
パプアニューギニアで55年ぶりに希少なタカ科の「オオハイガシラオオタカ(Accipiter princeps)」の姿が撮影されたそうだ。
オオハイガシラオオタカは、パプアニューギニアのニューブリテン島にのみ生息する猛禽類で、IUCNのレッドリストでは絶滅の危険性が高い「危急種」に分類されている。
最後にその存在が科学的に記録されたのは1969年のこと。それ以来、見たという話しはあっても証拠はなく、本物かどうかはわからなかったのだが、55年ぶりにカメラの前に姿を現してくれた。
55年ぶりにオオハイガシラオオタカをカメラでとらえることに成功
その珍しい写真を撮影したのは、フィジーを拠点に活動する写真家のトム・ヴィールス氏だ。
ヴィールス氏は、世界自然保護基金(WWF)との調査のために、地元住民に案内されながらニューブリテン島東部ポミオで鳥の撮影をしていた。その中に「オオハイガシラオオタカ」の姿が映っていたのだ。
ヴィールス氏はWWFのプレスリリースで、「その時はその重要性に気づきませんでした」と語る。
写真の鳥がオオハイガシラオオタカであると確認したアメリカ鳥類保護協会のジョン・ミッターマイヤー氏によれば、この鳥の最後の科学的な記録は「1969年7月にアメリカ自然史博物館に収蔵された標本」であるとのこと。
それ以降、目撃したという話はあっても、写真・音声・標本といったきちんとした形で記録されることはなく、本物である確証はなかった。
地元住民たちにとってもオオハイガシラオオタカは珍しい。
海沿いにはおらず、ポミオの奥地でごく稀にだけ目撃されるという。なお地元では、「keango(ケアンゴ)」や「kulingapa(クリンガパ)」と呼ばれているそうだ。
豊かな生態系を持つパプアニューギニア
パプアニューギニアには、アマゾンやコンゴ盆地に次ぐ、世界で3番目に大きな熱帯雨林が残されている。
そこは5000以上の湖、広大な河川や湿地、8000km以上に及ぶマングローブの湿地など、多種多様な自然で織りなされる生態系の宝庫だ。
その一方、オオハイガシラオオタカが生息するニューブリテン島では、これまであまり生物多様性の調査が行われてこなかった。
そのため新種が発見される可能性は高いが、世界のあらゆる地域と同じく、そこに暮らす生き物たちにも危機が迫っており、保全のために残された時間はそう多くはない。
オオハイガシラオオタカが撮影された森は、世界遺産の暫定一覧に掲載される「サブライム・カルスト(Sublime Karsts of Papua New Guinea)」にある。
そこは古来よりメンゲン族(Mengen)とマムシ族(Mamusi)が守ってきた土地で、WWFは彼らと協力してコミュニティ主導型の保全活動を進めているそうだ。
写真を撮影したヴィールス氏はこう語る。
この写真が”失われた種”を初めてとらえたのものだと聞いてとても驚きました! 保全写真が生物多様性を記録し、保護の役に立つのなら素晴らしいことです