人種差別の懸念から「アジア鯉」の名前が変更になる可能性(アメリカ)

 最近アメリカでは、新型コロナウイルスの影響からか、アジアに対する「ヘイトクライム」が急増しているが、その問題が鯉にまで発展しているようだ。

 アメリカ国内で、アジア鯉(アジアンカープ:Asian Carp)は外来種であり防除対象となっている。
その外見も良く思われていないことから、ネガティブなイメージが「アジア」という特定の人種を想起させる言葉と結びつくとして、アジア系コミュニティが鯉の名称の変更を強く求めていた。

 そこでミネソタ州では、2014年、公文書に「アジア鯉」と表記することを禁止し、代わりに「侵略鯉(インベイシブカープ:invasive carp)」と明記すること決定された。

 ところが近年の人種差別問題が懸念され「侵略鯉」という名前すらも不適切であるとして、全米で更なる名称の変更が検討中であることが報じられた。

【アジア鯉のイメージの悪さが人種差別につながる可能性を懸念】
 コイ科の魚のいくつかの種はその繁殖力の強さから、アメリカの海域の生態学的バランスを乱す侵入種であり、外来種の鯉は全てアジア鯉と呼ばれていたのだが、このほどそれがアメリカ全土で変更になる可能性があるという。

 きっかけは、コロナのパンデミック中に急増した反アジアのヘイトクライムだ。

 これにより、多くの人に定着している外来種の「アジア鯉」という否定的なイメージが、更なる人種差別をほのめかすと懸念されたからだ。

 最近、ミネアポリス空港にやって来たアジアのビジネス代表団が、「Kill AsianCarp(アジア鯉を殺せ)」と書かれた看板を見た時、不快な思いを抱いたことがメディアで報じられた。
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 アジア鯉は、もともと下水や養殖池から藻類、雑草、寄生虫を取り除くことを目的として半世紀前に中国からアメリカに持ち込まれたものだ。

 だが今では4種のアジア鯉が、アメリカ中心部の川や五大湖で猛繁殖し、地域の生態系に大混乱を引き起こしている。【アジア鯉から侵略鯉に。だが侵略鯉も不適切との意見】
 アメリカの五大湖地域事務局長チャーリー・ウーリーさんは、「アジアの文化や人々を否定的な見方をするような用語は排除したい」と述べ名前の変更を期待している。

 だが、政府機関や科学者、またレストランや食料品店など、魚の呼び方においてはそれぞれが独自の考えを持っており、名前の変更は広範囲にわたる混乱に繋がる可能性もあることを懸念している。


 2014年5月16日、アメリカのミネソタ州議会ではアジア鯉を正式に「侵略鯉(インベイシブカープ:invasive carp)」と呼ぶことを決定した。

 更に今年4月、合衆国魚類野生生物局はアジア鯉を「侵略鯉」という名に正式に変更した。アメリカとカナダの機関を代表するアジア鯉地域調整委員会も、8月2日に名前の変更を行う予定だという。

 だが、この「侵略鯉」という名もまた一部から批判の声が寄せられているため、適切な名前変更はなかなか容易ではないようだ。
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【なぜアジア鯉と言う名前になったのか?】
 なお、ジャーナル誌『Fisheries』の論文によると、アジア鯉という呼び名は1990年代半ばに科学文献に登場し始め、2000年代初頭に定着したようだ。

 アメリカ地質調査所の魚類生態学者であり、論文の著者の1人であるパトリック・ココフスキー氏は、種が悪影響を及ぼすことを考えれば、そのような呼び名は決して適切ではなかったと述べている。

 また、この記事でココフスキー氏と執筆チームを組んだトレド大学環境科学教授のソン・チエン氏はこのように話している。
鯉は、多くのアジア諸国で貴重なタンパク質源でもあり、私の母国中国では幸運のシンボルです。

アメリカに氾濫している鯉が、侵襲的で生態系を混乱させているという理由で根絶する必要があると言うなら、もちろん対処が必要ですが、その名前からどうにも文化的に誤解を生みやすくなっているといったところでしょう。

集合名を公認することは便利ではありますが、やはり魚種を個別に参照するのが最も適切ではないでしょうか。現在の課題は、アジア鯉に適切な名前を見つけることだと思います。
 ちなみに差別的な理由から魚の名前を変更するケースは日本にもある。
例えばイザリウオは差別的語の「いざり」を連想させることからカエルアンコウに変更になっている。

written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:人種差別の懸念から「アジア鯉」の名前が変更になる可能性(アメリカ) https://karapaia.com/archives/52304277.html
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