
■伊集院静が語る"夏目漱石のすごさ"
林先生自身が熱望して実現したという、今回の対談。「大人の流儀」シリーズも熟読した林先生は、書籍から<身嗜(みだしな)みでまず必要なのは、体調だ><孤独が人を成長させる>など心に刺さった金言を挙げ、「本当にハッとするような、気づかないことがたくさん書かれていて、それが多くの人に響いているんだと思います。210万部ですから」としみじみ語った。
伊集院氏は「あっちでぶつかり、こっちでぶつかり、ちょっと涙したりこっちで倒れたり、そういう遠回しになる人生の方が豊か」だという。夏目漱石の青春時代を題材にした最新作「ミチクサ先生」にも、"ミチクサが多いほうが、人生は面白い!"というメッセージが込められている。
伊集院氏自身、幼い頃から親しんだ漱石への思いは特別で、「漱石の何がすごいかというと、今、若い女の子が本屋へ行って漱石の本を買うっていうところなんだよ。そして、本屋で売っているっていうことなんだよ」と、漱石を語る言葉にも力が入る。
■「小説家は、語りながら書いている」
「漱石の、時代を超えた魅力をどうお考えですか?」と尋ねた林先生。伊集院氏は「落語の語り口みたいなところがあって読みやすいからです」と即答。少年時代に寄席に通いつめて落語を聞いていたという漱石のエピソードを踏まえ、「『坊ちゃん』なんかはね、なんで10日くらいで書けたんだって、あの落語の語り口だね。小説家というのは、語りながら書いている。だから、ここでちょっと息を入れなきゃいけない時に、ポンと句点が打ってある」と分析した。
2020年に新聞の連載小説として「ミチクサ先生」を執筆中、くも膜下出血で倒れて一時は昏睡状態に陥った伊集院氏。その後、奇跡的に意識が回復し、連載を完結させた。そこまでして書き上げたこの作品には、「厳しい時代の今だからこそ、苦労をネガティブに捉えずあちこち道草して懸命に生きた夏目漱石の姿を知ってほしい」という思いが込められている。
見守っていたゲストの藤本美貴も感銘を受けた様子で、「道草をすることで学べることもある、と思うと...親として子供に最善を選ばせようとしてしまうんですけど、もう一回見直そうと思いましたね」と語った。
■伊集院静が語る"人付き合いに大事な2つのこと"
続いて、"人間関係に悩んでいる方へのアドバイス"を求めた林先生。伊集院氏は、父親から教わったこととして「人と付き合うのに一番大事なのは、その人との"距離感"。その人のエリアに必要以上に入り込まない。それからもう一つ。聞く力なんて言うけど、実は"聞く姿勢"なんだな」と指摘。相手と適度な距離をとり、相手の話をよく聞くことの大切さを語った。
そして、林先生が「時に、距離を詰めなきゃいけない時もありますよね」と踏み込むと、「ありますね。詰めた時は"小声"で。
最後に林先生が尋ねたのは、コロナ禍で苦しむ若者に贈る言葉。伊集院氏は「コロナっていうのは向かい風みたいなもの。だけど、道を選ぶなら向かい風になる道を選びなさい。苦労すれば、苦労をしている人たちが見えるから。苦労をするということがどういうことかわかるから」と語り、「人類は(天災を)乗り越えてきたんだ。君もできないわけがない」と力強いメッセージを送った。
珠玉の言葉が飛び出した伊集院氏との対談。林先生は感に堪えないといった様子で「本当に大人だなと。いろいろなお考えがあって、言葉にしたのはほんの一部で。でも、そういう思いをいちいち表に出さないのが大人の一つのやり方なんでしょうね」と振り返った。
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