TEXT BY 塚越淳一
来栖りんが魅せるハイレベルなボーカルと完璧なパフォーマンス
2023年5月24日に1stシングル「I wish」でソロアーティストとしてデビューを果たした来栖りん。タイトル曲は、TVアニメ『神無き世界のカミサマ活動』のOPテーマで、アニメの主題歌を歌うという彼女の夢が叶った1曲でもあった。その後、1stミニアルバム『Happy Lucky Diary』を9月27日にリリース。1stライブ“Happy Lucky Party”は、その2枚を携えてのライブとなる。ライブは昼と夜公演で行われたのだが、ここではソロとして本当に初めてのワンマンライブのステージとなる、昼公演の模様を振り返っていきたい。
オープニングムービーは、来栖のアクリルスタンドを使った一人4役の朗読劇からスタート。声優としても、もっともっと成長していきたい!という彼女の強い想いが溢れた試みで、しっかりキャラ付けをして演じ分けていたのが印象的だった。映像が明けると、ステージに来栖が登場。最初の1フレーズを歌い、「ハッピーでラッキーな1日にしましょう!」と元気に声を掛けて始まったのは、1stミニアルバムのリード曲でありアッパーチューンの「ハピ♡ラキ」だ。丸いバルーンがいくつも飾られたステージセットが青く光り、センターの大きなスクリーンには、彼女がセーラー服姿になって青春を描いたMVを映し出す。それを背に、ステージではハンドマイクでダンスをしながらパフォーマンスしていく来栖。
「私、ワンマンライブでこんな大きな声を浴びられるとは思っていなくて……。でも、みんなと目を合わせて時間を共有して音楽を楽しめることを嬉しく思います」と感謝を伝えると、「今日はみんなが声を出してくれることがわかったので、次の曲はみんなに任せちゃおうと思います!」とコーレスの練習をしてから、ファンの声量が大事になる「Get you ×2」を歌って盛り上がる。ダンスではハートを作ったり、ツインテールを揺らしながら、とても楽しそうな姿を披露。「臆病シャイガール」は、ステージ前方エリアのプレミア席の観客に写真と動画の撮影が許されていた曲(※撮影可能曲はその後も数曲あった)。あまり声優アーティストのライブでは見ない光景だが、思い出を形に残しておけるのは素晴らしいことだと思う。ゆったりとしたバラード調から入るこの曲では、彼女の表現の繊細さが存分に感じられる。そこから徐々に盛り上がっていく緩急も楽しいのだが、サビの最後の“(ちゅきっ)”“(ピースっ)”“(ちゅっ)”などなどのキメ、そして続く「Hop Step Jump☆ウィンク」も、語尾の“ぞよ”が、かわいらしかった。
MCでは息を切らしながら「1人で歌って踊るというのは、とても体力がいりますねぇ」とヘトヘトな来栖。でも、みんなの笑顔がすごく近くて嬉しいと伝えると、衣装の話題になり「ソロアーティストデビューして初めてお作りの衣装」と喜んでいた。
続いては、少し前から予告もされていたカバー曲のコーナー。まずは、彼女が一番好きなキャラクターと話していた千石撫子(CV:花澤香菜)の「恋愛サーキュレーション」(『化物語』)を披露。おそらく何度も歌ってきたであろう楽曲なので、パフォーマンスもパーフェクト!内気な千石撫子を表現するのではなく、来栖りんとしてカバーしている雰囲気だったため、かわいいアイドルソングを聴いているようだった。さらに同じく物語シリーズから、阿良々木月火(CV:井口裕香)の「白金ディスコ」(『傷物語』)を披露。こちらは和風ポップチューン、盆踊り風のダンスをしながら楽しそうに歌っていた。
2曲連続で神前 暁作曲の楽曲が続いたため、3曲連続かと思いきや、最後は「God knows…」ではなく「ハレ晴レユカイ」(作詞:畑 亜貴、作曲:田代智一)を披露!このようにライブ中に選曲予想をしてしまうほど、王道でありつつもオタク心をくすぐる選曲だった。そしてまた「ハレ晴レユカイ」も完全に自分のものにしていたところに、アニソンへの深い愛を感じるステージだった。
