老人ホームでサッカーチームを応援する姿が話題に

老人ホームで応援していたチームがJリーグ初優勝

2023年シーズンのサッカーJ1リーグは、「ヴィッセル神戸」が初優勝しました、このチームを入居者みんなで熱心に応援していた兵庫県にある老人ホームに、現在注目が集まっています。

この老人ホームでは、レクリエーション・イベントの中に「推し活」を取り入れています。推し活とは、スポーツチームやアイドルなどに好意を持ち、熱心に応援する活動のことです。

地元を同じくするサッカーチームを応援することが、入居者の楽しみ・生活の一部になっているわけです。

老人ホームで「推し活」⁉注目度を高めている新たなレクリエーシ...の画像はこちら >>

孫くらいの年齢の「推し」の選手を見つけて、応援グッズを作ったり、SNSで応援のメッセージを送ったりする入居者もいるとのこと。入居者に選手からの返事がきたことが、サポーターの間で話題になったと言います。

実は現在、こうした推し活が老人ホームで行う入居者向けの取り組みとして、全国各地の施設で取り入れられつつあります。

老人ホームで地元サッカーチームを応援する「Beサポ!」の取り組み

老人ホームを挙げて地元のサッカーチームを応援する、との取り組みには、仕掛け人がいます。

健康食品や化粧品の製造をするサントリーウエルネス株式会社が、2020年から「Be supporters!(Beサポ!)」プロジェクトを開始。これは、老人ホームで生活する人に、地元サッカーチームを「支える」ことで心と身体を元気にしよう、とする取り組みで、2020年からスタートしています。

このプロジェクトへの参加に、全国各地の老人ホームが手を挙げました。これまで約160施設、延べ6,000人が参加しているとのこと。老人ホームにおけるレクリエーション・イベントとして、徐々に定着しつつあります。

ヴィッセル神戸を応援していた老人ホームでは、試合当日には入居者が中継するテレビの前にユニフォームを着て、タオルを首に巻いて勢ぞろいしているそうです。共有スペースの壁には大きなチームの応援旗が貼り付けられ、選手の顔写真も提示されています。

試合が開始されると、共有スペースに設置された大型テレビの前に入居者が集まり、みんなで声を出したり、手を振ったりして元気に応援。

チームが勝ったときは、入居者とスタッフが一緒になって大喜びします。

老人ホームでアイドルを応援する推し活も

アイドルが来る日は、入居者全員が大盛り上がり

推し活の対象となるのはサッカーチームだけではありません。高齢者に人気のアイドルも、「推し」の対象となっています。

近年、老人ホームの高齢者に人気の「アイドル」も登場しています。「高齢者施設のアイドル」「懐メロ王子」の異名を持ち、各地の老人ホームでコンサートを実施する歌手や、セーラー服姿で老人ホームをめぐり、歌を披露する90代後半の方などもいて、行く先々において大人気とのことです。

高齢世代はアイドルを応援する文化や慣例がないかというと、実はそうでもないと考えられます。というのも、日本においてアイドルが誕生し始めたのは1970年代頃から。

現在70代、80代の方も、若かりし頃にアイドルを応援したり、コンサートに行ったりする経験を持つ人はいるわけです。

こうしたアイドルへの推し活は、若い頃を回想する、懐かしく思う、といった側面もあるかもしれません。

「推し」がいるシニア世代は47.9%との調査結果も

推し活相手となる「推し」がいるシニア世代は近年増えています。

株式会社ハルメクホールディングスがシニア女性を対象に行ったアンケート調査によると(50~81歳の女性を対象、2022年7~12月実施)、現在「推し」がいるシニア女性は47.9%。これは前年も行われた同調査より12.7ポイントもアップしています。

「推し」がいないと回答した人のうちでも、「過去いた」が21.5%、「今までいなかったが興味はある」との回答が39.5%に上っていました。シニアの女性に限ってのデータですが、機会さえあれば、推し活に違和感なく取り組める高齢世代は多いわけです。

スポーツチームやアイドルなどの「推し」を応援することは、若い人の趣味とも思われがちです。しかし実際には、推し活は高齢世代の一般的な趣味活動として認知されつつあると言えます。

推し活によるメリットとは・・・介護職へのプラスの効果も

シニア世代が推し活によって得られる効果は大きい

シニア世代が推し活をすることには以下のメリットが考えられます。

  • ストレス解消・・・脳からエンドルフィン、ドーパミンといった幸せホルモンが分泌。ストレス解消、リラックス効果が得られます。
  • 生きがい創出・・・推し活によって生きがいを見つけることで、うつ病・認知症予防にもつながります。
  • コミュニケーション活発化・・・同じ推しを持つ人との交流が活発に。
    孤独・孤立を解消できます。
  • 幸福度上昇・・・先の株式会社ハルメクホールディングスの調査では、幸福度(10点満点)を尋ねる調査も実施。それによると、「「推し」あり」と回答した人の幸福度の平均は8.05。「いない」と回答した人は7.81。「推し」がいる方が、幸福度が高まる結果となっています。

老人ホームでの導入で、スタッフも元気に

老人ホームで推し活を進めることは、働く介護職にとってもメリットがあります。

レクリエーション・イベントに推し活を導入している施設では、スポーツチームやアイドルを応援することが新たな生きがい・趣味となり、入居者が普段から気持ちが明るく前向きになりやすいです。

こうした入居者の変化が、ホームで勤務する介護職にも良い効果があります。先述の「Be supporters!(Beサポ!)」により推し活を進めている老人ホームでは、入居者が良い状態になることで、スタッフのモチベーションも上昇。推しに関する共通の話題でスタッフと入居者の会話数も増加したそうです。

チームを応援するときは、入居者だけでなくスタッフも一緒になって声を出したり、体を動かしたりします。それ自体とても楽しいので、スタッフにとってもストレス解消、人によっては趣味や生きがいの発見になるのではないでしょうか。

老人ホームで「推し活」⁉注目度を高めている新たなレクリエーションのあり方
画像提供:adobe stock

実際、「Be supporters!(Beサポ!)」に参加した施設では、精神的な理由で休職していたスタッフが、復帰して元気になったケースもあるそうです。「推し活」は入居者に限らず、スタッフを含めて施設全体を明るく元気にする取り組みと言えます。

今回は、近年注目を集めている老人ホームにおける推し活について考えてきました。若い人の趣味と思われがちな推し活ですが、シニア世代も十分楽しめます。また、スタッフの側も元気に盛り上がることができ、特に若い世代の職員は、こうしたお祭りのような楽しさがあると、仕事へのモチベーションも高まりそうですね。