ボランティア活動は無償で行うものだと考えていませんか?
実はボランティア活動には有償のものもあります。厚生労働省の社会・援護局では、ボランティアについて明確な定義を行うことは難しいものの、一般的には「自発的な意志に基づき他人や社会に貢献する行為」を指すとしています。
「自主性(主体性)」「社会性(連帯性)」「無償性(無給性)」がボランティアの性質とされていますが、実費や交通費、さらにはそれ以上の金銭を得る「有償ボランティア」と呼ぶ例もあります。
今回はボランティア活動と高齢者にもたらす影響についてご紹介いたします。
介護予防を目的に創設されたボランティアポイント制度
現在、政府は介護予防に資する取り組みへの参加やボランティア等へのポイント付与事業を行っています。
この事業はそもそも介護保険制度を活用したボランティアポイント制度として開始しました。
きっかけは2014年の介護保険法改正です。この改正で、地域支援事業における介護予防事業の中で事業を再編し、通いの場※1の取り組みを中心とした一般介護予防事業が創設されました。
※1高齢者をはじめ地域住民が、他者とのつながりの 中で主体的に取り組む、介護予防やフレイル予防に資する月1回以上の多様な活動の場・機会のこと
同時に、住民主体の通いの場づくりの担い手の確保や参加を推進する目的で、介護予防に資する取り組みへの参加やボランティアへのポイント付与を行う、ボランティアポイント制度が開始されたのです。
2019年度実施分では、介護予防に資する取組への参加やボランティア等へのポイント付与を実施する市区町村は全体の34.1%(593市町村)で、まだまだ普及しているとは言えない状況です。
ボランティアポイント制度の具体例
では、実際にどのような制度になっているのか私が勤める町田市の事例をご紹介いたします。
町田市では「いきいきポイント制度」という名称で、取り組みが行われています。
町田市のいきいきポイント制度とは、市内在住の65歳以上の市民が、町田市内の介護保険施設等でボランティア活動を行った場合に「ポイント」を集めることができる仕組み。その集めたポイントは次年度に商品券などへ交換できるようになっています。
その目的は、65歳以上の方が、同じ地域に住んでいる高齢者をボランティア活動に参加し支えることで、ボランティア活動をする方の健康も維持することにあります。また、当然ながら地域貢献にもつながります。
町田市のいきいきポイント制度を利用するには、事前に登録申請を行い、開催される研修を受講します。そして研修終了後に、いきいきポイント手帳の交付を受け、ご自身の活動希望に沿った受入れを行う施設を施設一覧から探します。すでに受け入れ施設で活動している方はそちらで継続できます。
各受け入れ施設によって活動内容も異なるため、オリエンテーションを受けることになります。実際に受入れ施設で活動するかどうかは施設と相談して決定しています。
こうして決定した施設にてボランティア活動を行い、スタンプを押してもらい、ポイントに変換します。
具体的には下記のようなボランティア活動を行っています。
介護保険施設や保育園などでの活動
- 施設にある花壇の手入れ活動
- 昔遊び(竹馬やヨーヨーなど)や童話の伝承活動
- ご自身の趣味を生かした講師(塗り絵や刺し子、折り紙など)
- 囲碁や将棋、麻雀などのお相手
- 散歩の付き添いや見守り
- 施設をご利用される方との歓談
- 施設内での移動介助
- 保育園などの園児の遊びや見守り活動
町田市や町田市の高齢者支援センターから依頼する介護予防サポーター活動
- 介護予防の普及や啓発活動のお手伝い
- 介護予防教室等開催のお手伝い
- 体力測定測定会の測定スタッフ
- 市や高齢者支援センター主催で行われる事業説明会などのお手伝い
そのほか、ふれあいサロンの創設や運営活動、老人クラブなどで行われる社会奉仕活動も含まれます。
活動を終えた翌年の6月1日以降、集めたスタンプをポイントに還元し、商品券などと交換できます。1時間1スタンプとして、一日上限2スタンプまでとし、スタンプ数は年間最大50個(5,000円)までが対象となっています。
いきいきポイント制度ポイント還元表 前年度のスタンプ数 付与するいきいきポイント
(ポイント還元の額) 1~9個 500ポイント(500円分) 10~19個 1000ポイント(1,000円分) 20~29個 2000ポイント(2,000円分) 30~39個 3000ポイント(3,000円分) 40~49個 4000ポイント(4,000円分) 50個以上 5000ポイント(5,000円分)
ほかに活動を継続してもらう支援の1つとして、いきいきポイント制度に登録されている方には年に2回、新しい登録施設の紹介などが掲載されている「いきP通信」という冊子が郵送されています。
また、年に1回、活動登録者向けのスキルアップ講習も開催しており、活動継続の支援も行っています。
地域でのつながりが強まって孤立を防ぐ
この制度の中で重要なのは、活動を通じて介護予防に向けて意識を高く持つことと、社会とのつながりを持ってもらうことにあります。
介護サポーターになる方も
ボランティアポイント制度は、地域における介護予防についての取り組みでもありますが、元気な方は「まだ大丈夫」となかなか介護予防に意識が向きません。
そんな方でも介護予防のことを知る入口の1つとして、ボランティアポイント制度があります。この制度を活用した方の中には、介護予防サポーター※2となり、さらなる活躍をされている方もいらっしゃいます。
※2市区町村で行われる養成講座を修了し、介護予防を地域に広める役割を担う方

最初はご自身の介護予防から始まり、最終的には地域内で介護予防を推進する立場になるという好循環も生まれるのです。
介護や福祉は、必要にならないと利用しないサービスでもあります。
ただし、いざ必要になってからでは、時間的な余裕がなかったり、サービスそのものを知らないために社会的に孤立してしまうケースもあります。
一方、地域でのボランティア活動を通じて早い段階で地域の福祉団体等とつながっておくと、いざというときの準備がいち早くできます。
また、地域内での結びつきが強化されるので、顔を見せなかったりすると、周囲の人が「どうしたのかな」と気遣いをし、お互いの支え合い(共助)は推進されます。
もしご興味があれば、各区市町村の介護保険担当窓口や各地域の包括支援センターなどにお気軽にご相談してみてください。
皆さんの最初の一歩が地域での支え合いにつながると思います。