冥王星での生命の可能性は?比較的最近まで活動していた巨大な氷の火山群を発見
image credit:NASA

 NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が撮影した冥王星の画像から、「氷の火山」という驚くべき発見があったそうだ。

 上の画像はニュー・ホライズンズが撮影した「スプートニク平原」の氷の火山群だ。
青い印は、過去に起きただろう火山活動の様子を表しており、地質学的に新しいことから、冥王星の内部は最近まで熱かったことを示しているという。

 ニュー・ホライズンズは2015年7月に冥王星とその衛星をフライバイし、この氷の準惑星を観察した。この時の明らかになったことは、今でも冥王星についてのほぼあらゆる常識を覆し続けている。

冥王星のたぐいまれなる氷の火山 冥王星はもはや惑星ではない。2006年、国際天文学連合が惑星の定義を変更したことで、準惑星へと降格されたからだ。

 それでも、エッジワース・カイパーベルトに位置する冥王星は、太陽の遠方を公転する大抵の凍った天体よりも大きい。


 マイナス232度という凍てつく世界には、山脈・渓谷・氷河・平原・クレーターだってある。そこは青い空と赤い雪というユニークな光景が広がる別世界だ。

 そして今回の新たな分析では、冥王星の凹凸が多い地域は、ほかのどんな場所とも違うことが明らかになっている。

 「太陽系では見たこともない、非常に大きな氷の火山群が発見されました」と、米サウスウェスト研究所の上級研究員ケルシー・シンガー氏は語る。

 この研究は『Nature Communications』(2022年3月29日付)に掲載された。

[動画を見る]

氷火山によって形成された氷のドーム 今回分析されたのは、1000キロもの古い衝突盆地をおおう氷床「スプートニク平原」の南西だ。
氷床は凸凹とした水の氷でできており、火山ドームがそこかしこにある。

 そうしたドームでも特に大きなもとして、「ライト山」(標高4~5キロ、幅150キロ)と「ピカール山」(標高7キロ、幅225キロ)が知られている。

 ライト山は、ハワイにある地球最大の火山「マウナ・ロア」に体積が匹敵するほどの雄大さだ。

 撮影されたドームの中には、合体してさらに大きくなったものもあった。こうしたユニークな光景を作り出したものが氷の火山なのだという。

 火山は地下の物質を地表にまで運び出し、新しい地形を作り出す。
冥王星の氷火山の場合、地下から地表へ運ばれるのは水で、あまりの寒さゆえに噴出した途端に氷になってしまう。

 太陽系では冥王星以外の場所でも氷火山が見つかっている。だが、冥王星の氷火山はことさらユニークだ。山として形成されながら、頂上にカルデラはなく、あちこちに大きな凹凸があるのだ。

[画像を見る]

image credit:NASA/Johns Hopkins University

冥王星の内部は熱く、最近まで氷火山が活動していた可能性 冥王星には岩石でできた核があるが、火山活動に不可欠な内部の熱は乏しいだろうと考えられてきた。

 だが、今回観察された地形が作られたからには、いくつかの場所で実際に噴火があったに違いないことが示されている。


 また、この地域には衝突によるクレーターがほとんどなく、地質学的に新しい場所だ。このような新しい地形を形成するには大量の物質が必要となる。

 冥王星の内部では、これまで考えられていた以上に、冥王星の内部が熱く、最近まで熱を保ち、複数の発生源から水氷に富む物質が地表に噴出し、堆積した可能性があるという。

[画像を見る]

image credit:NASA/Johns Hopkins University

 「冥王星内部には、想像以上に熱があるということです。つまり、惑星の働きを私たちはまだ完全に理解していないということです」と、シンガー氏は言う。

 氷火山群はおそらく何度かに分けて形成され、おそらく1億~2億年前まで活発だった可能性が高い。
地質学的な視点からは、若い火山と言える。

 その噴火は、一般的なイメージとはかけ離れたものだろう。

 「火口から水と氷が混ざったものが噴出し、地表を流れる時はハミガキ粉のような感じでしょう」と、シンガー氏は説明する。

 冥王星は非常に寒いので、液体はすぐに凍ってしまう。巨大なドームや、今回いたるところで観察されたゴツゴツとした地形はそれによって作られた。

 ニュー・ホライズンズが冥王星上空を飛行した時、現在進行形の火山活動は目撃されていない。
だが、観察できたのはたった1日だけのことだ。まだ活発な氷火山がどこかにある可能性はある。

 地球に休火山があるように、冥王星の氷火山もしばらくするとまた活動を開始するとも考えられる。

[動画を見る]

ICE VOLCANO AND LIFE Dwarf Planet PLUTO in the KUIPER BELT Mount Wright Mons冥王星に生命が存在する可能性はあるのか? 冥王星の地下にはかつて海があった。今回発見された氷火山群は、地下の海が今もなお存在している可能性を示唆している。

 そして液体の水は、案外地表近くにあるのかもしれない。さらに冥王星内部が想像以上に暖かいだろうことも考えると、ある気になる疑問が浮かび上がってくる。

 それは冥王星に生命が存在するのではないか? ということだ。

 だが「冥王星で生物が生きるにはいくつもの難題があります」と、シンガー氏は話す。安定した栄養源が必要だし、仮に火山が一時的なものならば、熱や水の供給も不安定になるだろう。これは生命にとっては不利な条件だ。

 好奇心をそそる冥王星の地下を調査するには、この遠く離れた世界に探査機を送る必要がある。

 「将来のミッションで探査機を送ったとしたら、氷を貫通するレーダーで直接内部を覗き込めるでしょう。火山の配管の様子なんてものも見られるかもしれませんね」とのことだ。

References:New Horizons:: Great Exploration Revisited: The 2007 Flyby of Jupiter / Large-scale cryovolcanic resurfacing on Pluto | Nature Communications / written by hiroching / edited by / parumo

画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。