「認知症の人と家族の会」における活動の1つに電話相談があります。会の大阪府支部世話人である私は、月に2回この相談員をしています。
今回は電話相談に寄せられる代表的な悩みをいくつか紹介するとともに、電話で相談するメリットや特徴について私が思うことをお話します。
認知症の対応については家族の話だけでは難しい
相談の多いお悩みは「認知症の症状について、どう理解し対応すれば良いか」ということです。
家族が困られていることは十分に理解できるのですが、私自身いつも返答に困ってしまいます。
というのも、この手の相談は、電話相談に限ったことではないのですが、家族の一方的な話だけで判断をしなければならないからです。
認知症の人が引き起こす症状は、認知症の人だけに原因があるとは限りません。もちろん認知症を理由に起きている症状もありますが、介護する側(この場合は家族)の対応に問題があって引き起こされている症状もあるのです。
しかし、それに気がつかないまま、家族の話だけを一方的に聞いて悩みを解決することは限界があると思っています。
施設やケアマネージャーへの不満は相手の実情を知ることが大切
悩みを解決してほしいというより、話を聴いてほしい方も一定数いらっしゃいます。その相談内容で多いのが、施設やケアマネージャーに対する愚痴や不満です。
「どうしてこんな対応をされているのかわからない」という話になります。私は肯定も否定もせずに聴くことが中心になりますが、それに加えて話をすることがあります。
お話するのは、長く介護施設で働いてきた私の経験談や知り合いのケアマネージャーから聞いたこと。介護現場の話です。
つまり、良くないことかもしれませんが愚痴や不満の対象となる相手の実情を知ってもらうようにしています。
ただ、それは決してこんな状況だから仕方ないと思ってもらうためではありません。愚痴や不満を受け入れることは第一に優先しますが、純粋に介護現場の実情も知っておいてもらいたいためです。
解決できないような悩みでも話を聴いてもらおう
最後に挙げるのが入居のタイミングについてです。この悩みについては、これまで書いてきた悩みに対する回答とは違って明確な答えを出すようにしています。
まずはタイミングの前に、現在入居を考えている施設について、事前に調べてよく知っておいてほしいとお話します。
入居するという気持ちが先行してしまっているため、後からこんな施設とは思わなかったと後悔する人を何人も見てきたからです。
そのうえで、ご自身の体の状態だけでなく、心の状況をみて限界に達したときが入居のタイミングだと回答しています。そうなったときに慌てないためにも、事前に施設を探したり実際に見学するようお伝えしています。

では、電話で相談するメリットはどこにあるのでしょうか。私は顔が見えないことだと思います。相談する相手の顔が見えないことで緊張が少しでも緩和されたり、言いにくいことが言えたりするものです。
つまり、思っていることをより素直に話すことができるというのが電話相談の特徴と言えるのかもしれません。
悩みごとは決して一人で抱え込んではいけません。たとえそれが解決しないようなことであったとしても、話を聴いてもらうだけで気持ちが楽になることも十分あるのです。
もし悩み事がありましたら、お気軽に電話相談をご利用いただければと思います。