おそ松さん』や『転生したらスライムだった件』、『トリニティセブン』など数多くの作品での主題歌や楽曲のプロデュースをはじめ、近年では「アイドリッシュセブン」のサウンドプロデューサーとしても知られる佐藤純之介。古巣・ランティスを離れ、独立した名プロデューサーが『神クズ☆アイドル』でアイドル・ZINGSをプロデュース!

やる気のない仁淀ユウヤ(CV:今井文也)とかわいらしくアイドル然とした佇まいの吉野カズキ(CV:堀江 瞬)によるアイドルユニット・ZINGSだったが、ある日仁淀は幽霊となった伝説のアイドル・最上アサヒ(CV:東山奈央)と出会う。
仁淀がアサヒに憑りつかれたことからZINGSのアイドル活動は息もつけないほどのドタバタの渦中へ――そんな彼らが歌う楽曲について話を聞いた。

■【撮りおろしインタビュー】アイドルユニット“ZINGS”を演じる今井文也・堀江 瞬 インタビューはこちら

『神クズ☆アイドル』と音楽プロデューサー・佐藤純之介の出会い
――『神クズ☆アイドル』の音楽を担当されることになった経緯を教えてください。

佐藤純之介 元々僕はバンダイナムコアーツ、ランティスで働いていたのですが、ランティス時代から色々な座組がありまして、エイベックスさんの音楽制作のお仕事もしていたんですね。古いものでいえば、アニメ『犬とハサミは使いよう』や、『トリニティセブン』や『おそ松さん』のエンディングを作らせてもらったこともあって、エイベックスのプロデューサーさんとはずっとご縁があったんです。そんななか、僕が独立するとなったときに担当の方にご挨拶をさせていただいたところ「ぜひご一緒したい作品があるんです」とのことで。「ぜひ」とお話を受けることになりました。


――そのお話のあとに『神クズ☆アイドル』の原作に触れることになったと思いますが、この作品の印象というと?

佐藤 ギャグマンガとして本当に面白いなぁと思いますし、コロナ禍もあって世の中的にエンタメも暗い影を落としている今、「これからなんとかしなくてはいけない」という空気にもなっていて……自分自身もエンタメの力でなんとかしなきゃと考えたり、ライブができず演奏の機会のないアーティストから相談も受けているので、「どうにかしなきゃいけない」と悶々としているときにやる気のないアイドルというのはすごく面白くて、「なるほど!」と。あとは純粋にギャグマンガとして突き抜けるような面白さがあり、悩まずに読めるんですよね。元気なシーンや明るいシーンがあると、そのままストレートに受け止められる。「ここでのアサヒのセリフはこういうバックボーンがあるからこそ」というような考察をしなくてもいいし、ストレートに面白いけれどそのなかにも成長がある形が面白いなと思いました。

――こういった音楽モノの作品は、読んでいるとどこか自分の中で音楽が鳴るような感覚があるかと思います。例えば「BECK」や「四月は君の嘘」など。
佐藤さんがこの作品に触れた際にはどんな音楽が流れましたか?


佐藤 最初は(この作品の音楽について)本当に悩んでいました。実は、ギャグの色濃さやキャラクターの強さもあって、頭の中に音楽が流れてこなかったんです。アニメの音楽についての打ち合せをする前に原作を読んだのですが、原作の中に出てくる2ndシングルのタイトルが将棋の駒の名前で。どういうこと!?って思ったけど、いわゆるとんちきな曲ではなくて、ZINGSのオタク3人が仁淀を見て「イケメン!かっこいい!」と言っているということは、その“かっこいい”に値する曲でなければいけないじゃないですか。でもかっこいいけれど吉野くんはかわいいし、しかも2人。KinKi Kidsさんや、2人組のアイドルはたしかにいますが実は多くはないので、そこのコントラストがわからず最初はとても悩みました。
最初の曲を出してから次の曲を提出するまでに時間を掛けてしまいましたし、スランプに陥りましたね。

名プロデューサーのスランプ。その理由は……。
――佐藤さんは割と数多くの楽曲をどんどん生み出される印象の強いプロデューサーというイメージがあるので、スランプは意外ですね。

