一体、この失敗の責任を安倍首相はどう負うのか。本日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2020年1~3月期の公的年金積立金の運用実績を発表したが、なんと、過去最大の損失額となった2018年10~12月期の14兆8039億円をはるかに上回る、17兆7072億円の赤字となったのだ。
さらに、2019年度の運用実績のほうも8兆2831億円の赤字となり、リーマン・ショックがあった2008年に9兆3481億円の損失を叩き出して以来、過去2番目の損失額を記録。こちらも2020年1~3月期の赤字が大きく響いた格好だ。
無論、今回ここまでの赤字を叩き出したのは新型コロナの影響によって世界的に株価が値下がりしたことが原因だ。実際、すでに4月の段階から1~3月期の運用が17兆円前後になると民間エコノミストが試算し、厚労省も同様の試算を示していた。
だが、今回約18兆円もの赤字を叩き出したことは、「新型コロナのせいなのだから仕方がない」などと済ませられるようなものではない。むしろ、国民が老後のために捻出してきた約18兆円もの年金を一気に溶かしてしまう、現在の運用システムの問題が浮き彫りになったというべきだ。
そもそも、GPIFは国民が積み立てた年金を資産運用し、その金額は130~160兆円にものぼることから「世界最大の機関投資家」「クジラ」とも呼ばれる。だが、以前は国民の年金を減らしてしまう危険性を考え、株式などリスクのある投資を直接的にはほとんどしていなかった。
しかし、第二次安倍政権下の2014年10月に基本ポートフォリオを大幅に変更し、株式への投資を全体の半分にまで増やすことを決定。これは、GPIFに大量に株を買わせれば株価が上がり、景気が回復したという印象を与えることができるという安倍政権の計算があったためだ。
ようするに、国民の大事な年金を世論操作と政権維持に利用したわけだが、基本ポートフォリオを大幅変更したあとの2015年度には5兆3098億円の運用損を叩き出す結果となったのだ。
そして、2019年度は約8兆円もの赤字──。
しかも、この年金を使った「大博打」による失敗のツケを払うのは、言うまでもなく国民だ。
実際、安倍首相は国会でこう明言している。
「基本的に、年金につきましては、年金の積立金を運用しているわけでございますので、想定の利益が出ないということになってくればそれは当然支払いに影響してくる」
「給付にたえるという状況にない場合は当然給付において調整するしか道がないということ」(2016年2月15日衆院予算委員会)
それでなくても株式の投資割合を半分にまで上げたこと自体が高リスクの大博打状態なのに、世界経済は今後、新型コロナの行方に左右されつづけることは間違いない。そして、このまま高リスクの投資に年金が注ぎ込まれつづければ、安倍首相が明言したように、わたしたちの年金給付額が減ってゆく事態になりかねないのだ。
安倍政権が「新型コロナの影響」と言えば国民は納得すると高を括っているのだろうが、問題の本質は、こうした危機の影響をモロに受け、一気に約18兆円もの年金を溶かしてしまう運用のあり方そのものにある。決して騙されてはいけない。