救急搬送は、命に危険が及ぶ可能性がある方をすぐに医療機関につなぐという目的があります。
しかし、なかには救急車をタクシー代わりに利用してしまったり、逆に救急搬送を拒否される方もいます。
家族としては判断に迷うこともあるかと思います。本記事では救急搬送を依頼するタイミングやポイントを解説します。
すぐに救急搬送が必要な事例
地域包括支援センターでは年間を通して救急搬送を要請する機会が数多く発生します。
私たちは以下のような状況のとき、必ず救急車を呼んでいます。
もちろん、必要性が低いにもかかわらず救急車を呼んでしまい、本来必要な方が使えないといった事態は最大限避けなければなりませんが、状況によっては素人が手を出すことでより症状が悪化することも考えられるからです。
例えば、骨折などによって痛みが激しい方を運んで、より症状を悪化させてしまったり、体調が悪く動けない方や、体重が重く思うように持ち上げられない方を2階から転落させてしまうような状況は避けなければなりません。
こういったときの救急隊員は専用の用具を使用し、最大限ダメージなく痛みが最小限になるよう搬送してくれます。
また、意識がない状況や呼吸状態が悪い際などについては一刻も早く医療ににつなげる必要がありますから、迷わず救急搬送を要請する必要があります。自宅に居ても良くなる可能性は極めて低いからです。
救急車を呼ぶべきか迷ったときの相談窓口がある
しかし、本人が救急搬送を拒否するケースもたびたび発生します。
救急隊員だけでなく、医師ですら本人に治療の意志がないのに治療をするわけにはいきません。
そんなときは近しい関係にある人物やケアマネージャーが必死に説得することになります。
こういった事態を回避し、スムーズな救急搬送が叶うよう、日ごろから緊急時(体調不良時)にどんな対応を望むのかを本人とよく話し合っておく必要もあるでしょう。
また、夜間や休日に救急車を呼ぶべきか判断に迷った経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか?
そんなときは救急安心センター事業(♯7119)に連絡することをお勧めします。
急なケガや病気をしたとき、救急車を呼んだほうがいいか、今すぐに病院に行ったほうがいいかなど、判断に迷うことがあると思います。
そんなとき、救急安心センター事業は専門家からアドバイスを受けることができる窓口なのです。
救急安心センター事業に寄せられた相談は、電話口で医師、看護師、相談員がお話をうかがい、病気やケガの症状を把握して、救急車を呼んだほうがいいか、急いで病院を受診したほうがいいか、受診できる医療機関はどこかなどを案内します。
♯7119に相談したほうが良い例- 症状が軽そうだが、救急車を呼んでいいのか
- 具合が悪いが、自分で病院に向かったほうがいいのか
- 手遅れになるかもしれず心配
- 近所の目が気になるため、救急車を呼びたくない
相談内容から緊急性が高いと判断された場合は、迅速な救急出動につなぎ、緊急性が高くないと判断された場合は受診可能な医療機関や受診のタイミングについてアドバイスを行います。
地域包括支援センターでの取り組み
私が勤める地域包括支援センターでは、2023年6月に所轄の消防本部と連携し、ケアマネージャーや障がい者相談員に向けて研修を行いました。
その中で、地域には3台の救急車しかなく、場合によっては他市の救急搬送の支援に充てられてしまうことがわかりました。
また、救急隊員とのスムーズな連携のために「傷病者情報提供書」という共通書式を定めました。この書式を救急搬送時に救急隊員に提示することで、よりスムーズな救急搬送が叶うことを目的としています。
救急隊員と福祉事業者の研修は今後も継続して実施し、それぞれの立場を理解することで、救急搬送を必要とする方に不利益が生じないよう検討を続けていくことになっています。
救急搬送が本来の目的を達成できるよう、利用者側もさまざまな手段があることを知っておくと良いかもしれませんね。
