【田園日記~農と人の物語~ Vol.33】海の幸と山の恵みをたっぷり詰めた「くるみ入り押しずし」
初夏の訪れは「塩クジラ」とともに
秋田県南東部の横手盆地。豪雪地帯であり内陸のため、冬寒く夏は暑い横手市では、昔から滋養強壮に効くクジラ肉を食べる習慣がありました。
地元の店では、季節を問わずクジラ肉を乾燥させた「干しクジラ」が並び、初夏には、皮付きの脂身を塩漬けにした「塩クジラ」が出回ります。
「かむとジュワッと脂が出てくる。独特の香りと食感がして、ミズが出回るこの時期には食卓に上がりますね」
JA秋田ふるさと女性部部長の柿﨑由美子さんの言葉に、大きくうなずく女性部の仲間。ミズ(ウワバミソウ)と塩クジラを使った「みずかやき」は、秋田の夏を代表する郷土料理の一つです。場所によって「クジラ汁」「クジラかやき」とも言われます。
しかし、この地での主役はあくまで、初夏に旬を迎える山菜のミズ。田植えを終えた祝いの”さなぶり”では、かならず登場します。「これを食べると夏が来たな」と感じるそうです。
次世代につなぐ”かやき文化”
ところで「かやき」とは、貝殻を鍋に見立てた東北の郷土料理の総称です。「なんでも入れるのが秋田の”かやき文化”」と柿﨑部長。ミズと塩クジラのほか、タマネギ、ジャガイモなど家庭によってさまざまな野菜が入り、味つけも、しょうゆ派・みそ派があります。
「タマネギを入れると甘みが増す」「ジャガイモを入れるとトロッとする」など、各家庭での工夫が、秋田の”かやき文化”をつないできました。「それでも、塩クジラを食べる機会は減りました」と、柿﨑部長。
女性部では郷土の食文化や食材を、次世代につないでいくための活動も展開。地元の小学校で五年生を対象に「お米学習会」を開催し、米や野菜など地元農産物の食べ方を伝えています。また、秋に開催する市のスポーツイベントでは、炊きこみご飯や漬け物を振る舞っています。
また昨年は、JA秋田やまもと女性部を訪問し、交流会を開催。食農教育や伝統食のたいせつさ、次世代につなぐ必要性を確認し合いました。
「今はなかなか手に入りにくい塩クジラの代用で、豚肉や牛肉を入れたりも。いろんな食べ方があっていいと思う」と、柿﨑部長は言います。
この日のテーブルに並んだのは、ジャガイモ入り「みずかやき」と、ミズの根元を刻み、みそを加えた「ミズたたき」。残ったミズも他の野菜と「浅漬け」に仕立てました。
先人の知恵と工夫が詰まった”初夏づくし御膳”。これは、ご飯が欲しくなります。
「みずかやき」の材料と作り方はこちら
【材料】(4人分)
ミズ …1束(200g)
塩クジラ…30g
ジャガイモ…2個
ナス…2本
豆腐…半丁
みそ…60g
水…800mL
【作り方】
1. 塩クジラは棒状に切る。熱湯に10秒ほど通し、ざるに上げておく。
2. ミズは葉を落として薄皮をむき、4~5cm長さに切る。ジャガイモ、ナス、豆腐は食べやすい大きさに切る。
3. 鍋に分量の水を入れ、ジャガイモをゆでて火が通ったら、塩クジラ、ナスとミズを加える。
4. ナスに火が通ったら、豆腐を加え、みそを入れて調味する。沸騰する手前で火を止める。
※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2025年9月号に掲載されたものです。
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