狼は人間が飼いならしたのではなく、自ら望んで犬となったとする研究結果
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 犬が誕生した理由は、かつて人間がオオカミを家畜化し、現在の最良の友へと進化させたと、という考えが一般的だったが、必ずしもそうではなかったのかもしれない。

 2025年2月にアメリカの研究者が発表した論文[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2024.2646]によると、むしろオオカミたちのほうが自ら人間のそばで暮らす道を選んだ可能性があるという。

 この研究では、オオカミの進化をコンピューターでシミュレーションし、オオカミがどのくらいの期間で犬になったのかを調べた。意外なことに、その期間は考えられていた以上に短かったのだ。

オオカミはどのようにして犬となったのか?

 犬は今や、人間にとって大切な仲間だ。ペットとして可愛がられたり、警察犬や盲導犬として働いたりしている。その先祖はオオカミ(狼)であると考えられている。

 オオカミが犬へと変わる過程は、2つの時期に分けられるとされる。最初の変化は3万年前から1万5000年前の間に起こった。

 そして、2回目の家畜化が1万5000年前から現在までの間に進行した。この2回目の家畜化こそ、科学者の間で最も議論されている部分だ。

 どのようにしてオオカミは犬へと変わっていったのだろう。

 これまでの説では、

・人間が特におとなしい性質のオオカミの子どもを人為的選択して交配した

・オカミが人間の食べ残しを求めて近づくうちに、だんだんおとなしい性格になった

 などが主流だったが、オオカミが犬に進化するにはもっと長い時間が必要ではないか?という疑問もあった。

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シミュレーションが示したオオカミの進化の速さ

 この疑問を解くため、アメリカのウィスコンシン大学ラクロス校、テネシー大学、ヴァルパライソ大学、ジョージア工科大学の研究者たちは、コンピューターシミュレーションを用いて「人間に対する寛容性」というオオカミの特徴を進化させる実験を行った

 「人間がどれくらいの食べ物をオオカミに分け与えたか?」、「おとなしいオオカミ同士がどのくらい交配したか」といった条件を設定し、コンピューターで1万5千年間の進化の様子を計算した。

 その結果、条件がそろえばわずか8千年でオオカミが犬に進化することがわかったのだ。

 また、何度もシミュレーションを行ったところ、オオカミが犬になる確率は37%から74%だった。

 つまり、かなりの高い確率でオオカミは犬になったことが示された。

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オオカミは自らの意思で犬になった可能性

 この研究が示したのは、「オオカミは人間に飼いならされたのではなく、自ら進んで犬に進化していった可能性がある」ということだ。

 これは「自己家畜化(じこかちくか)」と呼ばれる現象で、おとなしくて人間に対して友好的な個体が生き残り、子孫を残すことで、自然に家畜化が進むという考え方だ。

 もちろん当初は、人間の食べ残しを求めてという目的だけど、お互いがお互いを必要とした結果、犬化が進んだであろうことは想像に難くない。

 これまでの研究では、オオカミが犬になるには1万5千年以上かかると考えられていたが、今回の研究は、それよりも短い期間で進化が起こる可能性を示した。

 この結果は、オオカミと人間の関係を考える上でとても重要だ。これからの研究で、DNA分析や考古学の調査が進めば、オオカミが人間にフレンドリーな犬になった過程や詳しい経緯がわかるかもしれない。

 かつてのオオカミが例え食べ物目的とは言え、自ら人間に寄り添うように進化していったかもしれないというこの研究結果は、ますます犬を愛おしい存在に感じさせるよね。

 この研究は『Proceedings of the Royal Society B[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2024.2646]』誌(2025年2月12日付)に掲載された。

References: Royalsocietypublishing[https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2024.2646] / Phys.org[https://phys.org/news/2025-02-simulation-wolves-domesticate-evolve-dogs.html] / Vice.com[https://www.vice.com/en/article/wild-wolves-became-dogs-for-easier-access-to-snacks/]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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