
■"デカ盛り激安店"が飲食業界に与える影響
割烹料理やフランス料理など30店舗以上の飲食店を立ち上げ、現在は全国に展開する南インド料理店「エリックサウス」総料理長を務める稲田さんは、飲食業のプロ中のプロ。林先生が「今の日本の飲食業に対して危機感を抱いていらっしゃる?」と斬り込むと「危機感、ありますね!」と大きく頷いた。
「もともと日本の食は安すぎるっていうことはよく言われてきたんです」と稲田さん。飲食業界には「お客さんがうちに来てくれて、美味しいって言ってくれたらそれが一番の生きがいだ、儲けは食っていければギリギリでいい、っていう考え方があって」と指摘した。
それ自体はお店側の善意であり、とても美しいエピソード。だがビジネスとして見ると、きちんと利益を上げなければ立ち行かなくなってしまう。メディアの影響もある、と稲田さん。「誰も悪くないんです。でも全体として、なぜか結果的にそれが飲食業界全体の首を絞めているというか...」と複雑な心境を語った。
■稲田さんが考える、飲食業で生き残るヒント
その悪循環から抜け出し、飲食業界全体が豊かになるためにはまず"みんなに好かれる料理を出さなきゃいけない"という無意識の圧力を取り払った方がいい、と稲田さんは考えている。
料理人が100点満点と思って出した料理は、作り手のこだわりが強すぎるゆえ、お客さんに受け入れられないこともある。
そういう稲田さんには成功体験がある。過去に、本格エスニック料理の弁当店を開店した時のこと。本番さながらの"100点の味"は、なかなかお客さんに受け入れられなかった。
「もう唐揚げ弁当を売ろうよ」と"蓋の閉まらない唐揚げ弁当"を売り始めたところ、これが大ヒット。「そしたら(以前から展開していた)ルーローハンとかガパオも前よりは売れるようになった」という。大衆が求めるメニューと、個性を追求したこだわりの味を両方提供することこそが「一番強い」と稲田さんはしみじみ語った。
■プロならでは!『食べログ』の見極め方とは?
インタビューで稲田さんは、食のプロならではの「『食べログ』の見方」についても解説した。『食べログ』に数ある総合得点高めの人気店から、特に"自分好みの名店"を見つける意外な方法とは?
それは「低評価レビューから読むこと。これが一番お店の特徴がよくわかる」と稲田さん。
「作っているのはプロ中のプロ。彼らが脂っこさやしょっぱさを抑えて"無難な味"を作ることなんて簡単なんです」。しかし、その店は低評価を受けながら、あえてそれをしていない。
「つまり『多くの人に嫌われてもいい。その味が本当に好きな人のために、自分はあえてそれをやる』っていう明確な意志がそこには感じられる。脂っこい、しょっぱい、香草が強いっていうのはおそらくどっしりとしたクラシックフレンチ。そういうものが好きで、そういうものを出そうという確固たる信念がある。100%ではないけれど、お店選びの重要なヒントになります」
こだわりの強い料理ほど、好き嫌いが分かれる側面はたしかにある。それでも確固たる信念を持って料理を作ることが、飲食業界全体を元気にすることにつながるはず――。そんな思いが込められた稲田さんの視点に、納得の表情を浮かべた林先生。スタジオ陣からも、稲田さん流の食べログ活用法に「やってみたくなった」の声が上がっていた。
◇
「日曜日の初耳学」はTVerで放送から1週間、見逃し配信中!話題の<インタビュアー林修>、iPhone13をはじめ2022年版スマホ最強活用術を取り上げた<初耳トレンディ>もチェック!
【TVer】
「日曜日の初耳学」公式YouTubeチャンネルでは、カリスマ飲食店プロデューサー・稲田さんの食の美学が詰まった<インタビュアー林修>を公開中!
【公式YouTubeチャンネル】
次回の「日曜日の初耳学」は12月5日(日)に放送する。
「日曜日の初耳学」はMBS/TBS系で毎週日曜よる10時放送。