目の反応を調べることでADHDとASD(自閉スペクトラム症)の診断ができる可能性
「目は口ほどにものを言う」という諺があるが、発達障害についても当てはまりそうだ。

 オーストラリアの研究グループは、眼球の内側にある網膜をの電気的反応を調べたところ、「注意欠如・多動症(ADHD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」に特有のシグナルがあることを突き止めた。


 網膜シグナルは発達障害を診断する指標になる可能性があると、『Frontiers in Neuroscience』(2022年6月6日付)で発表した。

診断が難しいADHDとASD ADHD(注意欠如・多動症)は、「注意力散漫、衝動的、落ち着きがない」などが主な特徴で、その割合は、学齢期の子供の3~7%程度と考えられている。

 ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)は、「コミュニケーション能力の欠如、特定の物事に対するこだわりの強さ」などを主な特徴とし、全人口の1%の割合で存在すると考えられている。

 どちらも発達障害の一種で、遺伝的要因が関連していると言われている。症状の出方は個人差がありグラデーションがある。遺

 ADHDもASDも子供の頃に診断されることが多いが、似た症状を示すこともあり、はっきりと判明するまで時間がかかることもある。
それゆえ手軽で確実に診断する方法が望まれている。

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ADHDとASDの子供は、網膜の電気反応に違い 今回、フリンダース大学と南オーストラリア大学の研究グループは、およそ220名(ADHD15名、ASD55名、どちらでもない人156名)の子供を対象に、網膜に強い光を当てその電位変化を記録し、その波形から網膜の動きをチェックする「網膜電図(ERG)」で計測を行った。

 その結果、一般の子供と比較し、ADHDの子供は、光に対する網膜細胞の電気的反応が大きく、反対に、ASDの子供は反応が小さいことが明らかとなった。

 研究の主執筆者ポール・コンスタブル博士は、「網膜信号は、特定の神経によって発生する。そうした違いを見つけ出し、脳でも使われる各種の化学信号を用いる経路を突き止めれば、ADHDやASDなど発達障害の可能性がある子供の違いをはっきり示すことができる」と述べる。

 今のところ予備的な証拠でしかないが、発達が正常な子供とADHD・ASDの子供を区別するだけでなく、それ以外の病気の診断も可能かもしれないとのことだ。


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目で脳を理解できる日が来る可能性 共同研究者のフェルナンド・マルモレジョ=ラモス氏によると、彼らの最終的な目標は「目から脳を理解する方法」を考案することだという。

 網膜信号の異常から病気を診断できるようになるには、更なる研究が必要であるとのこと。

 それでもこれまでのところ、驚くべき発見であるようで、同氏は「まさに宇宙を見ているかのよう。目がすべてを明かすなんてこともあり得るかもしれない」と語っている。

 将来的には統合失調症や双極性障害の診断にも応用できるかもしれないそうだ。

References:ADHD and ASD: What the eyes could reveal -- ScienceDaily / written by hiroching / edited by / parumo

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