佐藤 そうなんですよね。ちょっとだけ脱線しますが、楽曲を作る過程のお話をすると、エイベックスのプロデューサーさんから「こういう曲を作ってください」というお話があって、ある程度の方向性が定まってから「それなら作り始められるかも」と動き出したんです。
最新のK-POPの流れのある楽曲ではなく、いわゆる王道なアイドルソングで、なんならちょっと年齢層が高くてもその人たちにグッとくる感じにしたい、と。そしてもう1つ、すべての曲が「シングル曲」のような存在感であってほしい、ということだったんです。実際にカップリングの曲になったとしても、その曲もシングルのタイトル曲のようなものにしてほしい、と言われて「全曲明るい方向性ですね」という形でお受けしたのですが、プロデューサーさんからさらに前代未聞なオーダーがあったんですよ。

――前代未聞……?

佐藤 歌詞と曲を完成させた状態でデモをプレゼンさせてほしいって言われたんです。これは、僕にとっては前代未聞のオーダーで。音楽プロデューサーの役割としては、元となる座組の大きさはもちろんありますが、アイデア力と強い作家と強い作詞家を使えば売れる曲を作ることはそれほど難しいことではないんです。
でも、そうではなく、プレゼンする段階で完成させたものを作るということは、作詞でも作曲でも仕上げていかなければいけないし、「曲は良いけど歌詞はね」と言われればその曲はボツになってしまうし、その逆もあり得る。「歌詞は良いけど曲は良くないね」と言われたらボツ。力のある作曲家と作詞家を使って作れば段取り的にスムーズに作ることはできるけれど、歌詞がNGなら曲ごとボツになってしまう……となれば、その都度ボツだったことをお伝えしなければいけない。「先生、歌詞はすごく良かったのですが、今回はボツになってしまいました」なんて作家さんには言えないわけです。名の在る作家さんは決め打ちしてお願いするものですが、決め打ちしたものが上手くいく保障がない。本来は楽曲のデモを作って、「このメロディ、良いですよね」となり、「それならこういう方向性の歌詞で先生にお願いします」と作家さんにお願いするものですが、それが封じられてしまった。
つまりは『神クズ☆アイドル』の歌を、監督や脚本の方にお聞かせする前に、完全に作り上げてプレゼンをしなければいけない、ということにすごく苦労をしました。それもあって原作を何度も読んで、読み尽くしましたし、その結果出来た曲が今、リリースされている曲になっています。

――決まってから微調整する猶予もなかったのでしょうか。

佐藤 やろうと思えばできたのですが、監督さんや委員会の皆さん、原作の先生と僕が直接やり取りできるわけではなかったので、僕のところですでに「100点を取る」ことが最初のお題になってしまった。でもそのぶん、これまでで一番原作を読み込むことになりましたし、吉野くんのかわいらしい優しさや仁淀が奥底に持つちょっぴり存在する熱いハートとか、アサヒちゃんとの対比を表現できるような曲は作れたかなと思います。

――前もって詳細なリファレンスを持っていないと難しいですよね。

佐藤 そのリファレンスが原作だったんです。普段だったら信頼する作家さんにお願いすればいいことですが、答えがないところに答えを作って提案する、というお仕事になっているので、かなり苦労しました。

――そのなかでこれだけバラエティに富んだ楽曲群が出来たのはさすがです。

佐藤 ありがとうございます!ただそのお題に応えたことで、作品と楽曲のシンクロ率という意味では、僕が今まで関わってきた作品の中でもピカイチなものを作れているのではないかと思っています。

登場するアイドル・ZINGSの印象とキャストの印象は――
――登場するアイドルについても伺いたいです。ZINGSの2人を演じる今井文也さんと堀江瞬さんが「純之介さんはスパルタだった」とおっしゃっていました。そんな今井さんと堀江さんの印象と彼らの歌唱についてお聞かせください。まずは今井さんについてお願いします。

