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NHKは公共放送でなく国営放送。根本背景はNHKの人事と予算を政府が握っているため。
放送法第三十一条は経営委員会委員について、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから」選ぶとしているが、内閣総理大臣が内閣に服従する者を経営委員に選出すればNHKは内閣の支配下に置かれることになる。他方、NHK予算案は総務大臣を通じて国会に提出され、国会の承認を受ける。NHKは人事も予算も政治権力の支配下に置かれる。したがって、NHKは政治権力に屈服する存在になる。例外として、内閣総理大臣がNHKの自主性、独立性を尊重する場合だけ、NHKは自主性、独立性を確保できる。
安倍内閣以降、NHKは完全に政治権力の支配下に置かれている。NHKの劣化が著しい。
直近の報道から三つの事例を挙げる。
第一は、ロシアがウクライナの穀物輸出を抑止する行動を強めていることについてロシアを非難する報道。
第二は、中国が日本からの海産物輸入に対する規制を厳格化していることについて中国を非難する報道。
第三は、国内での重大な水害災害に対する報道をおろそかにしたこと。
ウクライナで戦乱が続いている。戦乱が発生した背景がある。ロシアが領土的野心で一方的に軍事侵攻したものではない。2014年にウクライナで暴力による政権転覆があり、樹立された非合法政府がロシア系住民居住地域に対して重大な人権侵害と武力攻撃を展開した。これを契機にウクライナで内戦が勃発。その内戦を収束するためのミンスク合意が成立した。ミンスク合意は国連安保理で決議され、国際法の地位を獲得した。
ところが、ミンスク合意をウクライナ政府が一方的に破棄。
放送法第4条は、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に義務付けている。しかし、NHKはウクライナ=正義、ロシア=悪の図式でしか報道しない。これは放送法違反である。
日本は広島サミットで中国に対して敵意に満ちた首脳宣言をまとめた。首脳宣言では「東シナ海や南シナ海の状況に深刻な懸念を表明し、力や威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する」と表現した。
7月12日、九州北部が重大な水害に見舞われた。通常であればNHKは特別放送体制を敷くところだったが通常放送を維持した。岸田首相の外遊が予定されていたためと推察される。NHKが御用放送であることを全国民が踏まえておく必要がある。
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