労働組合とは?目的・種類や作り方についてわかりやすく解説の画像はこちら >>


労働組合とは、労働条件の維持や改善を図るために労働者が団結してつくる団体のことです。労働者であれば、誰にでも加入する権利が与えられています。



健康で快適に働くためには、職場の労働条件が整っていることが大切です。労働組合がどのような組織なのかを把握しておけば、労働条件についても理解しやすくなるでしょう。

本記事では、労働組合とはどのような組織かを説明した上で、加入するメリットや注意点についても詳しく解説します。加入すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

労働組合とは

労働組合とは、労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体です。労働組合に加入している労働者のことを労働組合員(組合員)と呼びます。

厚生労働省によると、2024年6月末における労働組合数は23,000組合で、組合員数は約991万人です。1994年をピークに、組合員の数は減少傾向にあります。

ここから、労働組合の目的や役割、加入方法などについて押さえておきましょう。

労働組合の目的

労働組合を結成する主な目的として、労働条件の維持・改善や労働者の経済的地位の向上を目指して会社側と交渉することが挙げられます。

一般的に、労働者は賃金に生活を依存しているため、個人だと弱い立場に置かれやすいです。また、会社と直接労働条件について交渉することも簡単ではありません。

そこで、労働者が団結して会社側と対等な交渉を図るために、労働組合が存在します。

労働組合の役割・活動内容

労働組合の主な役割や活動内容は、以下の通りです。

・賃上げを要求する
・労働者に対する不当な解雇の撤回を要求する
・職場環境の改善を申し立てる
・労働条件の維持や改善について提言する
・労働者の未払い残業代を請求する

なお、会社との交渉がうまくいかない場合には、法律の範囲内で集会を開いたりデモを実施したりすることがあります。



労働組合の種類

労働組合の種類は、主に以下の通りです。

・企業別組合(単位組合)
・合同労働組合(合同労組、ユニオン)
・職業別組合・産業別組合
・全国中央組織(ナショナルセンター)
・国際労働組合総連合(ITUC)

基本的に、労働者が加入するのは、企業別組合か合同労働組合です。企業別組合は同じ会社の労働者が集まる組合、合同労働組合は様々な会社の労働者で構成された組合を指します。

職業別組合・産業別組合は、職業別もしくは産業別に企業別組合をまとめる組織です。また、全国中央組織は、合同労働組合や職業別組合・産業別組合をまとめています。

なお、国際労働組合総連合は、各国の全国中央組織で構成される国際組織のことです。

労働組合の作り方・加入方法

一般的に、労働組合を作る(結成する)際の流れは、以下の通りです。

1. 組合員を勧誘する(労働組合には2人以上の労働者が必要)
2. 名称・所在地・組合員の権利などを盛り込んだ規約を作成する
3. 決起集会(結成大会)を開き、役員選挙を実施したり、規約案の承認を受けたりする

結成にあたって、役所への届出や会社からの承認は必要ありません。

また、自分が加入したい場合は、まず社内で結成されている労働組合に問い合わせます。勤め先に労働組合が存在しない場合は、インターネットなどで居住地周辺にある合同労働組合を調べましょう。

労働者・労働組合に関する権利

日本国憲法や労働三法(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法)には、労働者や労働組合を守る規定があります。例えば、日本国憲法第28条の条文(勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する)は、労働者に関する労働三権について定めた規定です。

労働三権とは、以下の権利を指します。

・団結権
・団体交渉権
・団体行動権

それぞれの定義について、押さえておきましょう。

団結権

団結権とは、労働組合を結成できる権利のことです。団結権の具体的な内容として、以下が挙げられます。



・労働者が自由に労働組合を結成する権利
・労働者自身で、労働組合への加入や労働組合からの脱退を決める権利
・組合活動について、法的な保護を受ける権利
・会社からの介入を受けずに組合を運営する権利