佐藤 『神クズ☆アイドル』のお話をいただいたときに、ちょうど今井くんは別の作品で一緒にお仕事をしていて。まさに「今日、生まれて初めてレコーディングをします!よろしくお願いします!」とやってきた青年が今井くんだったんです。そのときに歌ってもらう曲がとても難しい曲だったんですけど、めちゃくちゃ練習してきて、自分のものにしていたんですね。すごく歌が上手いし、若くてイケメンだし。「これはやれるな」と思って、『神クズ☆アイドル』のキャストさんの候補になりそうな人いませんか?と聞かれていたことを思い出して、今井さんのお名前を入れたところキャスティングされていました。原作を読んだあとだったから特に思ったんですけど、「今井くんは仁淀だ!」と感じたんですよね。見た目のイケメンさやスタイルの良さは仁淀感がありますが、中身はすごく良いヤツですし、やりたいことがはっきりもしていて、初めて会ったときから「イケる!」という手ごたえがありました。

――その仁淀こと今井さんは、仁淀とアサヒちゃんの両方を表現しなくてはいけない。最初に「今井さんはどうだろうか」と言われたのも佐藤さんだということですが、この両面をやることへの、今井さんのポテンシャルはどの辺りで見抜いたのでしょうか。

佐藤 クズ仁淀のイメージはすぐ沸いたんですけど、神仁淀のイメージはすぐには湧かなかったんです(笑)。でも『神クズ☆アイドル』の前に歌を録らせてもらっていましたし、その際に明るい曲はもちろん、声の低い部分も高い部分もどちらも歌えていたので、表現力のベーシックがあることはわかっていましたから、努力すれば「クズ仁淀も神仁淀も、どちらもイケるでしょう」という気持ちはありました。

――堀江さんについてはいかがですか?

佐藤 堀江さんについては今回の作品で初めましてだったのですが、人柄の良さが印象的でした。すごく柔らかな人で、演技や歌に対してとても真摯で真面目に取り組んでいらっしゃって。正直、名前の知られている方ですし、すごく忙しい方なので気を遣わなければ!と思っていたのですが、むしろこちらにすごく気を遣ってくださる方でしたし「遠慮なくどんどん言ってください!」とおっしゃってくださったんです。こちらからのお願いに応えて何度もトライをしてくださりとてもありがたかったですね。僕、アフレコにも伺っているんですが、堀江さんのアフレコを見て「吉野がいる!」と思ったんです。キャラかご本人かわからないくらいで。歌っているときも吉野だったけど、しゃべっていても吉野。キャラへの憑依がすごくて「この人はすごい表現者なんだな」と思いました。

――ZINGSはどんなアイドルだと思われますか?

佐藤 ZINGSってファンがそこそこいるんですよね。地下アイドルで、本当にやる気がないメンバーがいるだけのユニットなら、作中に出てくるようなキャパのライブハウスは埋まらないですし、そこから、彼らにどんな魅力があるのか?と想像したときに、実は実力派で、踊りも歌もスペックが高いんだなと。練習をやっているかどうかは置いておいて(笑)

ZINGSの音楽、その成り立ち。
――そのZINGSの楽曲の制作が大変だった、というお話は先ほど伺いましたが……。

佐藤 ボツ曲が山ほどあります(笑)。

――そうなんですね。どれくらい作られたんですか?

佐藤 本編に入る曲のために30曲くらいは作ったと思います。その後採用された曲はもちろんですが、採用されなかった曲は別でZINGSの持ち曲というポジションになったりしたので歌詞を直したりして。既存曲として今後リリースすることになっていきますが、相当たくさん作りました。

――答えを見つけにいく制作。「こういう雰囲気の明るい曲が欲しい」と原作からイメージしていくのか、どんなふうに展開していっても対応できるようなバラエティを佐藤さんのほうであらかじめ付けていったのか……。

佐藤 バラエティを持って作りました。もちろん脚本はありましたから、この場面ではこういう曲を歌うだろう、というイメージもありました。あとは過去の僕が関わった作品でも常に考えていることですが、「○○風アイドル」という言葉があったとして、そのアイドルは活動して何枚もアルバムを作っていくなかで○○風な楽曲だけで何枚も作品を出していくわけでもないですし、かっこいい楽曲を集めたアルバムだったとしてもその中にはかわいい曲や伸びやかな曲といったエンターテインメントとしてのバリエーションを持っていると思うんです。例えば、キャラクターソングだと「このキャラクターはこういう人だから」とイメージの統一された楽曲が出てきたりはしますが、実在のアイドルと仮定したときにリリースしていく楽曲として、2人のポテンシャルを考えたプロデュースを、実際のアーティストをプロデュースするのと変わらずにやること。デビューシングルがこういう曲なら、2ndシングルはこうで、カップリングの曲では吉野くんが目立っているからこっちの曲は愛想のある仁淀がいいよね、そのあとにはファンサの曲も作ろうかな、と本物のアイドルと仮定した上で自分の中でプロデュースプランを立てて落とし込んでいった感じです。それを委員会やスタッフさんたちに判断してもらった感じでした。

