次世代の鎖帷子か!圧縮すると硬化する、柔軟で強度の高い新素材が開発される


 昔の戦で使われた鎖帷子(チェインメイル)にインスピレーションを受けて開発された特殊構造の素材は、外から加えられた力に応じて柔軟に変形する。

 それでいて真空パックで圧縮してしまえば、橋にも使える強度を発揮する。
その原理は、お米が詰められた袋が硬くなるのと同じであるそうだ。

 アルミを使ってこの素材を作れば、防弾チョッキや外骨格アーマーとして使用できるほどの強度を持つという。

鎖帷子をモデルにつくられた新素材 南洋理工大学(シンガポール)とカリフォルニア工科大学(米)の研究グループが目指したのは、柔軟に変形できて、必要とあれば強い負荷にも耐えることができる素材だ。

 開発のヒントになったのが、昔の戦で着用されていた鎖帷子(チェインメイル)であるという。3Dプリンターで織られた生地は、鎖帷子のような構造をしており、自由に形を変えることができる。

[画像を見る]

image by:Nanyang Technological University
 だが、それだけではない。
お好みの形にしたら、それをビニールに包んで、真空パックしてしまう。するとがっちりとした強度を発揮するようになるのだ。

[画像を見る]

image by:Nanyang Technological University
お米が入った袋が硬くなる原理「ジャミング転移」を利用 日本人ならその原理はとても身近なものだ。お米が入っている袋がガチガチと硬いことを、おそらく誰もが知っているだろう。

 あれはお米の粒が動きまわる隙間がなくなり、お互いにかみ合うことが原因だ。この現象を物理学では「ジャミング転移」と呼んでいる。


 今回の新素材もこれと同じ。ビニールで真空パックされることで、鎖帷子が動く隙間がなくなるために、がっちりとした強度を発揮するようになる。

[動画を見る]

The smart chain mail fabric that can stiffen on demand真空パックにすると自重の50倍に耐える ナイロンからつくられた鎖帷子素材は、圧縮することで25倍も硬くなるという。板のような形にした場合、1.5kg(自重の50倍)の重さに耐えることができる。

 また圧縮していない状態のものに鉄球を落とすと26ミリたわむが、これを真空パックすると3ミリしか変形しなくなる。

圧縮してない状態

[画像を見る]

image by:Nanyang Technological University
圧縮した状態

[画像を見る]

image by:Nanyang Technological University
アルミからも作れて防弾チョッキとしても使用できる この構造布地はナイロンだけでなく、アルミからもつくることができる。
こちらはナイロンと同等の柔軟さがありながら、ジャミングしたときはさらに頑丈だ。

 真空パックする袋もビニールではなく、ケブラーを利用する。そのとき発揮される強度は、防弾チョッキや外骨格アーマーとして使えるほどだ。

 またこうした特性を利用すれば、怪我の治癒に合わせて硬さが変わるギプス、必要に応じて巻いてたたむことができる橋といったものも開発できるかもしれないそうだ。

[画像を見る]

image by:Nanyang Technological University
 現在研究グループは、鎖帷子布地の性能向上に取り組むとともに、磁気や温度、あるいは電気といったもので硬度を自在に変化させる方法を模索しているとのことだ。

References:Structured fabrics with tunable mechanical properties | Nature / Material Inspired by Chain Mail Transforms from Flexible to Rigid on Command | www.caltech.edu / written by hiroching / edited by parumo

追記:(2021/08/15)タイトル、本文を一部訂正して再送します。


画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。