論文に捏造疑惑が浮上し、実在そのものが疑問視されている万能細胞「STAP細胞」問題。疑惑の渦中にある研究ユニットリーダーの小保方晴子さん(30)は精神的に不安定になり、14日に開かれた理化学研究所の釈明会見に出席できず、研究はおろか聞き取り調査(ヒアリング)すらまともにできない状況。
業界の寵児となった「リケジョ」が、疑惑の底なし沼にハマってしまった。
今年1月末、小保方さんらのチームが、マウスの血液中の細胞を弱酸性の液に漬けると、どんな細胞にもなれるSTAP細胞に変化すると科学誌「ネイチャー」に発表。世紀の発見にメディアは大騒ぎし、可愛いもの好きで割ぽう着姿で研究作業する小保方さんのキャラクターも大いに注目を集めた。ところが、程なくしてネット上の指摘などにより、論文に不自然な画像や記述があることが分かった。
特に問題となったのは、様々な細胞に変化できるSTAP細胞の「万能性」を示す根拠になった論文中の画像が、小保方さんが3年前に書いた別テーマの博士論文のものと同じだったこと。
捏造疑惑を発端に小保方さんの過去にも検証のメスが入った。3年前に早稲田大学に提出した博士論文に“コピペ疑惑”が浮上し、約100ページのうち冒頭の約20ページが米研究所のサイトに掲載された文章と酷似していることが判明。博士論文で使われた実験結果を示す画像も、バイオ系企業のサイトに掲載された画像をコピーしたものだと指摘された。
論文のコピペ疑惑について小保方さんは「やってはいけないとの認識がなかった」と謝罪した。
当初は「リケジョの星」と持ちあげていたメディアだが、状況が変わると“手のひら返し”で一斉にバッシングを開始し、小保方さんが集中砲火を浴びている。身から出たサビともいえるが、これに反旗を翻してジェンダーの観点から小保方さん支持を表明する著名人も現れた。
小保方さんと同じ「リケジョ」で動物行動学研究家の竹内久美子さんは、東京スポーツのインタビューで「女性の研究者が論文を発表して注目を集めると、男性研究者からの嫉妬や嫌がらせがあるというのはよくある」と指摘。「その信憑性はともかくとして、発表後に重箱の隅をつつくような“あら探し”が始まるであろうことは、最初から分かっていましたね」と語っている。
また、タレントのデヴィ夫人は自身のTwitterで以下のように擁護した。
「小保方さん、頑張ってください!日本の男の醜いジェラシーに負けないで!どの分野でもそうですが、成功者へのジェラシーはつきものです。ましてや貴女は若くて美しい。調査の中間報告も、貴女が正しいと言っているようなものです。日本のマスコミは騒ぎすぎです。日本の恥です」
竹内さんもデヴィ夫人も同じように、騒動の根幹に“男の嫉妬”があると見ているようだ。
確かに研究はチーム制で論文の共著者は全員で8人もいるのに、小保方さんだけが執拗に叩かれるのは疑問を感じるところだ。論文作成を実質的にリードしていたのは、小保方さんが所属する理研発生・再生科学総合研究センターの副センター長・笹井芳樹氏(52)だったという情報もある。なぜ、小保方さんだけに批判が集中しているのか。
この疑問については、論文発表に際した研究チームの過剰な“演出”がアダになったとの指摘がある。東京新聞によると、笹井氏は小保方さんを大舞台に押し上げるため、理研の広報チームと協力してメディア向けの演出を計画。笹井氏が「割ぽう着」のアイデアを発案し、この演出策に乗った小保方氏も会見の1カ月前からピンクや黄色の実験室を準備したという。
このイメージ戦略は、理研側が「予想を上回った」というほど大成功を収めた。だが、祭り上げられた小保方さんがあまりにも目立ってしまい、ネットを中心に疑惑の追及を誘うことになってしまった。これを「嫉妬」というならばその通りかもしれないが、研究者だろうと芸能人だろうとスポーツ選手だろうと目立っている人物のウラを暴きたくなるのは人間のサガ。小保方さんが女性だから嫉妬されているわけではなく、これだけ脚光を浴びれば性別と関係なく疑惑追及は起きただろう。
もし過度のイメージ戦略がなければ、ここまでの騒動にはならなかったかもしれない。
「再生医学の分野で第一人者といわれていた笹井氏ですが、京都大学の山中伸弥教授(51)がiPS細胞の開発でノーベル賞を受賞すると、世間や業界の関心は山中教授に移ってしまった。業界での立場も山中教授の方が完全に上になり、笹井氏は内心面白くなかったようです。山中教授への対抗心が強くなった笹井氏は、小保方さんを使った演出で大体的に世に打って出ようとした。また、理研の中でも研究所同士の競争があり、目立った成果を上げないと予算が削られるという事情もあった。しかし、功を焦ったのか研究のツメが甘く、それが今回の騒動につながってしまったようです」(業界関係者)
ジェンダー論争は的外れだったといえるが、騒動の背景には“男の嫉妬”が確かにあったようだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)