重さ1トン!世界最重量の睾丸を持つセミクジラ。その生態にズームイン!
 タイセイヨウセミクジラは世界最重量の睾丸(ふぐり)を持つことで知られている。その睾丸は2つ合わせて1トン!クマ2頭分に相当する。
人間の男性が股間にパイナップルを2つぶら下げているようなものだ。

 「地球上で最もやさしい生物」と称されるセミクジラ属だが、その寛容な心は巨大なる睾丸にあるのかもしれないし、そうでもないのかもしれない。

世界最大の睾丸を持つタイセイヨウセミクジラ ヒゲクジラ類 セミクジラ科セミクジラ属に分類されるタイセイヨウセミクジラは、北大西洋海域の沿岸部や沖に生息する。体長は13~18mほどで、体に対して頭部が大きくずんぐりとした体形をしている。

 巨大だが、クジラヒゲを使い、カイアシ類やオキアミなどの動物プランクトンをこしとって食べる濾過摂食者である。

 そして、動物界最重量の睾丸を持つことで知られている。その重さは1つ約500kg、2つ合わせて1トンに上る。

 ちなみに息子スティックの長さに関していえばナンバーワンは、シロナガスクジラに軍配が上がり、その長さは約3mほどだ。

 2頭のクマくらいの大きさの睾丸をぶらぶらさせているクジラの写真が出回っていたら、イヤでも脳裏に焼きついて忘れられないだろう。

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タイセイヨウセミクジラめったに見ることができないセミクジラの睾丸 巨大なものが大好きならぜひ一度見てみたいと思うかもしれないが、だが残念なことに、セミクジラの睾丸は体内に格納されており、めったに見ることができない。

 クジラは哺乳類だが、陸上の哺乳類とは違い、睾丸が体外に出しっぱなしになっているのは、温度という観点から適切ではないからだという。

 恒温動物の体温は睾丸にとっては熱すぎるため、低温を保つために、多くは体外に出しっぱなしにしておくよう進化した。


 しかし、こうした体の構造は、年中、冷たい海中にいる生物にとってはちょっと厄介だ。

 クジラの体温も、睾丸にとっては熱すぎる。だが、冷えた末端部から血液を送り込むことによって、体温をコントロールできる怪網という血管網を備えている。精子を大量生産する理由 セミクジラの睾丸は、表立っては見えないが、4.5リットルの精子を生産する能力があると考えられている。

 このように精子を大量生産するのは、ライバルの精子を、いわば"流し出して"しまうためだとされている。

 セミクジラのメスは、複数の相手と交尾するため、オスはライバルの精子を排除しなくてはならないわけだ。

 自分の精子を大量に送り込んで、ライバルの精子を薄めてしまえば、自分の子孫を残すチャンスが高くなる。

 つまり、大きな睾丸を持つ個体ほど、自分の遺伝子をつないでいくことができる確率が高く、次世代にも大きな睾丸を持つ個体が増えることになる。

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タイセイヨウセミクジラの親子 / image credit:public domain/wikimedia年配のオスの方が生殖に成功しやすい おもしろいことに、この競争では、より年配のオスのほうが優位に立っている。クジラは8歳になると生殖できるようになるが、実際に親になるのはほとんどが15歳以上だ。セミクジラの寿命は約70年くらいと考えられている。

 また、2年続けて生殖に成功する可能性が高いのも年かさのオスだ。
高齢の生き物にとっては、まだチャンスがあるという点で喜ばしいことだが、その種にとっては、必ずしもいいこととはいえない。

 年齢が生殖の成功と結びつくと、次の繁殖候補を育てるのに時間がかかり、保護活動が複雑になってしまう。

 同じオスばかりが毎年繁殖活動をするため、クジラの個体群の遺伝的多様性が低下し、有害な突然変異に対して脆弱になってしまうのだ。

 セミクジラにとって、大きな睾丸は、より多くの子孫を誕生させる一方、より問題も増えるということになるようだ。

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セミクジラの親子

 巨大な睾丸を持ち、生殖力も高いセミクジラだが、現在絶滅危惧種に指定されており、生息数の少なさが原因で、今だ詳しい生体情報は解明されていないという。

 巨大生物と巨大部位マニアとしては、画像でもいいから一度でいいから見てみたいものだ。

 伝説のUMA「シーサーペント」の正体はクジラのいちもつだった可能性があるという記事を、かつて紹介したかと思うが、セミクジラの巨大なふぐりも、何かのUMAに勘違いされていた可能性もあるのかも?当時はまだ、たくさん生息していただろうから。

追記:(2023/04/06)本文を一部訂正して再送します。
References:Right Whales’ Testicles Weigh A Ton, Literally | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

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