大気圧を利用し、十数分でダイヤモンドを合成する方法を発見
 自然のダイヤモンドは炭素原子でできており、地球の地下150kmより深い場所で、膨大な圧力と熱により生成される。

 これまでダイヤモンドを人工的に作るには、地球深部の極限環境を再現するよりなかった。
だが新棚研究によると、そうした高温や高圧を用いず、大気圧でほんの十数分のうちに、ダイヤモンドを人工的に合成する方法を発見したそうだ。

 これにより、従来よりずっと低コストで、短時間で人工的にダイヤの結晶を作り出すことができるという。

 今のところ、宝石というより膜のようなものだが、この新たなダイヤモンド合成法は、いずれ宝石の世界に革命を起こすかもしれない。

これまで合成ダイヤモンドを作るのは大変だった 天然のダイヤモンドは、150kmもの地下にあるマントルで、5万気圧という膨大な圧力と熱を受けながら数百万~数十億年という長い時間をかけて作られる。

 だから人工的にダイヤモンドを合成するのにも、それと似た環境を再現する必要がある。それは1300~1600度の高温と50,000気圧という高圧の下、5~12日間かけてダイヤを生成するという大変なものだ。


 こうした合成ダイヤは、切断や研磨といった工業用途の需要に応えるほか、自然界では珍しい色付きのダイヤ作りにも役立っている。

 とはいえ、その製造にかかるコストは決して安いものではないため、合成ダイヤの値段も安くはない。

 だが、それもいずれ変わるかもしれない。

 このほど、通常の大気圧で合成ダイヤモンドを作る方法が発表されたからだ。

 1000度近い高温が必要なのは相変わらずだが、それでも現時点の合成ダイヤに比べればずっと低い温度でできる。

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宝石というより今はまだ膜のようなものだが、紛れもないダイヤモンドだ。
大気圧を利用し、従来より数百度低い温度で作ることに成功した / Image Credit: Gong et al/Nature大気圧を利用し数分で合成ダイヤを生成する方法を発見 韓国、基礎科学研究院の研究チームが発見したのは、水素・メタンガスで満たした小型チャンバーにガリウム・鉄・ニッケル・シリコンの液体金属合金を入れれば、それほど圧力をかけなくてもダイヤモンドを成長させられることだ。

 製造時間はそれまでの12分の1に短縮、ものの数分で合成ダイヤができるという。このとき、ダイヤモンドを成長させる炭素はメタンから供給される。

 この最新合成ダイヤモンドのレシピはこうだ。

 液体合金の原子量比で言うと、ガリウム77.75%、シリコン0.25%、鉄とニッケル各11%である。この比率だと、液体の底近くで速やかにダイヤモンドが成長する。
これまでの合成ダイヤとは違い、”タネ”となる粒子もいらない。

 大学院生のヤン・ゴンさんによると、ある日の実験で黒鉛製の容器を冷やして、その中の液体金属を固めて取り出したところ、その底に数ミリほどの”虹模様”が広がっていたのだという。それはダイヤが作り出している色だった。

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各種のスケール・機器で見たダイヤモンドの成長/Image Credit: Gong et al/Nature今後の課題はきちんとしたダイヤを生成させること 今の時点では、ダイヤの形成が始まるまでに10~15分かかり、150分もすると成長が止まってしまう。研究チームは、これを克服する方法を探しているところだ。

 また、その合成ダイヤは、宝石というよりむしろ膜というべきもの。
だからダイヤの採掘企業がすぐに廃業ということはなさそうだ。

 だが、いずれダイヤモンドに先立って形成される過飽和炭素層を促進する方法が見つかれば、それも変わるかもしれない。

 金属と気体を組み合わせることで、なぜダイヤモンドの結晶が育つのか、詳しいことはまだよくわかっていない。

 だがシリコンと炭素の結合の類似性が鍵で、シリコン原子を含む炭素クラスターがダイヤモンドの前駆体として機能している可能性があるという。

 この合成プロセスのコストを抑えたり、欲しい色や特徴をそなえたカスタム・ダイヤモンドを作るには、融点が低い各種金属が役立つかもしれないとのことだ。

 この研究は『Nature』(2024年4月24日付)に掲載された。


References:A new method of making diamonds doesn’t require extreme pressure / Synthetic Diamonds Made In Minutes Not Days Could Upend Gemstone Economics | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

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