――完全にZINGSのプロデューサーですね。

佐藤 そのつもりで作りました(笑)。

――ZINGSの音楽の軸としては、彼らのどんなところを出そうと意識された制作だったのでしょうか?

佐藤 まず、神仁淀とクズ仁淀の両方がありますよね。クズ仁淀ってクズですし、アサヒちゃんと出会うまでは本当にクズだったんですけど、それでもあれだけのファンが集まっていたわけですから実力はあるんですよね。そこでキャストのお二人の「スパルタだ」という言葉に繋がっていくのですが、音楽としての完成度と音楽としての歌唱レベルの高さのハードルを全体的に高めに設定したので、大変だったと思います。

――実力派アイドルとしてのハードルが設けられていた、ということですね。堀江さんご自身は息を抜く表現で年齢感を出すという表現をしていた手法を封印しなくてはいけなかった、とお話されていました。

佐藤 そうそう。ここでもう1つの縛りが活きてくるんです。ちょっとハイパワーな曲を作ったから、そこではキーのレンジを落として楽に歌えるように、と考えたいですが、プロデューサーからの「全曲シングルのような楽曲」というオーダーが顔を出すんです。シングルになる曲は声を張って抜けが良くなるような高めのキーにしなくてはいけない。カロリーの高い曲でないとシングルとしてのメッセージを届けられないと思っているので、そういう意味ではカロリーの高い曲ばかりを作っていますね。

――そこでの2人らしさを出すために重要だったのはどんなことですか?

佐藤 ハードルを高くしていたので、一番ZINGSが輝いて聴こえるキーやテンポ感、全曲でタイアップがついているんだというくらいシングル曲としてキャッチーに聴こえるもの、となったときにやっぱり歌っていてしんどい曲にはなっていたので、工夫としてはなるべく2人で歌うことを最大限に活用して、歌い分けを増やしました。交互に歌えるように。そのときのキーに対して、それぞれのキャラクターの声が活きるように設定をしているんです。仁淀が神でもクズでも、どちらでも表情をつけられるように。吉野くんであればかわいくできるキーで歌えるように。歌う内容によってメロディを調整しているんですけれども、サビはユニットだから一緒に歌うように作っていきましたが、大変でしたね。

クズ仁淀と神仁淀。『神クズ☆アイドル』だからこその面白さ。
――クズ仁淀と神仁淀。その差をどのようにつけようと考えられたのでしょうか。

佐藤 キャラソンとして歌ってもらったというところでしょうか。神仁淀に関しては(アサヒ役の)東山奈央になれ、と言いました。「君は東山奈央だ!」って。ひたすら口角を上げて!とか「奈央ちゃんならそうは歌わない」とか「奈央ちゃんならもっとこうするね」と言いながら、(今井は)脳内東山奈央とずっと戦っていたんじゃないかなと思います。

――その“脳内東山奈央”を作るためにも、東山さんのアサヒちゃん像もきちんと作らなければいけなかったかと思います。そちらはいかがでしたか?

