
エベレストは熟達した登山者が一度はチャレンジしたいと思うであろうヒマラヤ山脈にある世界最高峰の山だ。
地殻変動などの影響によって標高は年々変動しており、現在その標高は8,850mと考えられている。
世界中の登山者がその山頂を目指していくが、志半ばで命を落とすものも多い。遺体はそのまま雪に埋もれてしまうのだが、最近様子が変わってきた。
エベレストの氷河が溶けて、無数の登山者の遺体が露わになってきているのだという。
【気候変動で進行する氷河の融解】
エベレストの山頂を目指す危険な道のりには、落氷、険しい地形、肌を刺すような寒さ、高山病など、いくつもの障害が待ち受けている。
これまで5000人ほどの登山家が登頂に成功しているが、そこで命を落とした者も300人以上はいるとされている。
死者の遺体は、そう簡単に回収することができないため、やがて雪と氷に覆われ、いつまでもそこに横たわっている。
ところが、気候変動、地球温暖化の影響によって氷の融解が進み、いくつもの遺体が露出しているのだという。
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エベレストの氷河がどんどんと解けているのは事実だ。昨年の調査で、エベレストの氷が例年以上に温かくなっていることが判明した。
イギリスの調査チームがクンブ氷河を掘削して温度を計測してみたところ、最低の温度でもマイナス3.3度もあった。一番冷たい氷であってすらも、年間の平均気温より2度も高かったのだ。
さらに4年前の調査でも、解けた氷から流れ出た水によって、クンブ氷河に点在する池が拡大していることが明らかになっていた。
2016年には、エベレストの麓にあるイムジャ湖の水位が、雪解け水によって危険なほど上昇してしまい、ネパール軍がわざわざ排水を行わねばならないという事態まで生じた。
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【解けた氷から露わになる数々の遺体】
このように氷の融解が進むことで、かつて雪と氷に覆われていた数多くの登山家の遺体が露出し始めている。
そうした遺体が特に多く見られるのは、エベレストでも一番危険な地点であるクンブ氷瀑である。
ここは氷塊が前触れもなく落下してくるうえに、氷河がたった1日で大きくすべり落ちることがあるという難所だ。
2014年には、落ちてきた氷の下敷きとなって、一度に16名のシェルパが帰らぬ人となるという悲惨な事故もあった。
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【遺体を下山させるには危険が伴う】
そうした犠牲者の遺体を下山させるのは、細心の注意を払っても危険がともなう作業である。
しかも、たとえば遺体の運搬にネパールの役人の同伴が必要になるなど、法的な制約もあるために、遺体の搬出にかかる費用はおよそ440万~880万円ときわめて高い。
一方で、登山家のアラン・アーネット氏は、BBCのインタビューに対して、「ほとんどの登山家は、万が一、登頂中に命を落としたとしても、そのまま山に残しておいてもらいたいと願うだろう」と話している。
山頂付近に横たわる「グリーンブーツ」など、取り残された遺体の中には、ルートの目印になっているものまである。
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References:Dead bodies are emerging from Mount Everest's melting glaciers/ written by hiroching / edited by parumo
追記:(2019/4/4)本文を一部訂正して再送します。
記事全文はこちら:エベレストの氷が解けてあらわになった無数の登山家の遺体(ネパール) http://karapaia.com/archives/52272745.html
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