生活保護や医療・介護給付のカットなど社会保障を削り、軍事費に約5兆円も注ぎ込むという国民の暮らしを切り捨てる2018年度予算案が、本日午前、衆院予算委員会で「強行採決」された。衆院予算委では、国会に提出予定の「働き方改革関連法案」をめぐってデータ捏造問題が浮上したが、安倍政権は無責任な答弁を連発。
これは明らかに、裁量労働制をめぐるデータ捏造や森友、加計問題で安倍首相がこれ以上、追及されないための措置だろう。衆院の予算審議を早く終わらせてしまえば、安倍首相が答弁に立たなければいけない状況、その様子をテレビ中継される機会はぐっと少なくなる。だから、国会のもっとも重要な議論をすっとばしてしまおうというのだ。
まさに卑劣と言うしかないが、安倍首相は自分の失態や不正を封じこめるために、他にもさまざまな姑息な行動に出ている。。裁量労働制について、午前の締めくくり質疑で「(裁量労働の)きっちり実態把握をしない限り政府全体として前に進めない」と発言、法案の提出時期がずれ込む可能性を示唆したが、これも世論の反発をそらして、ほとぼりを冷ますために先延ばしにする作戦だろう。
そもそも、安倍首相は「裁量労働制のほうが労働時間は短いデータもある」と答弁し、それが捏造データだと判明したあとも、「精査中の情報に基づく答弁は撤回したがデータを撤回したわけではない」「(答弁前にデータが)正しいかどうか確認しろなんてことは、あり得ないんですよ」などと開き直ってきた。
しかも、データからはあり得ない異常な数値が次々に見つかり、その上、加藤勝信厚労相が「なくなった」と答弁していた調査票まで発見されたというのに、安倍首相はデータの撤回も、法案提出の撤回もせず、「自由な働き方をしたいと言う方がおられるのは事実」「(働く人の)目線に立っている」と強調してきた。しかし、安倍首相が一貫して立っているのは「雇用主、経営者」の目線であることは明白だ。事実、26日に経団連の榊原定征会長は「(データの)ミスの問題と法改正の趣旨は別問題」と、安倍首相と同じ主張をおこなった上で、「改正案を今国会中に成立させてほしいというのが我々の立場」と述べている。
●「過労死」問題を追及されてニヤニヤ笑いだす安倍首相
安倍首相はこうしたスタンスをいまもまったく変えてはいない。
昨年、過労自殺に追い込まれた電通の高橋まつりさんの母親と安倍首相が対面した際、安倍首相は"若干涙ぐみながら(話を)聞いていた"と言い、長時間労働に対する実効性のある規制を求められて「私は何としてでもやりたい」と答えたと報じられた。──それがどうだ。捏造データを用いて「裁量労働は一般より労働時間が短い」という明らかな嘘をつき、裁量労働制は過労死につながる危険があることを指摘されていても、ニヤニヤ笑うという不誠実極まりない態度をとっては「落ち着いた議論を」などと言っているのだ。
しかし一番「落ち着いて」いないのは実は安倍首相だろう。安倍首相のこういう言動は、状況がまずいと焦り、なんとかごまそうとしているときのパターンだ。おそらく、安倍首相はこれから裁量労働制データをめぐって厚生労働省の捏造だけでなく、官邸や自分自身の指示の証拠が出てくる可能性を考え、かなり怯えているのではないか。
そうした影響か、同日の衆院予算委で、安倍首相は森友問題をめぐってもとんでもないことを口走っていた。
それは、立憲民主党の本多平直議員が総理大臣夫人付きだった谷査恵子氏が森友学園の「国有地の売買予約付定期借地契約」についての要望FAXを財務省に送っていた問題をとりあげたときのことだ。
すると安倍首相は、こんなことを言い出したのだ。
「国有地の払い下げ、あるいは認可について、一切関わっていないということであります」
「国有地の払い下げか認可について、私や私の妻や事務所が関われば、責任をとると言うことを申し上げたわけでございます」
●国有地貸付への関与追及され「払い下げに関係してたら辞任」と条件変更
ようするに、FAXは国有地の「貸付の段階」の話であって、「私や妻が関係していたら総理も国会議員も辞める」という発言にはつながらない、と言うのだ。1年前、安倍首相が辞める発言をしたとき、「払い下げや認可には関係していたら」なんて一言も言っていなかったのに、いきなり自分の発言を改ざんして、辞任の条件を狭いものにしてしまったのである。
しかし、これ、裏を返せば、安倍首相は妻・昭恵夫人が"貸付に関わった"ことを認めているようなものではないか。
実際、安倍首相自身もこの答弁がまずいと思ったのか、きょうの締めくくり質疑で再度、この問題を問われると、今度は貸付についても「貸付そのものに何か便宜を与えるという意味における関与はまったくない」と、わけのわからない表現でごまかす始末だった。
「強行採決」で裁量労働制データ捏造も、森友、加計疑惑もすべて蓋をしてしまおうという安倍首相。しかし、あの壊れ方をみていると、そのやり口はそろそろ限界にきているのかもしれない。
(編集部)