佐藤 アサヒちゃんも難しかったです。例えばピンのアイドルでリファレンスになる存在というと松浦亜弥さんとか……。でも『神クズ☆アイドル』の世界観でいうと、ここ4~5年の時間軸になりますし、そこから考えると坂道やAKBのセンターの子みたいなイメージはあるんですけれども、そのどちらでもないんですよね。しかも最近ではピンのアイドルもそれほどいない。ユニットのアイドルを想像してもなかなか出てこず、「これはどういうアイドルなんだろう」と悩みました。一番イメージの近い人がある意味のリファレンスになると思って探していたんですが、結局見当たらず。これはピンのアイドルの、新しい形態だと思って。アイドルは独立するとアーティストっぽい活動になっていく方も多いですが、アサヒちゃんはアイドルで歌い続ける人なんですよね。それは今でいうと、「声優アイドル」が近いんじゃないかと思ったんです。そこをリファレンスにしていくか、と悩んでいたところで奈央ちゃんに決まったので、キュルルン♡な感じのアイドルソングをアニソンとして作ればイケるな、と思ったんです。最初はJ-POPだとか昔のアイドルを探ってもいたのですが、声優アイドルの歌がイメージできた。それを(今井に)ディレクションしていきました。

――そのディレクションで大事にしたのはどんなことですか?

佐藤 笑顔の表情ですね。普段、彼(今井)が使っていない(笑)。とにかくキラキラとした声質にするために「笑顔が足りない!」と何回も言いましたね。逆にクズ仁淀ではかっこいいしやる気がないけれど、歌は最低限、ある一定のレベルで歌える設定なので、表情は最低限につけながら、歌として上手くなるように録った感じでした。

ZINGSの軸となる曲について話を聞く
――そんな『神クズ☆アイドル』の楽曲についても伺います。まずはOP「Let’s ZING!」はどのように制作していかれたのでしょうか。

佐藤 最初に相談をされたときに、実はこの曲のベーシックになるアイデアが打ち合せの間に頭に浮かんでいたんです。僕がエイベックスさんのサウンド、そして小室哲哉さんの音楽が大好きということもあって、その系譜の音楽にしたいと思っていたんです。そうすることでプロデューサーからのオーダーにも応えられるし、明るい作品ともシンクロしたものが作れる。あとはダンスが踊れると思ったんです。ダンスもので、もうちょっとスロウなものも考えたのですが、テンポを遅くするとどうしても最先端のLDHやK-POPのサウンドに寄っていってしまうとも思ったので、ここはテンポの速いもので。そしてラップではない早口言葉を入れることにしたんです。ラップってどうしてもかっこ良くなっちゃいますからね。そうではなく早口言葉で目まぐるしい感じを表現したいと思ったので、それらを作曲のShinnosukeさんに投げました。Shinnosukeさんもいわゆるエイベックスサウンド、TKサウンドが大好きな方なので、ド直球のオーダーをしたんですよ、Shinnosukeさんが喜ぶオーダーというか。「こういうの作って」って言ったら「えー!?それを仕事として作っていいんですか!?」って返ってくるくらいに、楽しみながらテンションMAXで作ってくださって。その楽しさも込められた曲になったと思います。



――作詞は工藤寛顕さんです。

佐藤 先ほどもお話をした通り、大御所の方にはお願いし辛い状況だったので、作詞については本当に悩んでいたんですが、そんなときに工藤くんと知り合ったんです。元々はオーディオショップの販売員であり広報も担当していた人で、そのオーディオ機器の会社の番組に出演もしていたんですよ。その工藤くんが会社を辞めて、作詞家になりたいと言って……最初は「え?」って思ったんです。そんなに簡単になれる職業ではないんだぞ、と。ただ別件で作詞の話があって、コンペだから一度出してみないか、と声を掛けたんです。CMタイアップだったのですが、そこで実力を測ろうと思ったら見事に受かって。すごく良い歌詞を書いていたんです。元々彼自身は声優志望で地元の北海道から上京してきたけれど、上手くいかずに別の職業を選んでいたのですが、そのコンペでの歌詞を見て「これはいけるかもしれない」と、『神クズ☆アイドル』の原作を渡して、当時完成していた楽曲の中から5曲くらいの作詞を頼んだんです。その中身がめちゃくちゃ良くて。最初に出来上がってきたのが「Let’s ZING!」の歌詞だったのですが、実際に歌を乗せてみたら、作詞の初心者にあるような歌詞の母音と音のずれなどもなくて。すごく勉強してきたんだと感じましたし、まだ作詞家として新人でもありますし、何度もボツを出しても心配はないので、ボツも出しまくりながら歌詞を作っていったんです。この出会いがあったからこそ『神クズ☆アイドル』の音楽が作れたと言っても過言ではないです。彼の、プロの作詞家としてのデビューは3月にリリースされたZINGSの2ndシングルの「MORNING」になりますね。

――そしてアニメのメインエンディグである「キミキラ」がいかがですか?

