金星の生命体の故郷は地球?地球をかすめ飛んだ隕石が、金星に生命を運んだという仮説(米研究)

金星の生命体は隕石によってもたらされた?/iStock
 金星の大気から生命の存在を示すバイオシグネチャーが検出されたと発表があり、大きな注目を集めたのはつい先日のことだ(関連記事)。

 もしも本当にそこに生命が存在するのだとしたら、それは天文学史に残る大発見になることは間違いない。
だがもしかしたら、それは他の惑星からもたらされたものかもしれない。

 ハーバード大学の研究者によれば、もし金星に生命が存在するとしたら、それは地球をかすめ飛んだ隕石によって運ばれた可能性があるのだという。とすると金星の生命体の故郷は地球ということになる。
【金星で検出されたバイオシグネチャー】

 金星の大気の中から検出されたバイオシグネチャー(生命が存在する証拠となりうる物や現象)は、「ホスフィン(リン化水素)」という化合物だ。

 これは少なくとも知られている範囲では、生命がいる場所でなければ自然には発生しないはずのものだ。ゆえにその存在は、生命の存在をも示すサインとみなされている。


 もちろん、金星ならではの珍しい化学反応によってホスフィンが発生した可能性もある。だから、地球外生命が存在すると、現時点ではっきり断言することはできない。

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【金星にいるかもしれない生命の故郷は地球!?】

 もし、仮に金星に生命が存在したとしても、それが金星独自の生命であるとは限らないようだ。

 長い歴史の間には、彗星や小惑星が衝突したことで宇宙へ吹き飛ばされ、太陽の重力につかまった地球の岩石などたくさんある。

 また、異常なほどに丈夫な微生物もたくさん知られている。その一部が少々過激な宇宙の旅を生き延びていたとしてもおかしくはない。


 実際、同じようにして火星から地球にやってきた岩石なら実在しており(たとえばティシント隕石)、研究者の中には地球の生命の起源は火星にあると考える者もいるくらいだ。

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【地球にニアミスして微生物を誘拐】

 だが、ハーバード大学のアヴィ・ローブ教授とアミール・シラージ氏は、もう少し穏健な宇宙旅行を想定している。それは地球の大気上部をかすめ飛んだ隕石が金星まで微生物を運んだというシナリオだ。

 彼らの発想のヒントになったのは、2017年にオーストラリアの西部から南部にかけての上空を燃えながら通過した隕石であるという。その年の7月、直径30センチ、重量60キロの隕石が90秒ほど地球の大気上部をかすめ、宇宙空間へ戻っていった。

 『Life』(4月17日付)に掲載されたローブ教授らの試算によると、このとき隕石はおよそ1万匹の微生物をさらっていったという。


 また別の試算によれば、太陽系の一生の間に、地球にニアミスして生命をさらい、系外惑星系に捕獲される30センチクラスの天体の数は1000万~10億個。そうした中で、生命を生きたままさらうことができる天体の数は10~1000個であるという。

【地球を突破し、金星に衝突する隕石の数は?】

 それが多いか少ないかは、人それぞれの判断によるだろう。しかし地球と金星の間に限定するならば、そうした天体はぐっと増える。

 『arXiv』(9月20日投稿)で公開されている両氏の新しい研究論文では、そうした天体が金星に到着する確率を計算している。

 それによると、過去37億年(太陽系の小惑星帯が安定していた期間)で、少なくとも60万個の岩石が地球の大気を突破し、10万年以内に金星に命中しているのだという。
そして、この程度の時間なら、タフな微生物ならばどうにかなるそうだ。

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【地球と金星で生命の交換があった可能性も】

 また逆方向の軌道についても同じことが言える。つまり、仮に金星で誕生した生命が存在したとすれば、それを乗せて地球に到達した岩石があってもおかしくはないということだ。

 だが、論文によれば、仮にそのようなことがあったとしても、異世界に到着した生命の起源を区別することはかなり難しいようだ。

 今回、本当に金星で生命が直接発見されたとして、それが地球由来の生物なのか、それとも金星由来の生物なのか証明することは不可能かもしれないという。

【灼熱地獄のような金星で生命は見つかるか? 続報に期待】

 もちろん、これはただの仮説であって、あくまで可能性が論じられているに過ぎない。


 現時点では、どのような天体が地球の大気をかすめていくのか詳しいことは分かっていない。また、大気上空に微生物が存在することは判明しているが、それがどのくらいの密度で生息しているのかは不明だ。この仮説について検証すべき点はいくつもある。

 金星はかつて、地球と似たような惑星だったと考えられている。しかし温室効果ガスのせいで、現在のような硫酸の雲で包まれた地獄のような惑星に変わってしまった。

 今回、金星でバイオシグネチャーが検出されたことを受け、「生命を交換する経路が存在する可能性について、少し注意して考察してみるタイミングです。
惑星はとても近いところで隣り合っているので、いくつもの岩石を交換できるからです」と、シラージ氏は述べている。

References:Earth life may have traveled to Venus aboard sky-skimming asteroid | Space/ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:金星の生命体の故郷は地球?地球をかすめ飛んだ隕石が、金星に生命を運んだという仮説(米研究) http://karapaia.com/archives/52295094.html