東京都の本日の新規感染者数が過去最高となる293人だと報じられた。昨日は国内の新規感染者数も623人となり、東京近県や大阪府や愛知県といった都市部で感染が広がりつつある状態にある。
しかも、注目すべきは東京都の陽性率の高さだ。小池百合子都知事は昨日の新規感染者数について、検査体制を強化し初めて検査数が4000件を超えた結果だと強調したが、通常、検査数が増えれば陽性率は下がる。しかし、東京都の陽性率は、7月1日には3.9%だったが、同月15日の陽性率は6.0%にものぼっている。 さらに、新宿区の検査スポットでおこなわれた検査の先月の陽性率は18%。飲食業では31%、無職・フリーターなどが24%となっている。この陽性率の高さを見れば、絶対数そのものが増加していることは明らかだ。
こうした陽性率の高さに対し、西村康稔コロナ担当相は〈市中感染が大幅に広がっているとは考えておりません。専門家も同じ認識ですが、「夜の街」対策が急務です〉などとTwitterで反論し、またも「夜の街」だけにスポットを当てたが、一方で東京都医師会の角田徹副会長は「検査件数の増加と同時に、陽性率が上がっているということは市中の感染者の絶対数が増えているはずだ」「新宿だけではなく、都内全体での陽性率が上がっているので、新宿を中心に都内各地へ分散している可能性がある」(NHKニュース16日付)と語っている。
つまり、西村コロナ担当相や小池都知事が「夜の街」をスケープゴートに仕立てているあいだに、何の対策も取られないまま、市中感染はどんどん広がっているのだ。
しかも、さらに懸念されるのは、検査の実態だ。じつは、症状があるのに検査が受けられない人が、この期に及んで出てきているのだ。
昨日16日付の東京新聞によると、今月上旬、練馬区にあるわだ内科クリニックでは、警察官から「池袋の繁華街を一緒に巡回した同僚が嗅覚異常を感じ検査を受けたので、自分も受けたい」という相談があった。
「問い合わせの電話が鳴りやまない状態。保健所の検査枠は満杯で重症者しか検査できない」
その警察官だけでなく、38度の熱が3日つづいていると来院した30代男性についても、保健所からは検査を断られたといい、同院で唾液検査をおこなったところ陽性と判明。〈その間にせきや呼吸苦など症状が悪化した〉という。
重症でなければPCR検査が受けられない──。和田院長は本日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の取材にも応じ、「びっくりしました。医者が必要だと認めた患者さんは全員保健所で(PCR検査を)受けてもらえるものだと思ってました」「需要が多くて重症の患者さんに限定させてもらっていると、こういうことを言われました」と証言。番組の取材によると、練馬区では医師会と協力してつくったPCRセンターが6月末で閉鎖したため区内の検査能力が減少していると伝えたが、つまり、現在は検査がパンク状態となっていた3~4月の状況と同じ状況になっているようなのだ。
いや、「症状が出ているのに検査が受けられない」人が出ているのは、練馬区だけではない。たとえば、新宿の劇場ではキャストやスタッフ、観客らが新型コロナに感染者しクラスターとなったが、4日間で6回観劇したという東京都在住の女性の観客は、2~3日前から鼻水や咳の症状が出て保健所に連絡したものの、「(PCR検査は)一番早くて金曜日。でもその金曜日もキャンセル待ち」と言われたと15日放送の『ひるおび!』(TBS)の取材で証言。この女性は濃厚接触者であり、観劇後に職場にも行ったというのに、検査をすぐに受けられていないのである。
小池都知事と西村コロナ担当相は「夜の街」を連呼しながら「戦略的なPCR検査を実施している」と豪語してきたが、現実には、濃厚接触者なのに検査を受けられない、症状が出ているのに検査が受けられない人が出てきているのだ。どうしてこれで市中感染の広がりを否定できるのだろうか。
しかも、さらに懸念されるのは医療提供体制だ。
たとえば、東京都では軽症者や無症状者の療養施設としてきたホテルの部屋がほぼ埋まったと報じられた。昨日になって池袋のホテルを借り上げて新たに使用可能なったとし、来週23日にはさらに1施設を追加するというが、昨日の時点で療養先を調整している最中の人は417人にものぼる。その上、新規感染者が日に日に増している現状を考えれば、療養用のホテルがパンクする事態が心配される。
そして、それ以上に深刻なのは、病院のほうだ。
菅義偉官房長官は昨日の会見で、東京都で新規感染者数が過去最高の記録を更新しつづけているにもかかわらず、ピーク時に確保している病床数が3300床で、ピーク時に向けて1万9000床を確保していると説明し、「入院患者は増加傾向にはあるものの、医療提供体制は逼迫している状況ではないと認識している」と述べた。
だが、この病床確保にもあきらかに時間がかかっている。東京都は6月29日に1週間以内に最大3000床を確保すべく医療機関に準備を進めるよう通知をおこない、7月3日付の読売新聞でも都の担当者が「1週間あれば3000床まで増やせる」「医療体制は切迫している状況ではない」と説明していたのだが、6月29日の通知から2週間以上経っても、いまだに1900床にとどまっているのである。これは病床確保に難航しているということではないのか。
この背景には、新型コロナ患者の受け入れによって病院経営が悪化している点があるだろう。
当然、ベッド確保のためにも、政府は早急に追加支援策として医療機関の赤字損失補填をおこなうべきであり、国会の閉会中審査でも野党が追及をおこなったが、しかし、加藤勝信厚労相はこれを拒否した。このような状況のなかで、はたしていつ3300床を確保できるのか。いや、それどころか、3000床でも足りなくなる事態も十分考えられる。厚労省は第2波に備えて各都道府県のピーク時の想定入院者数と確保見込みの病床数を推計しているのだが、東京都では確保見込みの病床数が4000床であるのに対し、最悪の場合の入院患者数は9058人となっているからだ。
しかも、このような切迫した状況下で、政府は感染をさらに拡大させるのではないかと批判を浴びている「Go Toキャンペーン」に1兆7000億円を投じようとしているのである。もはや、何から何まで無茶苦茶な状態に陥っているのだ。
昨日の参院予算委員会では、参考人として答弁をおこなった児玉龍彦・東京大学先端科学技術研究センター名誉教授が「東京にエピセンターが発生しており、いま、全力で食い止めないとニューヨークのような事態になる」と危機感をあらわにし、大規模なPCR検査の実施などを提唱。政治の力で感染拡大を食い止めるときだと強く訴えた。
「いま必要なのは、解釈して制限して国民に『こうしなさい』ということで言われていますが、そうではないんです。政治が意志をもって、感染を抑えられるという信念と、国民を守ろうという熱意があるかないかです」
「国会で、国を挙げてワンストップの対策センターをつくって、感染者数を減らす。
「予備費を使って今週投入すれば、1カ月後の100倍価値があります」
だが、この児玉教授の訴えは、安倍政権には何も届いていないのだろう。実際、感染拡大を後押ししかねない「Go Toトラベル」も、結局は東京発着の旅行と東京都民を除外しただけ。さらに、この参院予算委員会に出席していなかった麻生太郎財務相は昨晩、ホテルニューオータニで1000人超が出席する大規模な政治資金パーティを開催。「3密」を避けたというが、感染状況をあえて無視してみせた格好だ。
そして、こんな状況になっても、安倍首相は国会審議の場から逃げ、記者会見すら開こうとしない。このままでは間違いなく、首都・東京を中心地として、再び悪夢が襲いかかることになるだろう。