先日、18年ぶりとなるNHK紅白歌合戦への出場が発表され注目度を増しているX JAPAN。
そんなX JAPANが1995年の「DAHLIA TOUR」以来20年ぶりに行っている国内ツアー「X JAPAN JAPAN TOUR」が、12月14・15日の日本ガイシホール公演をもって千秋楽となる。
11月28日に宮城県は石巻のライブハウス、石巻BLUE RESISTANCEでのチャリティ公演から始まったツアーは、横浜アリーナ、大阪城ホール、マリンメッセ福岡、広島グリーンアリーナとめぐった。この後、16年3月にはイギリス、ウェンブリー・アリーナでのコンサートも決まっている。
また、英国での海外公演に加え、16年3月11日には20年ぶりとなるニューアルバムの発売も予定。なにかと活動が滞りがちだったX JAPANがいよいよ本格的に動き出すとのことで多くのファンは喜びが隠しきれない様子だ。
しかし、X JAPANはその長きに渡る活動のなかで、HIDEとTAIJI、二人のメンバーを失っている。今回のツアーでも横浜アリーナ公演のMCでYOSHIKIが「みんなの気持ちを少しでもHIDEとTAIJIにも届けられるよう、世界に向けて頑張っていくので応援お願いします」という言葉を残している。
そのなかでも特に、11年にサイパンで客死したTAIJIの死は謎に包まれている。サイパンへ向かう飛行機のなかで暴行事件を起こし逮捕。その後、拘置所内で首吊り自殺を図り、数日後そのまま帰らぬ人となってしまった。
TAIJIはなぜ暴行事件を起こし、そして自殺騒動まで起こしたのか? 真相はいっさい語られぬまま時が過ぎ、このまま死の理由は藪の中かと思われた最中、ある本の出版により事態は急変する。
生前、TAIJIの内縁の妻として生活を共にしてきた赤塚友美さんが『TAIJI 沢田泰司』(宝島社)という本で彼の死の謎を明かした。そこに書かれていたのは、悪徳マネージャーとの確執、そして、そのマネージャーの奇怪な行動。
出版当時、驚きをもってむかえられたこれらの新事実。ここに当サイトで本書を取り上げた記事を再録するので、X JAPANの再出発の一方で、置き去りにされた、TAIJIの死について、もう一度考えてみてほしい。
(編集部)
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先日行なわれた記者会見にて、2015年12月から20年ぶりとなる日本ツアーの開催、および、16年3月11日に『DAHLIA』以来これまた20年ぶりとなるニューアルバムの発売がアナウンスされ、にわかに注目度を増しているX JAPAN。
活動が不定期な大御所バンドの新たな展開にファンの心も高鳴るばかりだが、その一方、ファンの心につっかえていることがある。
11年7月にサイパンで謎の死を遂げた、元X JAPANのベーシスト、TAIJIのことだ。
彼の死因については当時、"自殺"という報道がなされていたのだが、その死には謎があまりにも多く、いまでも"他殺説"が絶えない。
TAIJIの内縁の妻であった赤塚友美さんが7月に出版した『TAIJI 沢田泰司』(宝島社)では、彼女自らTAIJIの死について調べた結果得られた疑念が記されており、話題となっている。
『TAIJI 沢田泰司』の話をする前に、まず、TAIJIの死について、テレビやスポーツ新聞などで既報の情報から簡単に整理しておこう。
11年7月11日、仕事のためTAIJIはマネージャーらとともにサイパンへ出発。その機内で暴行事件を起こし、着陸したサイパン国際空港で地元当局に逮捕。そして、拘留尋問を控えていた14日夜に拘置所内で首吊り自殺を図る。
以上が彼の死に関しての概要であるが、まず、TAIJIは、なぜサイパンへと向かったのだろうか? そして、なぜ、機内で暴行など働いたのだろうか? そこには、当時TAIJIのマネージャーを務めていた女性と深く関わりがある。
TAIJIとマネージャー女史が出会ったのは09年11月。TAIJIのライブが終わったあとのロビーでのことであったという。「自分の夫はサイパン最大規模のリゾート施設を経営している。そこに二億円の音楽設備があるのだが、使い方が分からないから、仕事のパートナーにならないか」と話しかけられたのが最初だった。
長州力や藤波辰爾といったプロレス関係者や深田恭子といった「有名人との写真を見せて強力なコネがあるとアピールするので、信用してしまった」と赤塚氏は語る。
いずれはTAIJIと結婚して家庭に入ることを考えていた赤塚氏は、その女性にTAIJIのマネージャーを依頼。面倒を見てもらうことになるのだが、その後、二人に対するマネージャー女史の態度は豹変していく。〈とにかく人の悪口をいう人〉になっていき、そんな態度にTAIJIも〈嫌悪感を抱くようになった〉という。彼女のことを「話がコロコロ変わる」「自分のエゴだけで生きている」と評するようになった。
