時田秀一(本誌ライター)

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美容医療が身近な存在になる一方で、利用者が感じる不安も増えてきている。価格や施術内容は比較しやすくなったが、「このクリニックは何を大切にしているのか」、「どんなビジョンを持って医療を提供しているのか」は、今なお見えにくい。
本稿では、前回に引き続き(<美容医療広告の先にある信頼>AND medical groupが大切にする、顧客との真の接点、<信頼される美容医療広告とは> AND medical groupが考える「誠実で透明な広告」との向き合い方)美容医療経営トップインタビューとしてAND medical groupの草野正臣代表に、ビジョンとミッションに込めた思いを聞く。美容医療を通じて、患者の生活や人生にどのような変化をもたらしたいのか。また、後発として参入した立場から、業界にどのような役割を果たそうとしているのか。「

(以下、インタビュー)
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インタビュアー 時田秀一(本誌ライター・以下、時田):「『美しくなる』は、人間の権利だ。」というフレーズは非常に印象的です。ブランディングとして、メニューや価格ではなく、こういったビジョンを前面に出す意図はなんでしょうか?

AND medical group・草野正臣代表(以下、草野氏):美容医療の業界全体を見ても、クリニックとしてここまで明確にビジョンやミッションを打ち出しているところは、実はあまり多くありません。やはり、大手も含めて、診療メニューや価格を前面に出すケースがほとんどです。だからこそ、私たちとしては、「何を提供しているか」以前に、「何を目指しているのか」を、できるだけ明確に伝えていきたいという思いがあります。

時田:CMや電車広告などでもよく、CMは目にしましたね。インパクトのあるフレーズだけに、反響はいかがでしたか?

草野氏:正直、反響はとても大きかったという印象です。「(美容医療の)イメージが変わった」といったものもありましたね。AND medical groupに興味を持っていただくきっかけになったと感じています。

時田:AND medical groupでは、「私たちは、一人ひとりの悩みに寄り添い、内面と外見の美しさを引き出すことで、すべての人がその権利を享受できる社会を実現します」という文言をグループのミッションとして掲げています。
こちらも非常に強いインパクトとメッセージ性がありますよね。

草野氏:私たちが目指しているのは、美容医療を、日本全国どこに住んでいても同じレベルで受けられる環境をつくることです。その上で、美容医療を受ける方はそれぞれ、さまざまなコンプレックスや悩みを抱えていると思いますが、少なくとも美容に関わる悩みについては、我々が解決に寄与できるような体制を整えていきたいと考えています。美容に関するコンプレックスが一つでもなくなるだけで、ご本人の生活やプライベート、仕事など、さまざまな面にプラスの影響が出てきます。そうした変化に、美容医療を通じてできる限り寄与していけたらいいな、という思いがあります。

<美容医療の「社会的信頼」を引き上げる存在へ>

時田:AND medical groupの「業界の中での役割」を、どのように位置づけていますか。

草野氏:私たちは業界においては後発の立場です。美容医療は比較的新しい業界ではありますが、その中でも大手になると四半世紀の歴史があり、業界のかたちが良くも悪くも固まりつつある状況だと思っています。そうした中で、後発として参入する以上、より良いものにアップデートし新しいカタチを提供していく。そこに私たちの役割があるのではないかと考えています。

時田:後発だからこそ、アップデートしていく立場である、と。

<AND medical group・草野正臣代表に聞く>美...の画像はこちら >>

草野氏:はい、それによって業界全体がさらにブラッシュアップされ、社会的な信用も含めて高まっていけばいいと考えています。
最近は美容医療業界そのものが注目され、ニュースになることも増えています。良い意味でも悪い意味でも、業界が大きくなり、一般化してきている証拠だと思います。だからこそ、その流れを止めるのではなく、持続的に成長させていく立場の一組織として、今後も啓蒙に努めていきたいです。

時田:前回までのお話からも感じたことですが、草野代表は経営トップとして利益追求だけでない理想、大事にしている追求先がある、という印象が強いです。グループとして目指す目的を設定する判断軸は何なのでしょうか?

草野氏:一番大きい判断軸は、「自分が患者様の立場だったらどう感じるか」です。患者様の目線で見て、良いか悪いか、という点です。当然、全ての判断がうまくいくわけではなく、間違えることもあります。ただ、仮に判断を誤ったとしても患者様たちの視点という軸に立ち返り、その視点で修正する。いかに早く修正してブラッシュアップしていけるか、そのサイクルをどれだけ速く回せるかに注力して取り組むように心がけています。

時田:その判断軸、経営方針で進められている現在、経営トップとしての手応えはどうですか?

草野氏:特定の診療メニューでは、かなりシェアが取れてきたという実感はあります。ただ一方で、同じことを繰り返しているだけでは、いずれ通用しなくなるという危機感は常に感じています。だからこそ、常に「新しいものをいかに早く取り入れるか」という意識を持ちながら取り組んでいます。


時田:経営判断を行う立場として、現場との距離感についてはどのように意識されていますか。

草野氏:患者様に直接向き合っているのは、現場の先生方や看護師、クリニックスタッフなど様々な役割の方たちです。だからこそ、常に対等な立場でコミュニケーションを取ることを意識していますし、彼らがいなければ事業自体が成り立たないんだ、ということを日頃から強く意識しています。

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(以上、インタビュー)

美容医療市場が急速に拡大し、一般化しつつある今日、美容医療の利用者が本当に知りたいのは、施術内容や価格だけではない。価値観や評価視点も日々変容している。「クリニックがどのような考え方や判断軸のもとで医療を提供しているのか。そして、そのクリニックに行くと自分はどのように変われるのか」という部分も、クリニック選びの基準にひとつになっているといえるだろう。

本稿でインタビューしたAND medical groupが、「『美しくなる』は、人間の権利だ。」という強いインパクトを持つビジョンをあえて全面に押し出す理由がは、美容医療を特別なものではなく、誰もが納得して選べる存在にしたいという草野代表の意思の表れであるという。

また、後発として業界に参入した立場であるからこそ、既存の体制やサービスを見直し、ブラッシュアップする攻めの立ち位置でいたいという姿勢は経営の判断軸としても印象的だ。美容医療が一般化した今こそ、どんな価値観のもとで医療が提供されているのかを見極めることが、これまで以上に重要になっている。

本誌では引き続き、美容医療の動向を取材し、利用者が納得して選択するための情報を発信する。
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