BURNOUT SYNDROMES初のワールドツアー・ワンマン編のラストを飾る東京公演が、12月15日に新宿BLAZEで行われた。8月21日の大阪・梅田CLUB QUATROを皮切りに、ソウル、シンガポールを経てのファイナル。
今年はワールドツアーに忙しかった彼らだが、これ以外にも、東南アジアから南米まで世界各地のロックフェス、アニメイベントにも積極的に参加し、楽曲を現地のファンに届けてきた。そんな彼らの2023年を締め括るライブの模様をレポートする。

TEXT BY 田中尚道

始まりはもちろん「Good Morning [New] World」
2022年の“全国ワンマンツアー2022「TOKYO」”では着席かつ発声NGだった彼らのライブも、今回は通常進行に戻っている。会場に詰め掛けたファンの話し声に在りし日を感じていると、力強くも伸びやかな熊谷和海のアカペラが殴りつけてくる。始まりは「Good Morning [New] World」。TVスペシャルだった『Dr.STONE 龍水』のOPテーマである。
圧倒的と呼ぶにふさわしいボーカルで会場の空気を変えた彼らは、間髪入れずに、『ハイキュー!! 烏野高校VS白鳥沢学園高校』のOPテーマ「ヒカリアレ」へとシフト。熊谷に促されるまま、“ヒカリアレ”と歌うステージと客席の一体感。そして3曲目の「エレベーターガール」へとノンストップで進んでいく。

曲のあとはMCだが、彼らのライブではお馴染みというか、なんとも肩の力の抜けたゆるい感じ。今回は、干支の話である。ベースの石川大裕曰く男性の人気N0.1だという辰が来年の干支だが、彼らは申だとか。
ほかに比べるとあまりカッコよさがないという小学生のような話題を、ひとり早生まれのドラムス、廣瀬拓哉に振ったら、答えはうお座。「干支を聞かれて星座を答えるやつと18年もやっている」とボヤく石川だが、楽曲のカッコよさとMCのギャップも彼らのライブの醍醐味である。廣瀬のとぼけた答えに、彼はまだ真っ白なんだとフォローを入れる熊谷。”ましろ”というフリからくるのは、そう、『ましろのおと』のOPテーマ「BLIZZARD」である。世界中で大人気であったというのも頷ける津軽三味線の力強いビートと、その周囲に絡みつくかのような尺八のサウンド。これぞオリエンタリズムと海外ファンを納得させたのも想像に難くない。


三味線と尺八の流れはそのままに、次いで「花一匁」へと続く。『銀魂 銀ノ魂篇』のEDテーマだったこの曲は、原曲はギター、ベース、ドラムのオーソドックスなロックスタイルの楽曲であったが、日本的なフレーズを多用していることから、和楽器のアレンジに違和感がない。そしてインディーズ時代に発表した「神戸在住」である。比較的古めの2曲のあとはまたしてもMC。話題は「BLIZZARD」の三味線。海外で100回くらい「Do you know shamisen?」と聞いたという石川に、三味線と三線の違いがわからないという熊谷。
ちなみに三味線の原型が三線である。客席に日本以外からの来場者について聞けば、アルゼンチンからきたというファンもいる。今年南米でもライブを行った彼らはその旅程の長さから地獄の行程であったと同情していた。そこから石川の世界征服へと話題が変わっていく。悪の帝王になりたいわけではないという彼が目指す世界征服は、年末になると表示される音楽系サブスクの年間視聴曲で1位になることだという。ちなみに石川の1位は宇多田ヒカルだそうだが。
あなたの1位になりたい、あなたという世界を征服したいという話題から続く曲は、今年の3月に発売されたベストアルバム『The WORLD is Mine』から表題曲。インディーズ時代に発表した「ザ・ワールド・イズ・マイン」のリアレンジである。


熊谷とASCA再び新宿BLAZEのステージへ
1曲終わらせて、再びMCへ。手が足りないという熊谷がステージに呼んだのは10月に発売されたばかりの「KUNOICHI」で、コラボしているASCA。

陰の熊谷に対して、陽の存在と紹介された彼女は、9月から行った自身のツアーのファイナルもまた新宿BLAZEであり、熊谷をゲストに呼んだこと、ツアーの初日、大阪で歌詞を間違えたことを告白。熊谷はASCAのライブでやった、姫への想いを胸にしながらもくノ一に惹かれていく落ち武者と、それを誘惑するくノ一のどちらが悪いのかというゲームの続きを提案。
己の恋愛観が丸裸になると言いながら、石川は落ち武者が悪い派。理由は自分に似ているから。廣瀬も落ち武者が悪い派。理由は、女性には勝てないからという少しとぼけたもの。熊谷は両成敗派で、あえて言うならくノ一が悪い。ASCAも歌っているうちに「この女あざといな」という印象になったとのこと。ちなみにこの曲は、相手のいる男に秋波を送る女と、それになびきそうになる男の心情を落ち武者とくノ一になぞらえたものだ。

歌い終わりでASCAが下がったあとは「ハイスコア―ガール」「PHOENIX」「Dream On!!」「FLY HIGH」と続く。後半3曲は、すべて『ハイキュー』に提供された楽曲である。「FLY HIGH」のあと、彼らもまたステージを去るが、会場の熱気は冷めず、誰とはなしに歌い始めた「FLY HIGH」の輪が広がっていく。かくしてアンコールに突入。みんなの歌う「FLY HIGH」を聞いていたくて出が遅れたとのことだが、ラップ曲である「ʘcean」からスタートし、グッズ紹介へ。熊谷と石川が掛け合い、廣瀬が浮くこの楽曲はグッズ紹介への導入がスムーズだと「TOKYO」のときに言っていたが、「邪教・拝金教」をBGMに廣瀬がグッズ紹介を行うフォーマットはもはや彼らのライブお馴染みである。

季節感を大事にするバンドだという彼らが次に選んだのは「月光サンタクロース」。インディーズ時代、売れない彼らを照らしていた月光に励まされて作ったこの曲のその光の暖かさを客席から感じるという熊谷は、感謝の言葉と僭越ながらサンタとしてこの曲を歌うと告げる。そして最後の曲は「Hikousen」。“星になって 月になって 君をずっと照らしているから”という歌詞が、ライブの最後のふさわしい曲である。

2023年はライブがメインだったため新曲が少なかったBURNOUT SYNDROMESだが、2024年は早々に新曲の発表も控えているらしい。また、「KUNOICHI」に引き続き、ASCAとの新曲もあるとのことである。新曲こそ少なかったものの、精力的に全世界を飛び回った彼らは、世界中に多くのファンを獲得したことだろう。今回のライブは、ワールドツアーの締め括り以上に、彼らがこの1年出会ってきた世界、コロナ以降のNew Worldを総括するものになったのではないだろうか。

■BURNOUT SYNDROMES“Good Morning [New] WORLD TOUR 2023”
2023.12.15@新宿BLAZE

M1.Good Morning [New] World!
M2.ヒカリアレ
M3.エレベーターガール
M4.BLIZZARD
M5.花一匁
M6.神戸在住
M7.The WORLD is Mine
M8.KUNOICHI with ASCA
M9.ハイスコアガール
M10.PHOENIX
M11.Dream On!!
M12.FLY HIGH
<ENCORE>
M13. ʘcean
M14.月光サンタクロース
M15.Hikousen

関連リンク
BURNOUT SYNDROMESオフィシャルサイト
https://burnoutsyndromes.com/