皆さんは「生前整理」について考えたことがありますか?
似たような言葉に「終活」や「人生会議」があり、それぞれ若干の違いがあります。
今回は生前整理に焦点を当てて、いつどうやって行うと良いのかについてポイントをご紹介いたします。
「生前整理」「終活」「人生会議」の違いとは?
生前整理とは
身の回りの品や財産の整理を、元気で時間や体力に余裕があるうちに行うことを指します。
残したいものを明らかにして、その希望を伝えるのも大事なことですが、長い人生の中でさまざまな品が溜まっていくのも事実です。
不要なものを選別し、廃棄やリサイクルなどで処分することで、相続の際の遺族の負担やトラブルを減らすことができます。認知症などで意思決定ができなくなった場合や、亡くなった後に遺された家族や親族が、処分に困るものをあらかじめ整理しておくことです。
「断捨離」にも近い考えですが「もの」を捨てたり、誰かに譲ったりして「減らすこと」が大きな目的となります。現在処分できなかったものについて、どれをどのように誰が処分するか検討しておくことも生前整理の考えに当てはまると思います。
生前整理はお持ちの財産(家や土地、自身でしか価値がつけられないもの)をどうしていくかを考えることがメインになります。
終活とは
「人生の終わりについて考える活動」を指しており、具体的な活動内容は人によって大きく異なります。
主に、遺産相続、遺品整理の手続きに関することや、自分の人生観や半生を考え、「終活ノート」などにまとめていきます。
生前整理と重複する部分もありますが、身の回りのものを整理すること、医療や介護への希望、葬儀の規模や方法など、生前整理よりも広範囲が含まれます。
人生会議とは
日本では「アドバンス・ケア・プランニング」とも呼ばれており、自分自身や大切な人が自己決定できないときにどうすべきかを考え、どのような医療やケアを望んでいるかなどを、家族や大切な人たちと話し合うことを指します。
自分自身の希望や価値観は、望む生活や医療・ケアを受けるためにとても重要な役割を果たします。
終活と重複する部分がありますが、終活や生前整理は人生の後半(いわゆる高齢者)になってから考えることが多い一方で、人生会議は不慮の事故や怪我・病気なども含めれているので、すべての人が対象になります。
このように生前整理と終活・人生会議は各々がまったく独立しているわけではなく、対象や考え方が重複する部分も少なくありません。
生前整理が必要なわけ
生前整理を考えるうえで、「誰のために必要なのか」という視点が大切になると思います。
以前、ある女性が在宅で亡くなられたケースがありました。その方は一軒家で一人暮らしをしており、子どもはそれぞれ独立して遠方にお住まいでした。
ご本人はまだ元気でお過ごしでしたので、特にお子さんもお盆や暮れに顔を見せる程度で、密接な関係ではありませんでした。
そんな中、急なご病気で救急搬送され病院で亡くなりましたが、その後に膨大な処理が待っていました。
同居しているわけではないので、公的な保険証類、現金や通帳・印鑑などがどこにあるかわからなかったのです。財布や家中の引き出しなど、必要なものを探していかれたそうです。
また、葬儀を済ませた後には、家にある「もの」の処分が待ち受けていました。しかし、亡くなられた本人が何を大切に思っていたのか誰も知らなかったため、本当にどこから手を付けていいかわからない状況だったそうです。
最終的には、不用品などの処分をしてくれる事業者を調べ、処分を依頼されたそうです。
その中でも、重要と思われる書類や貴金属類が新たに発見されたりとご家族には頻繁に連絡があり、また費用も多額にかかり、苦労されたと言います。
元気なうちから生前整理を行いながら、家にあるものを少しずつでも処分したり、今後どうしたいかの意思表示ができていたら、遺される家族の負担は軽減されていたのかもしれません。
身寄りのない方などその方の持っていた財産やものを誰の権限で処分するのかなどの問題は限りなく多いと考えられます。
生前整理の活用を考えてみる
では、どのタイミングで生前整理を始めたらいいのでしょうか。
独立行政法人国民生活センターでは、どんなタイミングで開始するかなど、「生前整理を開始するときの5つの力」としてポイントをまとめています。
上記の力があるうちが一番のタイミングだそうです。切羽詰まった状態だと、冷静な判断ができなくなることがあります。
また、生前整理を行ううえで大切なのは、取りかかる順番です。
まずは「情報」の整理を行うことが推奨されています。
負担感が少なくまた気軽に始められるところで、家の中にある写真や思い出の品々の整理から始めてみてください。
特に写真は、生前整理の中でも片付け方がわからないものナンバーワンだそうで、残念ながら、多くの写真が亡くなった後に廃棄されることが多いようです。
写真もそうですが、使用していないものも持ち主にしか価値はわかりません。その大切さや価値をしっかり伝えられる間に整理したほうが良いと思います。
その後、不動産も含めた「財産」について整理し、そのことを自身の家族や、大切な方と家族と共有してください。
注意したいポイント
生前整理で注意したいのが悪徳業者です。
生前整理や遺品整理についてのトラブルが増加しており、独立行政法人国民生活センターも注意喚起を促しています。
その一例をご紹介いたします。
インターネットで検索して見つけた生前整理事業者に来てもらい、見積もりを出してもらうことにした。
事業者から、「今日決めてもらったら安くなる」「早く決めれば早く始められる」などと言われ、その場で高額の契約をしてしてしまい、手持ちから前払い金を支払ったが「週明けから準備を始める」と言っていたのに、その後、なかなか事業者が作業を始めてくれなかった。
ほかにも「解約を申し出たら高額なキャンセル料を請求された」「作業時に予定外の料金を請求され、最終的に見積金額の2倍の費用を請求された」といったトラブルも挙げられています。このような被害を防ぐためにも、次のようなことにご注意ください。
大切な思い出は、誰かに伝えない限り、なかなか他の人に理解してもらえません。
遺されるかもしれない家族や親族のためにも、一度生前整理について検討してみてはいかがでしょうか。