川崎重工業から中国の関連会社に出向した男性の自死をめぐり、遺族が過重労働が原因だと訴え、川重側に損害賠償を求めていた裁判の控訴審で、川重側が一定の解決金を支払う内容で和解が成立しました。

遺族側は “海外出向のケースで、出向元の企業の安全配慮義務を明確に認めた判例はなく、海外出向者の安全を考える上で非常に大きな意味を持つ和解だ” と評価しています。

川重側が一定の解決金を支払う形で和解

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清島浩司さんは2002年に川崎重工業に入社。2013年4月から単身赴任で中国の関連会社に出向しましたが、3か月後の同年7月に自死しました(当時35歳)。

清島さんの死をめぐり、2016年に労働基準監督署は「業務起因性」を認め、労災と認定。

【画期的】出向先の中国で“過労自死” 川崎重工業に対する損賠訴訟で和解成立 川重側が一定の解決金支払い 「海外出向者の安全を考える上で非常に大きな意味持つ和解」と遺族側も評価
川崎重工業神戸本社


清島さんの遺族は、“トラブル対応に忙殺されるなど大量の業務を抱え込んでいたのに、川重側は人員を追加で派遣するなどの業務軽減措置を怠った。そうした対応がうつ病の発症につながった”として、2022年に川重を相手取り、計1億円あまりの賠償を求め、神戸地裁に提訴しました。

川重側は全面的に争う姿勢を示し、清島さんの死は事故死だったとも主張しましたが、神戸地裁は去年1月の判決で、その主張を退け、自死と断定。

一方で、“清島さんが過重な業務に従事していたとは認められない”として、遺族側の請求を棄却していました。

この判決を不服として、遺族側が控訴。控訴審では、“いわゆる二重雇用の状態の中で業務が過重となっていた。川重と出向先の相矛盾する命令に引き裂かれていた”と、改めて訴えていました。

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MBS


遺族側によると、大阪高裁の和解勧告に基づき、川重側が一定の解決金を支払うという内容で、4月16日(木)付けで和解が成立したということです(金額は非公表)。

遺族「海外で働く方の過労死は、十分に可視化されてこなかった」

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遺族側の記者会見(4月17日)
 

遺族の弁護団は、▽海外派遣労働者には労働基準法が原則的には適用されない ▽国内外問わず、出向労働者に対する安全配慮義務を一次的に負うのは出向先企業 と指摘したうえで、今回の和解について、“海外出向のケースで、出向元の企業の安全配慮義務を明確に認めた判例はなく、海外出向者の安全を考える上で非常に大きな意味を持つ画期的和解だ”と評価しています。

清島さんの遺族は、和解を受けて次のように話しました。

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MBS


清島浩司さんの妻・験馬綾子さん(4月17日の記者会見)
「海外派遣労働者は、国内勤務と比べて孤立しやすく、労務管理や健康管理が不十分になりやすい構造があります。その一方で、海外で働く方の過労死は、十分に可視化されてこなかった現実があります」
「本件では、労働基準法が十分に及ばない海外派遣労働者に対し、出向元企業が一定の金銭を支払うことで和解に至りました。海外労働における企業責任のあり方を社会に問うものだと考えています」
「どこで働いていても、その人の命は守られるべきです。海外に派遣された方が、厳しい環境の中で働いている現実についても、多くの方に知っていただきたいと思っています。この問題に、国境はありません

一方、川崎重工業は「裁判所の指揮の下、双方の主張を踏まえた協議の結果、和解いたしました」とコメントしています。

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