新型コロナウイルスによって、世界中でマスクが不足している状態にあるが、マスクを着用していることによる弊害もある。マスクを付けたままではFace ID(アップル社開発の顔認証システム)が作動しないからだ。
その問題に対応する為、アメリカのサンフランシスコにあるベンチャー企業が、ユーザーの顔にカスタム印刷されたマスクで顔認証できる独自のN95マスクを開発中だ。
【ユーザーの顔の下半分をマスクにカスタム印刷】
マスク装着中は何度も取り外してFace ID認証をしなければならないとなると、折角マスクをしている意味も薄れてくる。
そもそもマスクは正しい付け方をしないと効果はないと言われているし、同じマスクをするなら、外す前には手の消毒が必要だ。
そこで、サンフランシスコでベンチャー企業を経営し、プロダクトデザイナーかつビジュアルアーティストとしても活躍するダニエル・バスキンさんが生み出したアイデア商品が、「顔認証マスク」だ。
Made this service that prints your face on an N95 mask, so you can protect people from viral epidemics while still being able to unlock your phone.
— Danielle Baskin (@djbaskin) February 15, 2020
+=https://t.co/SXslSjoiMz pic.twitter.com/rByMBwdPB8
病院でよく使用されている米国労働安全衛生研究所のN95規定をクリアし認可された微粒子用マスク「N95」を使用して、ユーザーの顔の下半分をマスク自体にカスタム印刷することで、マスクをしていないようなリアルな口元が出来上がり、顔認証もマスクをつけたまま可能にすることが狙いだ。
そしてこのマスクは、もちろん普通のマスクのように、感染予防対策やその他の体の保護を目的としても使用できる。
【Twitterが拡散し、一部では批判の声も】
2月15日にバスキンさんがシェアしたTwitterでの投稿は大きな反響を呼んだ。
普通のマスクでは生体認証データを使用してのアクセスは困難ですが、ウイルス流行の間、マスクを取り外さなくても簡単にスマホにアクセスできるN95のマスクを開発中です。
しかし、これには一部ユーザーから「世界的にマスク不足時に、このプロジェクトのためにマスクを買い占めるつもり!?」といった批判の声が寄せられた。
これについてバスキンさんは次のように回答している。
このプロジェクトのために私がマスクを大量購入することはまずありません。マスク不足問題が解消してから、開発を更に進め、生産に入る予定です。
私が今使っているN95のマスクは2016年に購入したものです。仕事で化学薬品を扱うこともあるため、装着しています。
【ジョークなの?どうなの?】
顔認証の技術は3Dマッピングに依存していることから、果たしてこのマスクが実際に顔認証に効果を発揮できるのかどうかは疑問だ。
そうした疑問を声にするユーザーに対して、バスキンさんはこのように応えている。
You’d just set your face wearing mask as a new face! The camera will detect that a -Face Is There- so it can do the scanning process.
— Danielle Baskin (@djbaskin) February 15, 2020
Sort of like when you get new glasses.
マスクした顔を新しい顔に設定すれば問題ないと思います。新しいメガネをかけた時と同じように、検出プログラムでスキャンプロセスを実行できるはずです。
とはいえ、今のところはテスト&開発中であり、顔認証マスクとしては通用するかどうかも証明されていないそうだ。
バスキンさんの企業サイトにもこのプロジェクトの開発に関する記載があるが、新型コロナウイルスが蔓延している時期が時期だけに反応が微妙であり、「これってジョークなの?」という声が寄せられているという。
YesともNoとも言えます。ウイルスはもちろんジョークではありませんから、しっかり予防して頂ければと思うのですが、マスク開発については深刻ではないけれどもジョークでもないですし、プロジェクトが実行されないとも限りません。
このプロジェクトにはディストピアのユーモアがあるので、そんな製品を製造するのが当社の目標ですから。販売価格は40ドル(約4500円)を予定しています。(バスキンさん)
【顔認証アイデアから別の可能性を引き出す声も…】
顔認証目的で開発中のマスクだが、バスキンさんのTwitterにはあるユーザーからこのようなコメントが寄せられた。
It is very much not a joke. If you want to bridge this into hospital and patient care-- there's a need for this. I made some rudimentary masks years back to cut the tension for chronically ill PTs in isolation. And especially in children's hosp.
— ArtistDominic (@ArtistDominic) February 16, 2020
Well Done.
They can be "fun" masks, and probably fizzle out when the virus chic is over. But it could really have lasting impacts in the patient experience field.
— ArtistDominic (@ArtistDominic) February 16, 2020
I photographed all the doctors, nurses that came in my isolation room. Then just printed and taped it on the masks for them.
自分が患者として病院に入院していた時、一時期隔離されていたことがあったんだけど、部屋に入って来た医師や看護師の写真を撮影して、プリントしてそれをテープでマスクに貼り付けたんだ。
もし、あなたのアイデアが本格的に製品化されるなら、面白いマスクである以上に、いいアイデアだと私は思う。
特に小児病院では、スタッフがこのマスクをしていると子供たちの不安を取り除いていいんじゃないかな。自分の経験上、医師と患者間の緊張も和らぐと思う。
これを見たバスキンさんは、このように返信している。
なるほど、興味深いですね。単なるファッションアクセサリ的に、面白さだけを考えていたけれど、病院でのこのマスク使用はいいアイデアかも。患者にとっては目しか見えない医師や看護師の姿は表情が読み取れなくて落ち着かないものですものね。確かに、このマスクだといい雰囲気が生まれそう。
マスクの不足問題が解決される頃、このアイデアがまだ生きているか否かは不明だが、バスキンさんのTwitterによって、多くのユーザーがマスクには病気感染予防や煙吸引防止といった体を保護するための使用途以外にもユニークな可能性があることを知ったようだ。
というか現在、本当にマスクはどこも売り切れで、Amazonでは法外な値段、もしくは法外な送料で売られているのが現状である。
マスクが感染予防に効果があるのかどうかは疑問視する声もあるが、人にうつさない効果はあるようだ。とは言え正しい付け方をしないと意味がないので注意しよう。
[動画を見る]
マスクの正しいつけ方(亀田総合病院 感染対策チーム)
References:mashable.comなど / written by Scarlet / edited by parumo
記事全文はこちら:マスクをしたまま顔認証できる。ユーザーの顔をカスタム印刷したマスクが開発中(アメリカ) http://karapaia.com/archives/52288111.html