佐藤 「Let’s ZING!」は男らしさとか雄味のあるフェロモンが出ているので、吉野くんに寄せた楽曲にしたいと思ったんです。仁淀の歌は神仁淀の部分ではありますが、吉野くんの甘さやかわいさを「Let’s ZING!」とのコントラストをつけつつ出していきたいと思ったんです。イケイケなデジタルロックに対しては、生サウンドでかっこいいだけではなくかわいさもプラスした曲にしたいと思って作りました。



――こちらの歌詞はmiccoさんですね。

佐藤 ほんわかさせたいなと思ったときに、miccoさんはそういった世界観が得意ですからね。さすがmarbleです。ほんわかさせつつも少しドリーミンな感じにしてくださいました。「Let’s ZING!」は「Let’s SING」に掛けて、オープニング感がバリバリに感じられるものを意識していたのですが、エンディングでは読後感を意識したんですね。「今週の『神クズ☆アイドル』も面白かったなぁ」と思いながら聴いてもらいたかったので、あまり強いメッセージではなくて、自分らしくあろうね、という感じにしたかった。それは吉野くんのキラキラ感の表現にも繋がるし、仁淀の、アイドルとしてはダメかもしれないけれど自分はそれでいいんだ、という自然体とか彼の中の熱さを「そのままでいいんだよ」と伝えられるようなものにしたかったんです。あとは作中で登場するオタク3人の視点ですよね。彼女たちは神でもクズでも仁淀を肯定しているんですよね。そういう肯定感みたいなものを大事にしたいなとも思ってこの曲を制作しました。

――そしてもう1曲伺いたいのは「恋のBANG」です。オーディションの課題曲でもあったと伺いましたが、この曲の制作時期は早かったということですよね。

佐藤 順番で言えば、まさに今お話をした順番で作っていたんです。つまりは「Let’s ZING!」「キミキラ」「恋のBANG」。これからガンガンいくぜ!という「Let’s ZING!」、読後感ある「キミキラ」に対して、ファンサの「恋のBANG」という形で作りました。アサヒが乗り移ってファンサをする、象徴的な曲でもありますし、「これをやるための曲が必要だな」と思って。実はオーダーされたわけではなかったのですが、物語の中でファンサするのに良いな、というところを曲に込めました。「Let’s ZING!」が僕の中ではすごくカロリーが高かったんですよ、すごく大変な苦悩をして作っていまして。そこからもう少し力を抜きたかった。激しくビートを刻む曲ではなく、緩いけれどもシングルにも成り得るような曲を、ということでライブの中間にやれるような曲にしようと思って、ロックテイストだけどかわいさもある、星野 源さんの楽曲のようなソフトなサウンドを目指しました。



佐藤純之介が見る『神クズ☆アイドル』の未来
――今後はイベントやファンミーティングなどもあり、作中のライブも含めて展開が楽しみな本作とZINGSですが、物語の中でアサヒちゃんとの関係や吉野くんとのやり取りを通してただのクズだった仁淀くんの成長もあるので、楽曲自体も進化していきそうですよね。

佐藤 まさに楽曲と歌唱も育っていくと僕は思っていて。作中のライブで歌いながら変わっていくと思いますし、すべてがシングルになる曲、という縛りの中で作ってきた楽曲でもありますから、ベスト盤のようなラインナップになっていくと思います。ただ、たくさんの楽曲を作っていますが、シングルになる楽曲といえどもどのアーティストさんも様々な表情のある楽曲を出していますよね。イメージ一辺倒ではなく。ZINGSもアニソンとして成立しなくてもすべてがシングル、という意識で作っているので、テンポの速い曲もあれば、遅い曲も今後は出てくるでしょうし、色んなシングルの形を表現したので、もし今後リアルでもライブを開催するようなことがあれば、ライブは楽しいものになると思います。(今井と堀江の)2人には頑張ってもらいたいと思います(笑)。

