
本物の眼球をしのぐ人工眼球 image by: @MikeWehner
これまで、SFの中でしか語られて来なかった各種のサイボーグ技術が現実の物となりつつある。人工心臓、筋電義手、人工内耳などの開発が進む中、実際の人間の眼球の性能をしのぐほどの高性能な人口眼球が開発中だそうだ。
その人工眼球は、人間の眼球の構造をベースにしており、光に対する感度は本物に匹敵するという。反応速度ならすでに本物を凌駕しており、視力の点でもそれを上回るポテンシャルを秘めている。
【網膜の構造をモデルにした人工眼球】
この人工眼球を開発しているのは、香港科学技術大学のファン・ジヨン氏率いる研究チームだ。将来的には、義眼として使ったり、ヒト型ロボットに応用したりできると語る。
人間の目に備わった広い視野と高い解像度は、眼球の裏側にあるドームのような形をした網膜のおかげだ。
ジヨン氏らが網膜の構造をベースに作った人工網膜には、湾曲した酸化アルミ膜に、「ペロブスキー石」という感光素材で作られたナノセンサーが釘のように打ち付けられている。
人工網膜には配線がつながれ、これを経由してセンサーの情報が外部の処理回路へと伝えられる。ちょうど視神経が眼球からの信号を脳に伝えるのと同じだ。
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H. Jiang/Nature 2020
【光感度は同等、反応速度は本物を凌駕】
開発された人工眼球の光に対する感度は、人間の眼球と同等なので、普通の人が見通せる程度の暗闇ならきちんと機能してくれる。
さらに光の変化を検出する速度は30~40ミリ秒――これは40~150ミリ秒かかる人間を凌駕している。
一方、視野の広さは100度なので、150度の人間には今のところ敵わない。それでもよくあるイメージセンサーが70度であることを考えれば、ずいぶんマシだ。
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【理論上は圧倒的な解像度を実現可能】
またあくまで理論上ではあるものの、人工眼球は本物よりもずっと高い解像度を実現できるポテンシャルを秘めている。
そこに搭載される光センサーは1平方センチあたり4億6000万個。人間の網膜内にある光を感じる細胞が1000万個だから、量の点では圧倒的に上回っているのだ。
ただし、この光センサーの性能をフルにはっきするためには、各センサーの情報を個別に扱えなければならない。
現時点では、そこに接続される配線の太さは1ミリもある。したがって、センサーすべてに配線をつなぐことはできない。せいぜい100本もつないで、100ピクセルの映像を得られるくらいであるそうだ。
この研究は『Nature』(5月20日付)に掲載された。
A biomimetic eye with a hemispherical perovskite nanowire array retina | Nature
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01420-7
References: BGR/ written by hiroching / edited by parumo
記事全文はこちら:サイボーグ技術すごい。人間の眼球をしのぐほどの高性能な人工眼球が開発中(香港研究) http://karapaia.com/archives/52291199.html
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