親とはぐれたカモのヒナを保護し野生に戻した夫婦。半年後、我が子11羽を連れて戻ってくる
 「あの時助けてもらったカモです」野生にもどったカモが再び夫婦の前にたくさんの子供を連れて戻ってきたとき、そういったかどうかはわからない。

 だがこのカモは、ヒナの時に親とはぐれてしまい、さまよっていたところを助けてもらいった愛情と恩を忘れていなかったようだ。


 カモは、愛する子供たち11羽全員を連れて、夫婦に見せにきたのだ。

 あの時の小さなヒナが立派な親鳥となって子供たちを連れて来てくれたことに感動した夫婦。現在はカモ一家との交流を楽しんでいるそうだが、この先カモたちは野生に戻るべきだと考えている。

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Rescue duckling returns to saviours six months later - to raise 11 chicks | SWNS親とはぐれてしまった生後1日目のカモのヒナを保護 イギリスのウェスト・ヨークシャー州リーズに住むフィル・ガーナーさん(67歳)が、リーズ近郊にある釣り湖でさまよっていた生後1日のマガモを発見したのは、2021年4月のことだった。

 この日、フィルさんは息子と一緒に釣りをしていたが、小さなヒナがいた釣り湖の責任者は、放っておけばヒナは寒さで死ぬかもしれないとフィルさんに話した。

 母親が近くにいるかと探してみたが見当たらない。しばらく待っても母鳥が来ることはなかった。

 この小さなカモは親とはぐれてしまった可能性が高いと思ったフィルさんは、このままでは本当に死んでしまうと、ヒナをコートのポケットに入れて自宅へ連れ帰った。

 だが、生まれたてのヒナの世話はどのようにすればいいのか?フィルさんは、奥さんのジュリアさん(66歳)と考えた。

 まず、夫妻はヒナに「フリーダ」と名前をつけた。

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夫妻とカモのヒナに絆が生まれる 夫妻は、フリーダをリビングルームやキッチン、庭の周りなどを自由に歩き回らせ、金魚のために作った池で泳がせた。

 愛情を注いで世話をしてくれる夫妻とフリーダの間に絆が生まれるまで、そう時間はかからなかった。


 もともと鳥には刷り込み(インプリンティング)の習性がある。生後すぐの時期に保護されたフリーダは、フィルさんを自分の親と思っていたのかもしれない。

 当時を回顧して、フィルさんはこのように話している。
フリーダは、箱の中か私たちの足元、またはコーヒーテーブルの下で寝ていました。

まだとても小さかったので、私かジュリアのどちらかがヒナのいる階下で寝なければなりませんでした。そうしないと、フリーダはとても甲高い声を上げて鳴き始めたものです。

また、私たちはフリーダにタオルを使って自宅でのトイレの訓練もしました。

間もなくして、私がコンピューター作業をしている間、彼女は私の肩やテーブルの上に座りにくるようになりました。フリーダは、とても愛情深いヒナでした。


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フリーダは闘病中だったフィルさんの心の支えに 実は、フリーダを保護した当時、フィルさんは膀胱がんの闘病中だった。

 苦しい治療を受けていた2021年、がんの手術を3回受け、経過観察が15回にもおよんだフィルさんにとっては、まさに苦難の時期だった。

 しかし、フリーダとの偶然の出会いは、フィルさんの思わぬ心の支えになったようだ。
夫が、がんを乗り越えることができたのも、困難な時期にフリーダの世話に気持ちを集中することができたからだと思っています。

あのタイミングで私たちの前に現れたフリーダを、私は夫の「守護天使」だと考えています。(ジュリアさん)
 最初こそ、カモのヒナを自宅で育てることにあまり乗り気ではなかったというジュリアさんだが、ヒナと暮らす新しい環境を好きになり、フリーダに対して深い愛情を抱くようになった。

 フリーダが、とにかく元気で健やかに成長するようにと、夫妻は40ポンド(約7300円)もする幼虫を餌に与え、交代でフリーダのベッドの横で寝て、見守ってきたという。

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野生に戻したフリーダが戻ってきた!11羽のかわいいヒナと一緒に! 夫妻のおかげで元気に成長したフリーダが、いよいよ巣立つ時がきた。寂しいけれど、やはり野生の生き物は自然に返すべきだと夫婦は考えていた。

 自然の中に戻っていったフリーダを見て、夫妻は安堵すると同時に、悲しい思いをしたという。

 ところが、その数か月後にフリーダが伴侶を連れて戻ってきた。

 再会を喜び、フリーダの伴侶をフレッドと名付けたフィルさんとジュリアさんは、後にさらなるサプライズを受けることになった。

 フリーダとフレッドが11羽のヒナを連れて、夫妻のところに帰ってきたのだ。

 フリーダを保護して、巣立ってから半年後のことだ。

 フィルさんとジュリアさんの家は、フリーダとフレッド、そして11羽のヒナたちであふれた。
フィルさんとジュリアさんの顔にも笑顔があふれた。

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伴侶を見せに来てくれたまでは良かったのですが、11羽もヒナを連れてくるなんて。最初に見た時は、なんだか大混乱でした。このたくさんのカモたちをどうすれば?という感じでした。

とりあえず家でお世話をすることにしました。ヒナは体長20センチほどになり、バターのように丸くふわふわしていました。

カモは水鳥なので泳ぐ必要があるし、体を洗う必要がある。だから金魚の飼育に使っていた池で泳がせてやりました。

庭はカモたちが歩き回って、まるで爆弾テロ跡のように荒れていますが、私は気にしていません(笑)
 このように笑顔で話すフィルさんだが、カモに刷り込みの習性があることを知っていて、フリーダと別れた後に心の中で、「もしかしたらまたここに戻って来るかもしれないな」と期待していたという。

 だが、11羽というたくさんのヒナと一緒に戻ってくるとは想像もしていなかったようだ。

 夫婦は、フリーダがヒナだった頃にしたように、今度はフリーダのヒナたちの世話をしようと決めた。

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野生に戻らないようなら、近くの池に放す予定 現在、フリーダは、家族を連れて実家に帰省したかのように、フィルさんとジュリアさんのもとで、のんびりと過ごしているという。
ある朝、正面の窓の外を見ると、小さなヒナたちがヨチヨチとこちらに向かって歩いてくるのが見えたんです。それ以来、ずっとここに留まっているんですよ。

前庭の養魚池ではフリーダ一家は泳ぐことができます。裏手にも別の池を掘りました。餌は、コーンミール、ミミズ、ウジ虫、ウィータビックスなどを与えています。

ご飯を食べたいときや、母親がいなくなったときは「ピルピルピル」という声でヒナたちは鳴きますが、普段はとても静かですよ。(フィルさん)
 フィルさんは、フリーダとフレッドがあと数か月間一緒にいてくれると期待しているが、もし2羽が野生に戻らなないようなら、近くの池に戻すつもりだそうだ。

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私たちは、フリーダが飛び立って自然界に戻ることを望んでいます。そしたらヒナたちも親を追って飛んでいくでしょう。

そうでない場合は、近くに良い釣り堀があるので、キツネの侵入を防ぐために周囲をフェンスで囲って放してやろうと思っています。
 その日が来るまで、今のところはフリーダやヒナたちとの交流を、夫妻は楽しんでいる。

References:Rescued Duckling Raised by Couple Returns to Their Home 6 Months Later–With 11 Chicks/ written by Scarlet / edited by parumo

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