世耕弘成オフィシャルサイトより

 昨日14日、参院ではじめて政治倫理審査会が開催されたが、出席した安倍派5人衆のひとりである世耕弘成・前参院幹事長に批判が殺到している。

 世耕氏は5年間で1542万円もの裏金を受け取っていたが、1月に開いた会見でも「政治資金の管理は秘書に任せきりの状態だった」などと「秘書ガー」と連呼していたが、今回の政倫審でも「知らない」「わからない」「記憶にない」を連発。

一旦やめたはずの裏金キックバックを復活させた経緯についても、「(2022年)8月5日の会合で復活が決まったということは断じてない」とし、「誰がこんなことを決めたのかというのは私自身、はっきり言って知りたいという思い」と言い放ったのだ。

 まったく何を言うか。とくに安倍派では3年に1回おこなわれる参院選の年は改選議員に全額キックバックが実施されてきた。この“参院への特例”はキックバックした裏金を選挙資金に充てるべく取られた措置であることは疑いようがないが、安倍派の参院議員を取り仕切る立場にあった世耕氏が、裏金の運用やキックバック復活を何も知らなかったなどというのは考えにくい。

 ところが、世耕氏は「(幹部会合では)私自身は参院への連絡役の立場の認識。とくにお金にかかわることに口を挟むのはよくないという思いだった」とし、参院への全額キックバックについても「私になんの相談も報告もなく勝手に決まっていた」と主張したのだ。

 だが、さらに国民の怒りの火に油を注いだのは、この期に及んでも世耕氏が“俺はしっかり政治資金をチェックしてきた”とアピールを繰り返したことだろう。

 世耕氏といえば、下野時代の2010年に〈私の事務所は初当選以来、1円単位できちんと記帳しています〉〈収支報告時には、貴重な限られた時間を犠牲にして、担当秘書にひとつひとつ質問しながらじっくりと確認した上で書類を提出している〉とSNSに投稿。こうした過去の投稿と今回の言い分が食い違うとネット上では指摘されてきた。

 だが、世耕氏はこれに懲りず、昨日の弁明のなかで「法的問題があってはならないとの思いから、外部の大手法律事務所と契約し、法令遵守体制を確立してきた」「この法律事務所のチェックは厳しいもの」「かなり細かいチェックが入ってきた」などと強調。一方、キックバックされた裏金は収支報告書の簿外で管理、現金で運用していたため「私や法律事務所のチェックに引っかかることがなかった」と述べたのだ。

 自分は法令遵守のために大手法律事務所の厳しいチェック体制まで敷いてきたのに、勝手に秘書が裏金を管理・運用していた──。

「そんなバカなことがあるか」とツッコまざるを得ないが、その上、世耕氏が今後の対策として口にしたのは「帳簿残高と口座残高がきっちり合うようにしていくとか、きっちり進めていきたい」というもの。「自分は政治資金チェックに厳しい」とさんざん主張する人物が、確定申告の真っ只中に国民がごくごく当たり前にやっている常識をさも特別なことのように語るとは、タガが外れているとしか言いようがない。

 だいたい、“俺は意識が高い”と強調した世耕氏だが、政治資金や管理にかんする法令遵守の意識はあまりにも低い。

 実際、世耕氏をめぐっては、地元選挙区である和歌山市在住の男性に、「一見さんお断り」で予約なしには買えない老舗洋菓子店の有名高級クッキー缶を贈っていたことが有権者買収にあたるのではないかと問題になっている。

 問題の男性のブログによると、2023年11月ごろに世耕氏と帝国ホテルで会食し、お土産として高級クッキー缶を受け取ったという。その後、男性は銀座のクラブに行き、このクッキー缶をホステスに振る舞ったというが、そのときのことをこう綴っている。

〈「一緒に食べよか。」私のことばに、ホステスのみんなからは今まで聞いたことのないような歓声が。不思議がる私に彼女たちは「このクッキー缶、予約で1年待ちはざらなんですよ。」と教えてくれたのでした。クッキー缶のおかげで今夜はヒーロー、世耕先生、ありがとう。〉

 言わずもがな、公選法では国会議員やその後援団体などが選挙区内で金品を贈ることを禁じている。一方、世耕氏が訂正した政治資金収支報告書によると、世耕氏の政治団体はキックバックを受けた裏金で贈答品を購入し、この老舗洋菓子店では2021年と2022年に総額37万8000円分も支出している。

 裏金で購入した贈答品を、有権者に配り歩いているのではないか──裏金事件を発端に公選法違反の有権者買収疑惑が浮上したわけだが、世耕氏は昨日の政倫審でこんな主張を展開したのだ。

「クッキーは個人的に用意した。和歌山の有権者には私の資金管理団体で購入した贈答品は何一つ渡したことはない」
「贈答品はいくつか還付金の中から買っているが、与野党の政治家との会食の手土産や、経済界などからごちそうになる時にこちら分の負担との思いで返している」

 そもそも、自腹であろうと有権者への金品贈与は公選法違反であることに変わりはない。しかも、ネット上では「裏金の存在を去年末まで知らなかったのに、どうしてその使い道を自分で使い分けることができたのか?」と指摘が相次いでいる。

 世耕氏の政治資金にかんする問題は支出だけではない。2014年には、世耕氏の資金管理団体が人材サービス派遣会社の会長ら役員が分散して個人献金をおこない、その献金額の合計が12年間で5430万円にものぼることが判明。政治資金規正法で定める限度額を超えることから、計画のうえでの違法献金の疑いが持ち上がった。

 さらに2015年には、同じく世耕氏の資金管理団体が関西電力の原発関連業務を受注している兵庫県の設備会社幹部5人から個人献金の限度額である150万円ずつ計750万円を受け取っていたことも発覚。献金した社長らは「会社とは関係ない」と話していたが、献金の日付が集中しており、会社ぐるみで実質的な企業献金を個人献金に偽装し、世耕氏側はそれを承知で受け取ったのではないかとの見方が濃厚だった。

 これらの疑惑は状況から限りなくグレーであったにもかかわらず、結局、その違法性を問われることはなく終わってしまった。今回の裏金問題でも世耕氏は「自分は刑事的には真っ白」などと主張し、立件されなかった事実を盾にして完全に開き直っている。

 だが、居丈高な開き直りを見せるなかで、うっかりボロを出した場面もあった。それは問題の2022年8月5日の幹部会合について追及を受けていたときのこと。

“誰か”から出された“裏金キックバック復活のためのアイデア”に世耕氏に賛同したというが、そのことに言及した際、世耕氏は「しっかり収支報告にも出るかたちで返そうではないかというアイデアが出た」「極めて適法なかたちで対応していこうというアイデアだった」と発言。これは、収支報告書への不記載は違法性があると認識していたことの自白にほかならない。

 世耕氏は「知っていることは全部話した。説明は尽くした」と述べているが、有権者買収問題はもちろん、裏金事件についても、証人喚問に応じ説明責任を果たすのはもちろん、世耕氏には政治的責任をとる必要がある。そして、自己正当化に明け暮れるだけのこのような議員を、次の選挙では必ず落選させなければならない。