しかも、彼女は〈TAIJIをあちこちに引き回していたが、給料は一円も支払っていなかった〉という。
そんな状況であったことから、当然、マネージャー女史とTAIJIとの関係は悪化の一途をたどり、このサイパン行きの前にも大喧嘩。TAIJIは「これが最後、もう仕事をしない」と赤塚氏にマネージャー女史との関係の終わりを語っていたという。
TAIJIがサイパン行きの機内で暴行事件を起こした旨は先述したが、以上の話から予想できる通り、その諍いの相手は問題のマネージャー女史だった。
ただ、話はここから異様な展開を見せる。なんと、逮捕拘留中だった時期も、意識不明状態だった時期も、TAIJIから赤塚氏のもとにメールが届き続けていたのだというのだ。
その一連のメールはこのようなものだった。
〈プレゼント:クレジットカードで払った場所どこだっけ(中略)返金してください。他にもかなり使ってしまい訴えられたら犯罪になる〉
〈神様が来ます。振り込み頼むね。口座開いてください。他にもありましたらまとめて神様に電話して天罰が当たります僕たちは。電話して神様に謝りなさい頼むね〉
〈クレジットカード請求77万円でした。
さらには、〈市川市の実家の住所調べてすぐ連絡ください〉とのメールから、15回にわたりTAIJIの実家の住所を教えるよう要求するメールが届いたという。
現在、このなりすましメールの件は、赤塚氏が神奈川県青葉警察署に告訴状を提出し、受理されているのだが、出頭要請がなされているマネージャー女史は、いまだ応じていないという。
これだけでも十分異常な事件だが、TAIJIの死に関して、もうひとつ大きな疑惑がある。それは、"拘置所内で何が起きていたのか"という問題だ。
彼が意識不明になったという一報を聞きつけ、赤塚氏とTAIJIの親族はサイパンへ急行。そこでTAIJIと対面を果たすのだが、首吊りと聞いていたのにも関わらず、首にそれらしき痕はなく、その代わり、顔は腫れ、口には粘着テープの跡のようなものがこびりつき、さらに、胸板には棒状の細長く赤い痣がついていたという。
その状況に納得のいかない親族は繰り返し説明を要求。しかし、主治医からは「病院に運ばれた時にはすでに脳死状態だった。ご親族が到着するのを待ちながら、精いっぱい延命治療を施した」と言われるばかりだった。
このことに対して疑念の晴れなかった赤塚氏はTAIJIの死のあと、サイパンの病院にカルテの開示を要求。しかし、カルテは紛失されており、見ることはかなわなかった(カルテの保存はアメリカの法律により義務付けられているので、これは法的責任の問われる過失)。さらに、開示請求した死亡報告書を確認すると、なんと、司法解剖も死後解剖も、何も行なわれていないことまで判明した。
加えて、自殺を食い止められなかった拘置所の責任を問うべく報告書を入手すると、北マリワナ諸島の拘置所では1時間に1回見回りを行なわなければいけないと法律で定められているはずなのにも関わらず、TAIJIの事故が、発生から2時間も発見されていなかったという事実まで判明した。
本当に自殺なのかどうかが極めて怪しいTAIJIの死だが、こういった関係機関の杜撰な体制により、真実は永遠に藪の中になってしまった。
このことに関して、赤塚氏が日本の警察に相談したところ、答えは「サイパン拘置所の不正事件の可能性が高いが、追及は難しいので事件を忘れて新たな道を歩んだ方があなたのためだと思います。まだ若いのだし、これから新たな出会いがあるのだから、この件に長い時間とお金を使うのはもったいない」というものであったという。
これがまだ海外旅行者の珍しかった昔に起きた事件というのならまだしも、2010年代に起きた事件なのだから、驚くほかない。
このようなサイパン当局とのやり取りに関し、赤塚氏はこのようにまとめている。
〈TAIJIさんの死から4年を経る中で目の当たりにしたのは、海外で起きた事件については見て見ぬふりをする日本の風潮とシステムでした。
日本には、海外で起きた事件に対処してくれる機関が存在せず、邦人の身に何か起きても、正当な扱いを受けられているかどうかチェックするシステムがないのです〉
〈拘置所内で首吊りはあり得るのか、どのように脳死判定されたのか、病院はどのようにしてカルテを紛失したのか──ひとりの日本国民の死に関する謎の数々を提示しても、在サイパン領事事務所は情報開示請求にすら手を貸してくれませんでした。ただひたすらサイパン当局側のするままにさせておくだけで、検視さえ求めてくれませんでした。
ひとりのロックミュージシャンが最期に残した"謎"の数々。生前、彼を愛したファンのためにも、それらが解き明かされる日がやってくることを願うばかりだ。
(新田 樹)