“淋しくない ばいばい”をファンのみんなへ
再び自身の楽曲に戻ったライブ。
この日が初披露となった「クアーフの海」は、リリイベでもあえて歌わずに、この日に取っておいたようで、世界観をしっかりと作り上げたパフォーマンスに「大好きな歌なので、素敵な初披露になって良かったです!」と語る。そして、「次に歌う曲は、私にとってすごく大切な楽曲です。今こうしてみんなと会えているのも、この曲があったからだと思うし、その曲を通して色々な経験をさせてもらえました。みんなにとっても大事な1曲になっていたらいいなと思いながら、気持ちを込めて歌います」と伝え、デビュー曲の「I wish」をMVをバックに歌っていく。タイアップのアニメに寄り添いながらも、新たな世界に飛び込んでいく彼女のことを歌っているかのような歌詞。本当に心を込めて歌っていることが伝わってきて、こちらまでグッと感動してしまった。
ラスト2曲、再び加速していく。クラップが起こった「はじまりはいつも」はサビの解放感が心地良く、続く「ばいばい、」は、みんなで手を左右に振りながら“淋しくない ばいばい”をファンのみんなと重ねていく。
ほどなくしてステージに戻ってきた来栖が、「なんと、ここで新曲を披露したいと思います!みんなタオル持ってる?一緒に振り回すよ!」と叫んで「SUMMER JOY」を初披露。初めてとは思えないほどの会場の一体感!サビではタオルを振り回して、ジャンプをする。会場の声も、この日一番というほど出ていた。まだ音源化されていない新曲だが、このパワーは凄まじい。最後の“キミが好きだ”の叫びも素晴らしかった。最後に「どこにタオル投げちゃおうかな~」と言いながら自分の持っているタオルを投げたが、ほぼ真下に落ちていたのもご愛嬌。
そして最後は、もう一度「ハピ♡ラキ」。1曲目で披露したときよりも、さらに大きな声とクラップが起きていたし、来栖もステージを自由に動いて、みんなと目を合わせたり、コミュニケーションを取りながら楽しんでいた。最後は「今日は会いに来てくれてありがとう。
彼女にとって、ソロとしては初のワンマンライブではあるのだが、初々しさや変な緊張感はまるで感じられなかった。そのくらい完成度が高いパフォーマンスに、ただただ圧倒されたステージ、ファンのみんなもハッピーになれた最高のライブ。早くも次のライブが楽しみになったし、さらに多くの人に、彼女の歌声が届けばいいと感じずにはいられなかった。
■来栖りん 1st Live『Happy Lucky Party』
10月28日(土)東京・山野ホール
<昼公演 セットリスト>
01. ハピ♡ラキ
02. くるーず!
03. Get you ×2
04. 臆病シャイガール
05. Hop Step Jump☆ウィンク
06. 恋愛サーキュレーション(TVアニメ『化物語』10話オープニングテーマ)
07. 白金ディスコ(TVアニメ『偽物語』オープニングテーマ)
08. ハレ晴レユカイ(TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』エンディングテーマ)
09. クアーフの海
10. 境界 Identity
11. I wish
12. はじまりはいつも
13. ばいばい、
14. SUMMER JOY ※新曲
15. ハピ♡ラキ
●ライブ情報
来栖りん1st Live 「Happy Lucky Party」
【日時】2023年10月28日(土)
[昼公演]14:00開場/14:30開演
[夜公演]17:30開場/18:00開演
【会場】東京・山野ホール
関連リンク
来栖りん
公式サイト
https://kurusurin.jp
公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/kurusurindesu
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