今年の秋ツアーをもって、12年間在籍したモーニング娘。
「アイドルをプロデュースっ! 楽しそうっ♪ まず歌とダンスに関しては誰かに任せつつ(笑)、オーディションからその子を見つけて衣装とか髪型とかをプロデュースするとか! さゆみはファン目線も持ってますからねっ!!」
これは「B.L.T.」(東京ニュース通信社)2014年7月号のインタビューでの発言だ。実はファンの間では「道重さゆみプロデューサー待望論」は根強い。モー娘。がここまで人気を盛り返したのも、道重の功績が大きい。
そんな道重のプロデュース能力が垣間見えたのが『ミチシゲカメラ'13-'14』(ワニブックス)。道重が、1年かけてメンバーを撮りためた写真集を出したのだが、ファンからも"神写真集"と絶賛されている。
アイドルが同じグループのメンバーを撮るという点では、AKB48の友撮シリーズも同じで、最近では第5弾となる『AKB48 友撮 FINAL THE WHITE ALBUM』(講談社)も発売されて人気を博している。でも、たしかにどちらも普段見られない舞台裏での表情や絡みが見られるという点では同じなのだが、収録されている写真を見比べてみると全く違うことがわかる。
まず、『AKB48 友撮 FINAL THE WHITE ALBUM』の場合だが、メンバー同士で撮っているはずなのに、それぞれのキャラ、イメージ以上のものがあまり出ている気がしない。
アイドルは自分の見せ方がわかっているので、どんなに気を抜いていてもカメラを向けられるとスイッチが入ってしまうのだろう。ピンクのモコモコうさ耳フードをかぶる小嶋陽菜も、マッサージを受けるためにうつぶせになっている松井珠理奈も、気を抜いているようで全く抜いてはいない。どうやったら自分がかわいく写るかわかっているのだ。
舌を出す大島優子の変顔や川栄李奈が目を見開いたり、唇を突き出す変顔も同じだ。自分のキャラを生かし、かわいさを残しながら、面白くしようというサービス精神が出ている。
渡辺麻友も「相手に嫌がられない程度に様子をうかがって、このくらいなら大丈夫かなってところを撮ろうとしてました。自分が嫌な撮られ方されたら嫌だから、そこは思いやりの精神で(笑)」と語っていたが、AKBの友撮の場合、写真を撮る側もかなり気を遣っているらしい。
でも道重の写真は全然ちがう。オフィシャルな写真でも普段のメンバー自身のブログでも見られない姿が映っているのだ。それは、たんに、メンバーいちオンオフが激しいという石田亜佑美のメガネすっぴんショットや、まぶたに目を描いて遊ぶ佐藤優樹の変顔をバッチリ収められているというだけではない。これまでの彼女たちとはまったくちがう魅力が写真に映っているのだ。
たとえば、小田さくらの場合。彼女はモー娘。加入当初、写真写りが悪いことに悩み、かわいくなろうと努力していた。その成果もあってかブログなどで披露する"自撮り"写真がうまいことで有名だ。ただ自撮りの場合、いつも同じキメ角度や流行りの表情ばかりになったり、定型的なかわいさにハマりがちだ。
でも、道重カメラの小田はそういう「定型のかわいい」ではなく、小田らしいかわいさを引き出しているのだ。リハーサル中の真剣な表情やみんなと食事しているときのあどけない笑顔、上を向いて口に手を添え、何かを頬張る姿。
鞘師里保も「メンバーがどういうときに輝いてるかっていうのを、道重さんは良く知ってらっしゃると思います」と語っているように、それぞれのあまりスポットの当たっていない魅力も引き出しているのだ。
そして、AKBの友撮では、メンバー同士でキスしている写真や、巨乳として知られる橋本耀や名取稚菜、森川彩香らの谷間まで見えるアップのバストショット。武藤十夢がソファーで眠っていたり、柏木由紀や阿部マリアがパイプイスの上で体操座りする太もものアップなど、ファンが喜ぶサービスショットも押さえてある。
しかし、道重の場合は、そういった安易なサービスショットで読者を喜ばせようとはしない。あくまで、そのメンバーの表情がメインで、それにさり気なくサービスショットをプラスしている感じなのだ。太ももに定評がある鞘師の場合、ステージに腰掛け、自分で片足を持ち上げてY字バランスのような格好をしている写真があるのだが、自然体な笑顔で無防備にそんなポーズをとっているところが、むしろグッとくる。太ももも自然体な鞘師も堪能できるベストショットになっているのだ。セクシー担当の譜久村聖は、少し気だるげな感じでうつぶせに木のベンチに寝そべり、カメラ目線でピースサインをしている。特別エロい格好やショットというわけでもないのに、彼女の色気は全開で、安心しきった表情を見るとちょっとした彼氏気分さえ味わえてしまいそうだ。
こうした写真が撮れるのはやはり、道重がメンバーから絶対的に信頼されていることが大きい。石田亜佑美は「道重さんに対しての信頼度が大きいので、すごい変顔とかも普通にできちゃいましたね。
でも、それだけじゃない。自他ともに認める"ドルヲタ"道重は、どうやったらメンバーをより魅力的に撮れるのかということを徹底的に追求しているのだ。
カメラは「良さを伝えるもの」だと語る道重は、写真を撮ることによって「その人の良さやモノの良さを共有できる」ことが幸せだという。今回も「一瞬一瞬のその子の良さを逃さないように頑張った」そう。ファンと一緒にメンバーの良さを共有したい。そんなファンとメンバーに対する道重の愛情が、この写真集を生み出したのだ。
こんなふうに、愛情をもってかわいい女の子たちの良さを見つけ、それを引き出してくれる道重。そのため、早くから彼女のプロデュース能力に目をつけていたファンも多く、道重のことを「さゆP」「道重P」と呼んだり、二代目ハロプロプロデューサーやつんくの補佐役を熱望する声も数多く上がっている。
卒業後は芸能活動を無期限休止し、今後のことをゆっくり考えたいと語っている道重だが、卒業後の進路として、道重のプロデューサー転向はあり得るのかもしれない。
(島原らん)