地球温暖化が進んでいるのになぜ冬が寒くなるのか?極渦とジェット気流が影響を及ぼしている
 2023年7月、北半球は観測史上もっとも暑い7月となった。一方で季節が逆となる南半球のオーストラリア東海岸では、2023年6月21日、6月の気温としては記録的な寒さとなった。


 気候変動による地球温暖化は着実に進んでいる。夏が暑いのはわかるが、なぜ冬が極端に寒くなるのだろう?

 たとえば、2021年から22年にかけての冬は、4年ぶりの寒冬で、日本各地が厳しい寒さや大雪に見舞われた。海外でも同様で、22年から23年の冬、アメリカやカナダは記録的な寒波に襲われ、何もかもがカチコチに凍りついた。

 夏と冬の気温を極端にさせているのは、南極・北極上空にできる、大規模な気流の渦「極渦」とそれを取り巻くジェット気流が関係しているという。ここではそれについて説明していこう。

冬の寒さに影響を与える北極渦とジェット気流 「極渦」とは、北極や南極の空を反時計回りに流れている、巨大な気流の渦のことだ。北極低気圧や南極低気圧などとも呼ばれている。

 北極上空の成層圏(高度10~50キロくらいの層)には、地域一帯を囲むようにジェット気流(極夜ジェット気流)が吹いている。

 じつはこのジェット気流がちょうど風のバリアのように働いている。これが吹いているおかげで、北極の冷たい空気と、それよりもっと南寄りの地域の暖かい空気が混ざらない。

 ところが北極渦はいつも安定しているわけではなく、ときおり乱れることがある。ジェット気流が大きく蛇行して、普段よりも南にせり出すのだ。


 すると、北極の冷たい空気もまた南へ向けてせり出してくる。これが寒波となって、北半球にやたらと寒い冬を到来させるのだ。

 たとえば米国とカナダは、2019年1月にも極渦の影響による記録的な寒さに襲われており、地域によってはマイナス45度にも冷え込み、数十人が死亡。広範囲にわたって停電が生じるというとんでもない寒さだった。

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蛇行する赤い波は北極のジェット気流で、北半球の冬の天候に大きな影響を与えている / image credit:NASA地球温暖化と極渦ジェット気流との関係 気になるのは、地球温暖化が極渦にどう影響するのかということだ。

 北極圏は、地球上のどの地域よりも急速に温暖化が進んでいる地域だ。すでにこの地域の生き物たちや、海に浮かぶ氷に大きな変化を与えている。

 だが実際には、温暖化で北極渦がどう変化するかを予測するのは難しい。

 もっとも可能性が高いのは、気温が高くなることでジェット気流の”うねり”が大きくなり、中緯度地域に寒波が到来する頻度が上がるという説だ。

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北極渦が安定しているときは、ジェット気流によって北極の冷たい空気が閉じ込められている(右図)。ところがこれが乱れて大きく蛇行すると、ジェット気流が普段より南にせり出し、冷たい空気が寒波となって流れ込んでくる(左図)/ Image credit: NOAA 2021

 アメリカ海洋大気庁NOAAの専門家エイミー・バトラー氏は、次のように説明する。
極渦の乱れは、対流圏を流れる大気が大きく波打ち、下から揺さぶられることで起こります。


そうした波はいつもあるのですが、海氷の減少による温度や気圧の変化などの影響で強さや位置が変わり、それが極渦にも影響するのではと考えられます
 その結果、地球全体では温暖化が進んでいるにもかかわらず、地域によっては普段よりもグッと冷え込む冬が増えるてくるという。

 ただ、北極や南極のジェット気流はかなり複雑で、今後どうなるのか予測することはかなり難しいのだそうだ。

 いずれにせよ、冬がやたらと寒いのは、決して地球温暖化が起きていないからではない。地球全体としては着実に暑くなっているのだ。

References:Understanding the Arctic polar vortex | NOAA Climate.gov / Polar Vortex And Polar Jet Stream Are Facing An Earth-Changing Upset | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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