――今後たくさんの楽曲が「神クズ☆アイドル」を通して視聴者の皆さんへと届くことになりますが、今後を楽しみにしている皆さんへ楽曲の魅力を予告しつつメッセージをお願いします。

佐藤 アニソンでもアイドルソングでもない独特の「神クズ☆ソング」として、新しい解釈が出来る音楽を「神クズ☆アイドル」でたくさん作れたかと思います。新しいアイドルソングの形をご提示させていただきましたので、ストーリーとともにお楽しみください。

INTERVIEW & TEXT えびさわなち

●作品情報
TVアニメ『神クズ☆アイドル』
2022年7月1日(金)25:53より
テレビ東京・BS11・AT-XほかにてTVアニメ好評放送中
dTV・アニメタイムズ・ABEMAほかにて配信

【原作】
いそふらぼん肘樹(月刊コミックZERO-SUM/一迅社 刊)

【キャスト】
仁淀ユウヤ:今井文也
最上アサヒ:東山奈央
吉野カズキ:堀江 瞬

瀬戸内ヒカル:寺島拓篤
岬チヒロ:佐藤拓也
内濱アキラ:小林竜之
灘ユキナリ:石谷春貴
伯方ホマレ:阿座上洋平

信濃ヒトミ:喜多村英梨
河川敷:上田 瞳
ツギコ:大地 葉
しぐたろ:石見舞菜香
ナレーション:速水 奨
ほか

【スタッフ】
原作:いそふらぼん肘樹(月刊コミックZERO-SUM/一迅社刊)
監督:福岡大生
シリーズ構成・脚本:蒼樹靖子(スタジオモナド)
キャラクターデザイン・総作画監督:細田沙織
プロップデザイン:高村遼太郎
美術監督:井戸千尋
色彩設計:村田恵里子(グラフィニカ)
色彩設計補佐:萩原千颯(グラフィニカ)
3DCG:V-sign
3DCGディレクター:上薗隆浩
撮影監督:本間綾子
撮影:T2studio
編集:重村建吾
音響監督:郷 文裕貴
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:myu
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ、テレビ東京ミュージック
アニメ―ション制作:Studio五組
製作:「神クズ☆アイドル」製作委員会

【放送情報】
テレビ東京:7月1日(金)より 毎週金曜25:53~
BS11:7月2日(土)より 毎週土曜22:00~
AT-X:7月2日(土)より 毎週土曜21:00~
 毎週月曜28:30~/毎週土曜6:00~
テレビ愛媛:7月4日(月)より毎週月曜25:30~
※放送日時は変更になる場合がございます。

【主題歌】
オープニングテーマ「Let’s ZING!」/ ZINGS(仁淀ユウヤ、吉野カズキ/CV.今井文也、堀江 瞬)
エンディングテーマ「キミキラ」/ZINGS(仁淀ユウヤ、吉野カズキ/CV.今井文也、堀江 瞬)

©いそふらぼん肘樹・一迅社/「神クズ☆アイドル」製作委員会

●リリース情報
TVアニメ『神クズ☆アイドル』
OPテーマ「Let‘s ZING!」
2022年7月27日(水)発売

品番:EYCA-13692
価格:¥1,650(税込)

<収録内容>
1. Let‘s ZING!
作詞:工藤寛顕 作曲・編曲:Shinnosuke
2. 恋のBANG 神ver
作詞:松藤量平 作曲・編曲:青木宏憲(HANO)・廣澤優也(HANO)
3. Let‘s ZING! (Instrumental)
4. 恋のBANG (Instrumental)

TVアニメ『神クズ☆アイドル』
EDテーマ「キミキラ」
2022年7月27日(水)発売

品番:EYCA-13693

<収録内容>
1. キミキラ 神ver
作詞:micco 作曲・編曲:本多友紀(Arte Refact)
2. イタズラHoney
作詞:工藤寛顕 作曲・編曲:Shinnosuke
3. キミキラ (Instrumental)
4. イタズラHoney (Instrumental)

関連リンク
TVアニメ『神クズ☆アイドル』公式サイト
https://kami-kuzu.com

TVアニメ『神クズ☆アイドル』公式Twitter
https://twitter.com/kamikuzu_PR

佐藤純之介 公式Twitter
https://twitter.com/junnoske_suite