この世の中には奇妙な症状を発する疾患があるが、「相貌変形視」はひときわ奇妙だ。この症状をわずらう人は、他の人の顔が悪魔のように醜くゆがんで見えるのだ。
彼らの目に映る世界はごく普通の世界だ。だがなぜか人間の顔だけがゆがんで見える。そのせいで、周囲の人たちがまるで怪物のように思えてしまうのだという。
このほど米ダートマス大学の研究者は、相貌変形視の患者に協力してもらい、彼らに見えている顔の歪みを描き出した。確かにそれは悪魔のようだ。
人の顔が悪魔のようにゆがんでみえる「相貌変形視」 顔が歪んで見えるこの奇妙な症状を英語では「プロソポメタモルフォプシア(prosopometamorphopsia/PMO)」という。
「プロソポ」はギリシャ語で顔、「メタモルフォプシア」は知覚の歪みや変化といった意味で、日本語だと「相貌変形視」と呼ばれている。
相貌変形視は精神医学的な疾患ではない。だが統合失調症と誤診されることが多く、そのせいでまったく意味のない治療を受けさせられる患者がいる。
病気の原因は、顔の処理を担う脳内ネットワークが誤作動を起こしていることだとされており、その程度によって顔の形・大きさ・色・位置といったものが普通とは違って見えてしまう。
大抵の場合、数日から数週間で治るが、何年も歪んだ顔を見続けている人もいる。
この病気の人たちがどのくらいいるのか不明だが、記録されている症例は75例程度であり、かなり珍しいだろうと考えられる。
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正面から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.
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横から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.相貌変形視の人に見えている顔をコンピューターで生成 以前からこの不思議な症状を研究してきたダートマス大学のチームは、今回相貌変形視をわずらう58歳の男性に協力してもらい、彼に見えている悪魔の顔を描き出している。
彼の症状はひときわユニークで、周囲にいる人の顔は歪んで見えるのに、PCの画面や紙では普通に認識できる。こうした症状は、相貌変形視を研究するうえで非常に都合がいい。
今回の研究では、この男性に画面に表示されるさまざまな顔を見てもらうと同時に、その本人にも対面してもらった。
そして男性から画面上の顔と実物の顔の違いを教えてもらい、彼の目に見えている歪みを割り出していった。
そうして作られたのが今回の画像だ。
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正面から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.
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横から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.相貌変形視という症状を知ってもらうことが大切 今回の研究の主な目的は、世間に相貌変形視を知ってもらうことだという。
この病気は非常に稀なもので、相貌変形視の人でさえ、自身がかなり特殊な状態にあることに気づいていないことも多々ある。
しかも勇気を出して病院に行っても、心を病んでいると誤診されることだって珍しくない。
そもそも相貌変形視の人は、他人に自分の症状を滅多なことでは語らない。打ち明けることで、精神疾患と誤解されるのを恐れるためだ。
相貌変形視の大きな問題の1つは、ほとんどの人がそれを知らず、理解できないことだ。
だからこそ、この病気について人々に知ってもらう必要がある。他人の顔が悪魔に見えるという症状が、ケアやサポートの対象なのだと社会に知ってもらうことが、相貌変形視に適切に対処する第一歩となる。
なお相貌変形視の分類は、顔のどの部分が歪んでいるかに基づくことが多いという。だが、なぜ相貌変形視には人によってさまざまな歪み方があるのか、あまりわかっていない。
[動画を見る]
この研究は『The Lancet』(2024年3月23日付)に掲載された。
References:If Faces Appear Distorted, You Could Have This Condition | Dartmouth / New images show 'demonic' face distortions from rare condition / written by hiroching / edited by / parumo
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彼らの目に映る世界はごく普通の世界だ。だがなぜか人間の顔だけがゆがんで見える。そのせいで、周囲の人たちがまるで怪物のように思えてしまうのだという。
このほど米ダートマス大学の研究者は、相貌変形視の患者に協力してもらい、彼らに見えている顔の歪みを描き出した。確かにそれは悪魔のようだ。
人の顔が悪魔のようにゆがんでみえる「相貌変形視」 顔が歪んで見えるこの奇妙な症状を英語では「プロソポメタモルフォプシア(prosopometamorphopsia/PMO)」という。
「プロソポ」はギリシャ語で顔、「メタモルフォプシア」は知覚の歪みや変化といった意味で、日本語だと「相貌変形視」と呼ばれている。
相貌変形視は精神医学的な疾患ではない。だが統合失調症と誤診されることが多く、そのせいでまったく意味のない治療を受けさせられる患者がいる。
病気の原因は、顔の処理を担う脳内ネットワークが誤作動を起こしていることだとされており、その程度によって顔の形・大きさ・色・位置といったものが普通とは違って見えてしまう。
大抵の場合、数日から数週間で治るが、何年も歪んだ顔を見続けている人もいる。
この病気の人たちがどのくらいいるのか不明だが、記録されている症例は75例程度であり、かなり珍しいだろうと考えられる。
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正面から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.
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横から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.相貌変形視の人に見えている顔をコンピューターで生成 以前からこの不思議な症状を研究してきたダートマス大学のチームは、今回相貌変形視をわずらう58歳の男性に協力してもらい、彼に見えている悪魔の顔を描き出している。
彼の症状はひときわユニークで、周囲にいる人の顔は歪んで見えるのに、PCの画面や紙では普通に認識できる。こうした症状は、相貌変形視を研究するうえで非常に都合がいい。
今回の研究では、この男性に画面に表示されるさまざまな顔を見てもらうと同時に、その本人にも対面してもらった。
そして男性から画面上の顔と実物の顔の違いを教えてもらい、彼の目に見えている歪みを割り出していった。
そうして作られたのが今回の画像だ。
相貌変形視をわずらう男性には、ごく普通の容姿の人たちが確かに悪魔のような顔に見えていることがわかる。
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正面から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.
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横から見た図(左)普通の人に見えている正常な顔、(右)は相貌変形視の人に見えているゆがんだ顔 / image credit:A. Mello et al.相貌変形視という症状を知ってもらうことが大切 今回の研究の主な目的は、世間に相貌変形視を知ってもらうことだという。
この病気は非常に稀なもので、相貌変形視の人でさえ、自身がかなり特殊な状態にあることに気づいていないことも多々ある。
しかも勇気を出して病院に行っても、心を病んでいると誤診されることだって珍しくない。
そもそも相貌変形視の人は、他人に自分の症状を滅多なことでは語らない。打ち明けることで、精神疾患と誤解されるのを恐れるためだ。
相貌変形視の大きな問題の1つは、ほとんどの人がそれを知らず、理解できないことだ。
だからこそ、この病気について人々に知ってもらう必要がある。他人の顔が悪魔に見えるという症状が、ケアやサポートの対象なのだと社会に知ってもらうことが、相貌変形視に適切に対処する第一歩となる。
なお相貌変形視の分類は、顔のどの部分が歪んでいるかに基づくことが多いという。だが、なぜ相貌変形視には人によってさまざまな歪み方があるのか、あまりわかっていない。
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この研究は『The Lancet』(2024年3月23日付)に掲載された。
References:If Faces Appear Distorted, You Could Have This Condition | Dartmouth / New images show 'demonic' face distortions from rare condition / written by hiroching / edited by / parumo
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