
「飼い主と犬は似ている」と良く言われているが、科学的にも裏付けがある現象のようだ。
カナダ、サスカチュワン大学の心理学者レナータ・ロマ博士によると、犬と人との間には「見た目」や「性格」における共通点が見られるという。
特に純血種の犬では、その傾向が顕著であり、それは私たち人間の進化が関係しているという。
犬と人間に共有する類似性を理解することは、両者のより良い関係を築く重要なヒントになるかもしれない。
飼い主と犬は本当に似ているとする最新研究
「飼い主と犬は本当に似ているのか?」犬好きなら気になるこの疑問に答えるために、ロマ氏は『Personality and Individual Differences[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0191886924003441]』誌に発表された2025年2月の研究内容を紹介している。
これは、飼い主と犬に見られる外見と性格の共通点を15件の実証研究から分析したもので、結論から言うとやはり飼い主と犬は似ているのだ。
特に純血種の場合、人は自分に容姿が似た犬を選ぶ傾向があるようだ。
性格面では、外向性、不安傾向、社交性といった特性で、犬と飼い主の間に共通点が多いことが確認された。
また、純血種を選ぶ傾向がある人は、自分と似た見た目の犬を選ぶことが多いことも報告[https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.2752/089279399787000336]されている。
たとえば、長髪の女性は耳の長い犬を、短髪の女性は耳の短い犬を好む傾向があった。
また飼い主と犬とでは、なぜか目がよく似ていることを示している研究[https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.2752/175303713X13795775536093]もある。
さらに飼い主と犬の体型にも相関関係[https://www.cambridge.org/core/journals/public-health-nutrition/article/overweight-in-dogs-but-not-in-cats-is-related-to-overweight-in-their-owners/49687088BE3E4AA298B2388AEF370586]があることも確認されている。これは両者が同じような生活スタイルで暮らしていることが関係している可能性がある。
ロマ氏は、ここで1つ重要なポイントを指摘している。それはこうした研究の多くが、飼い主へのアンケート調査をもとにしていることだ。
つまり、ここで述べられていることは、すべて飼い主がそう思っているだけである可能性もある。
そこで彼女が紹介するのが2004年のカリフォルニア大学の研究[https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/j.0956-7976.2004.00684.x]だ。
この研究では、飼い主とも犬ともまったく面識のない人に、それぞれの写真を見せて、どの犬がどの飼い主のものか当てさせている。
驚いたことに、このときの参加者たちは、ほとんどの組み合わせを正解できたという。つまり、飼い主と犬は客観的にも似ているだろうことが示されたのだ。
なぜ飼い主と犬は似るのか?
では、なぜこのようなことが起こるのだろうか? ロマ氏は仮説として、人が自分と似た者を求めるよう進化してきた可能性を指摘する。
私たちは社会的な生き物だが、集団を作る際、ある程度予測ができるまとまりのある集団の方が、協力しやすく、生存の確率が高くなると考えられる。
だから、現代においても、私たちは価値観や行動パターン、さらには外見が似ている者と付き合おうとする。
そしてこのことが人間関係だけでなく、犬との関係にも影響しているのかもしれないというのだ。
それは特に純血種の犬と暮らす人に顕著であるという。
というのも、純血種は雑種と違い、行動や性格がある程度決まっており、飼い主が犬を選ぶ際、そうした特徴を予測しやすいことが背景にあると、ロマ氏は指摘する。
また別の仮説として、飼い主と犬が一緒に暮らす中で、お互いに観察・学習し合ったりすることで、徐々に似ていく可能性も考えられる。
それはしつけなどを通じても行われるが、必ずしも意図的な影響だけとは限らないという。
実際、犬の性格が、まるで飼い主に寄り添うように時間とともに変化することを示した研究はある。
このように飼い主と犬が似ている理由を探ることは、単なる科学的な好奇心にとどまらず、犬と人とのより充実した関係を築くヒントになるだろうと、ロマ氏は語る。
必ずしも「似ている」ことが良い関係の条件ではない
もしもあなたが愛犬とあまり似ていないと案じていたとしても、心配はいらない。それでも素晴らしい関係を育むことは十分できると、ロマ氏は述べている。
たとえば、あなたはインドア派だが、ワンちゃんは外で遊ぶのが大好きな子だったとしよう。
そんなワンちゃんだからこそ、あなたを外へ連れ出して、散歩や屋外での時間といった健康的な習慣をうながしてくれるかもしれない。
そんなふうにでこぼこコンビだったとしても、お互いにないところを補い合うことで、より一層堅い絆が育まれるかもしれないのだ。
また、「お互い似たもの同士?」という感覚は必ずしも最初からあるわけではない。人間関係と同様に、一緒に過ごすうちに少しずつ育まれることもある。
そして最後にロマ氏はとても大切なことを指摘している。それは、そもそも私たちと犬を結びつけているのは、「似ていること」そのものではないということだ。
たしかに似ていることで距離が近くなることはあるかもしれない。
だが人と犬が絆を育むのに似たもの同士である必要はない。
何よりも重要なのは、お互いに助け合えるか、違いを受け入れられるか、理解し合えるかどうかなのだ。
References: Do people really resemble their dogs?[https://theconversation.com/do-people-really-resemble-their-dogs-255088]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。