研究所で幽霊の目撃情報が多発。科学者がその原因を調べてみた
 科学と超自然的現象(オカルト)は真逆のように思えるが関係性が深い。謎が解明されなければ超自然的現象のままだが、科学で解明することができれば、それは物理現象となるのだ。


 かつてイギリスの医療機器研究所で怪奇現象が起きた。幽霊を見たという人が続出したのだ。

 ここに勤務する1人の科学者は、ならば幽霊の正体を確かめようと様々な調査を行った。そして彼は、その原因をほぼつきとめることに成功する。

怪奇現象が続出する研究所、体に異変をきたす職員も 1998年、ある医療機器メーカーの研究所で、奇妙なことが起こり始めた。

 そこで働く科学者の一人、ヴィック・タンディ(1955 ~2005年)が最初にそれに気づいたのは、不安そうな顔で何か怪しいものを見たと言って逃げ出した清掃員の姿を見た時だった。


 タンディはれっきとした科学者だ。だから不可思議なことがあっても、心霊現象などと思ったりはしないない。そのとき彼は、会社の敷地にいる野良猫か、製造装置の影響だろうと考えた。

 だが研究所内では不可解な出来事が続き、幽霊を見たという目撃情報が相次いだ。

 職員たちの中には、気分がふさぎ込んだり、不意に震え出す者がいた。

 またある同僚は、タンディがそばいると思って話しかけたら、彼がいたのはなんと部屋の反対側だったという不思議な経験をした。


 そしてタンディ自身も怪奇現象を目の当たりにする。それはある夜更けのこと、タンディはだんだんと気分の悪さを覚えるようになった。

 1998年の『Journal of the Society for Psychical Research』に掲載された報告書には、「まるで部屋の中に何かがいるようだった」と書かれている。

 タンディは室内にあった二酸化炭素と酸素のびんを調べ、中身が漏れてないことを確認し、机に戻った。すると今度は、どこからか見られているような気配を感じた

 すると視界の隅っこに、灰色の人影がゆっくりと現れたではないか! 驚いたタンディだったが、勇気を出してその人影の方を向いてみた。が、その瞬間、それは消えてしまった。


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幽霊の正体を調査、換気扇が発する低周波であることが判明 それは恐ろしい経験だったが、科学者であるタンディは幽霊の正体を突き止めるべく調査を開始した。

 翌日、タンディはやはり研究所で、万力台に薄い金属製のブレードを取り付けて実験をしていた。

 手元にオイルがなかったので、それを取って戻ってくると、あろうことかブレードが上下に激しく振動していた。

 幽霊の噂の絶えない研究所で、こんな現象に遭遇したら驚愕するところだろう。だが、科学者であるタンディはこう考えた。

 「ブレードが振動しているのなら、それはブレードの共振周波数と同じように強さが変化するエネルギーを受け取っているはずだ」と。
一般に「音」と呼ばれるエネルギーのことだ。

 そこでタンディは、ブレードを持って研究所を歩き回り、もっとも振動が強くなる場所を探すことにした。

 その結果、どうやら研究室の中心あたりで、振動が一番強くなるらしいことを突き止めた。そこには一体何があるのだろうか?

 それは新しい換気扇だ。試しにスイッチを切ると振動は収まった。どうも換気扇が人間の耳には聞こえない低周波(人間の耳には聞こえない可聴下音)を発生させ、それがブレードを振動させていたようだ。


 どうやらこれが幽霊の正体のようだ。

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低周波が怪奇現象を作り出すことがある その後、似たような事例がないか文献を探してみたところ、やはり換気扇から発生した低周波の音が、不安やうつっぽさを感じさせるという報告が見つかった。

 さらにNASAの報告書には、過呼吸(不安や恐怖などがきっかけで起こることがある)によって、全身が震えることがあるとも記載されていた。

 意図的に「幽霊が出る部屋」を作ってみたものなど、可聴下音が心霊現象に似た現象を引き起こすことを確認した研究もある。

 もちろん、すべての心霊現象がこの方法で説明できるわけではない。

 だが少なくとも、これまで心霊現象と呼ばれたものの中には、可聴下音によるただの物理現象だったものもあったはずだ。


References:When A Scientist At A Medical Equipment Laboratory Investigated His Own Haunting | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2023/11/25)科学者の年代の誤りを訂正して再送します。

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