団結権により、労働者は雇用する側との対等な交渉を進めやすくなります。

団体交渉権

団体交渉権とは、労働者がまとまって会社と交渉する権利のことです。具体的な内容として、主に以下のような権利が挙げられます。

・労働条件について、会社側と対等な交渉を進める権利(会社側は正当な理由なしに交渉を拒否できない)
・会社との約束を文書などで交わす権利

なお、労働組合は組合員の代表として会社側と交渉します。

団体行動権

団体行動権とは、労働条件などの改善交渉が進展しないときに、労働者が要求を実現するために団体で行動する権利のことです。争議権と呼ばれることもあります。

デモ(デモンストレーション)やストライキが、団体行動権に関する行動の具体例です。デモは抗議の意思を示すために集会や行進を行うこと、ストライキは労働者が団結して労働を拒否することを指します。ストライキについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

ストライキの意味とは?意味・方法(やり方)や要件をわかりやすく解説

なお、公務員などの労働三権については、一部制限されていることがあります。

労働組合に加入するメリット

一般的に単独よりも団体の方が会社と交渉しやすいため、労働条件や職場環境の改善につながる可能性がある点が、労働組合に加入することのメリットです。また、個人的に弁護士に相談するよりも、費用を抑えられる可能性もあります。

ひとりで悩みを抱えることが減る点もメリットです。労働組合の集まりに参加して悩みを打ち明けることで、不安を解消できることがあります。

労働組合を作る際・加入する際の注意点

労働組合の結成や加入を検討している場合は、人によって加入できないケースがある点に注意が必要です。例えば、役員や人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者は加入できない可能性があります。



また、加入すると労力がかかる場合がある点にも注意しましょう。特に、役員に就任した場合は、資料制作や打ち合わせなどに時間を取られます。

さらに、費用がかかる点にも注意が必要です。各組合で定められた組合費が、毎月徴収されます。

会社が労働組合・組合員にしてはならないこと

労働組合や組合員の権利を守るため、労働組合法では会社がしてはならないこと(不当労働行為)が定められています。主な不当労働行為は、以下の通りです。

・組合員であることや活動を理由に不利益な扱いをする
・団体交渉を拒否する
・運営に対して支配や介入をする

それぞれ詳しく解説します。

組合員であることや活動を理由に不利益な扱いをする

会社は労働者が組合員であることや組合員としての活動内容を理由として、不利益な扱いをしてはなりません。不利益な扱いとは、減給・降格・解雇などを指します。

また、救済申立てをしたことに対して、不利益な扱いをすることも禁じられています。救済申立てとは、会社から不当労働行為を受けた際に、第三者機関である労働委員会に救済を申し立てることです。

団体交渉を拒否する

労働組合から申し込まれた団体交渉について、正当な理由がないにもかかわらず拒否することも禁止されています。「正当な理由」の具体例は以下の通りです。

・法的手続きで決着した問題について、再び交渉を求められた
・労働組合側による暴力行為が懸念される
・労働組合側が、会社の顧問弁護士の同席を拒否した

なお、正当な理由なしに団体交渉を拒否した会社には、労働委員会から団体交渉に応じるよう命令が出されたり、労働組合側から損害賠償請求を出されたりする可能性があります。



運営に対して支配や介入をする

会社が労働組合の運営に対して支配したり、介入したりすることは認められていません。会社による労働組合の支配や、労働組合の弱体化につながる可能性があるため、労働組合に対して資金を援助することも禁じられています。

その他、労働組合に加入しないことや脱退することを条件として、労働者と雇用契約を結ぶことも禁止されていることです。ただし、労働組合が工場・事業場の過半数を代表している場合は、「労働組合員であること」を雇用条件とした契約の締結はできます。

労働組合とは労働者が労働条件の改善を図るための団体

労働組合とは、労働条件の改善などを目的として労働者が団結してつくる団体を指します。原則として、労働者や労働組合には、団結権・団体交渉権・団体行動権といった労働三権が与えられています。

ひとりよりも会社側と交渉しやすくなる点が、労働組合に加入するメリットです。ただし、加入すると組合費が毎月かかることや、活動に時間を取られることがある点に注意しなければなりません。

快適な職場で働きたいなら、メリットや注意点を理解した上で労働組合への加入を検討しましょう。

参考:厚生労働省「労働組合」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。

2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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