◆吉岡里帆&水上恒司W主演「九龍ジェネリックロマンス」
「恋は雨上がりのように」の眉月じゅん氏最新作にして人気漫画「九龍ジェネリックロマンス」(集英社/週刊ヤングジャンプ連載)がTVアニメ化に続き、実写映画化。ノスタルジー溢れる街・九龍を舞台に、過去の記憶がない鯨井令子(吉岡)と誰にも明かせない過去を持つ工藤発(水上)が恋をし、過去・現在・未来が交錯する中で秘密を解き明かしていくミステリー・ラブロマンス。吉岡が演じる令子は、自分とそっくりの容姿をした鯨井Bの正体に迫っていく。
◆吉岡里帆、令子・鯨井Bの演じ分けは「難しかった」
― 今作のお話を聞いた際の心境をお聞かせください。
吉岡:ミステリー要素と大人の恋愛が絡み合っている物語が面白く、令子も今までにないような不思議な役柄で、挑戦しがいのある作品だなと思いました。
― 原作は読みましたか?
吉岡:読みました。今は存在しない九龍城砦という世界で、しかもジェネリックとして作られた実在しない場所という設定がすごく秀逸で。撮影も香港にあった当時の “九龍城砦”の風景を再現するため、狭く雑多な路地裏の商店など、懐かしさを感じるような古い街並みを残す台湾で行うと伺い、これまでの映画とはまた違う質感の、美しい作品が生まれそうだと期待が高まりました。
令子・鯨井Bという二面性を持ち、自分は何者なのかと葛藤する女性が「本当の自分って何?」と探していくミステリーなストーリーは、読者に訴えかけるメッセージ性があると感じました。また、登場人物全員のキャラクターが立っていて、絵も可愛らしくて、眉月先生のキャラクター愛を感じます。原作はまだ続いているので、「これからどうなっていくんだろう」とワクワクしました。
― 今回、アニメ化と実写化のWメディア化も話題ですが、どのように受け止めていますか?
吉岡:アニメは、漫画を読んだときの面白さやキャラクターの魅力が忠実に表れていて、原作へのリスペクトを感じ、声優さん、アニメーターのみなさんが素晴らしいなと感動しました。
― 原作、アニメ、実写映画とそれぞれの良さがありつつ、一貫して多くの人の心を惹きつける魅力があります。その中で、撮影時に意識していたことがあれば教えてください。
吉岡:ものづくりをする上で細かいディテールにはこだわっていて、映画では特に、ビジュアル面や脚本など、それぞれの部署がアイディアに溢れていました。眉月先生の物語もオリジナリティがあり、人を惹きつける魅力があって。私も原作を読んだり台本を読んだりしながら、映画では何ができるのだろうと悩みながら撮影をしていました。シンプルですが、とことん突き詰めてキャラクターのことを考えて撮影に臨むことで、その思いの強さを観客の方にも受け取っていただけると思います。だから、突き詰めることを大切に、撮影を頑張りました。
― 令子と鯨井Bの演じ分けで気をつけたことをお聞かせください。
吉岡:見た目は一緒ですが全く違う人に見えなければいけないので、すごく難しかったです。鯨井Bは等身大の大人の自分で演じられるのですが、令子の方は、監督から、「記憶がない分、赤ちゃんみたいに新鮮に物事受け止められる人にしたい」とお話があり、かなり精神年齢を下げて、見た目は大人だけど幼さを感じるキャラクターを表現しました。
◆吉岡里帆、水上恒司に感じた逞しさ
― 水上さんとは今作で初共演ですが、お会いする前と共演した後で印象に変化はありましたか?
吉岡:水上くんは「中学聖日記」(TBS系/2018)の印象が強くて、繊細で線の細い美少年というイメージだったのですが、実際にお会いした水上さんは逞しくて熱くて、ギャップがありました。工藤の役作りで、鍛えて体を大きくして現場に来てくれていたり、実際には年齢差があるけれど劇中の年相応の2人に見えるような努力をたくさんしてくださっているのを感じて、素晴らしい方だなと思いました。
― 水上さんに、工藤のような逞しさや頼もしさを感じた瞬間はありましたか?
吉岡:腕が太いのでハグをするシーンは特に逞しさを感じました。また、年齢の少し離れた私の考えなどを分かろうと努力してくれていたところも、ある種逞しさや頼もしさなのかと思います。
― “九龍城砦”を再現するため全編台湾ロケを行ったとのことで、現地の空気やセットの作り込みが演じるうえでの助けになった部分もありましたか?
吉岡:現地のスタッフさんが協力してくださっているので、舞台美術にもローカルな魅力や日常で使い古しているような質感が出ていて感動しました。現地の美術チームの方は若い女性の方ばかりで、「上手ですね」というお話をしたらみんなでキャッキャしながら「嬉しいです」と言ってくださって、明るくて可愛くて魅力的でした。制作の方も、私たちが疲れないように、撮影が楽しく進めるように心遣いをたくさんしてくださり、素敵なチームでした。
― よく海外のロケだと温かいものが出ると言いますよね。
吉岡:そうですね、温かい食事が出てました(笑)!しかも、夏だったので冷たいものも出る。痒いところに手が届くような、サービス満点で本当にありがたかったです。劇中のレモンチキンはテイクを重ねて何回も何回も食べたのですが、ずっと食べられるぐらい美味しかったです。
◆吉岡里帆の“忘れたくない記憶”
― 今作に限らず、役作りの過程として吉岡さんが必ず行うことがあれば教えてください。
吉岡:歌や楽器など、特殊な技能が必要な役はそれを身につけるようにしたり、ハンディキャップを抱えている方の役だと、その方の生活を取材したりしています。また、具体的にどうしたらそのキャラクターになれるかを細かくリストアップして、その項目をクリアしていくことをしてから現場に入っています。
今回は漫画が原作なので漫画にヒントがたくさん詰まっていて、重要なシーンの令子の表情や眉月先生が描く女性の顔を何回も何回も見て、表情の研究をしました。また、「過去の記憶がないってどういうことなんだろう」というのを深掘りして考えて撮影に臨みました。
― 今作は“過去の記憶”が1つのキーワードになっていますが、吉岡さんご自身が忘れたくない思い出があればお聞かせください。
吉岡:忘れたくない思い出はたくさんありますが、原点回帰できる場所があるということが、この世界で長く続けていく上で大事だなと思っていて。経験値がどんどん増えていくごとに鮮度が落ちていってしまうような難しさがあるので、初めてお芝居を観て感動した瞬間のことは忘れたくありません。当時、地元の小劇場で演劇を見て心が動いたときに、何に心が動いたのかをブレずに持ち続けることがすごく大事だなと感じています。
― 貴重なお話をありがとうございました!
(modelpress編集部)
PHOTO:赤英路
◆吉岡里帆(よしおか・りほ/32)プロフィール
1993年1月15日生まれ、京都府出身。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015)に出演し注目を集める。
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