用していた香水の香りを復元
今回のカエサルの香水の復元は、シヴァス・クムフリエット大学のチャンケル・アティラ准教授指導の下、ミラノの調合師たち、著名な香水デザイナーであるビヒター・トゥルカン・エルギュル氏の専門知識を得て実施された。
その結果、じっくり時間をかけて完成した香水は、ロックローズ(ハンニチバナ)から柑橘類、ウード(沈香)からアンバー(バルサム)まで古代の香りが凝縮されている。
古代ローマ最大の野心家とも言われる、ガイウス・ユリウス・カエサル(紀元前100~44年)は、共和政ローマ末期の政務官であり、文筆家でもあった。
「賽は投げられた」(alea jacta est)、 「ブルータス、お前もか」(et tu, Brute?) などの特徴的な引用句でも知られる。
また彼が布告し彼の名が冠された暦(ユリウス暦)は、紀元前45年から1582年まで1600年間以上に渡り欧州のほぼ全域で使用され続けた。
彼は将軍時代にヨーロッパ、アナトリア、ギリシャ、エーゲ海諸島、エジプト訪れていて、香水や化粧品が古代の地中海世界で非常に人気があることを知り、商業的な市場として大きな可能性を秘めていることを知っていたのかもしれない。
香り文化観光協会はこのような声明を出している。
カエサルは誰もが知る有名な将軍かつ独裁者で、そのライフスタイルや服装は常に人々の注目を集めていました
当然、彼が使用していた香水も関心の的だったことでしょう。
カエサルの香水はどんな香りがするのか、その成分はなんなのか、どこで手に入れたのか、誰が調合したのか、人々の好奇心を大いに刺激したはずです古代の作家やカエサルの親しい友人が遺した記録から、彼が使っていた香水の成分はほぼ判明しています
香水デザイナーのエルギュルが手がけた香水は、考古学的、歴史的データにきちんと照らし合わせて決定された香りなのです
この香水には、ミント、バラ、レモン、ベルガモット、ラベンダー、ジャスミン、スイレン、スミレ、ウードシダーウッド、パチョリ、アンバーなどに加え、古代で非常に人気があったが入手困難だったアイリスの花やロックローズも含まれているという。
この香水は10月から、トルコ、フランス、イタリアで販売される予定だ。