2023年4月よりアニメ放送が始まった『僕の心のヤバいやつ』。
これまでにも様々なマンガ賞を度々受賞し、すでにSNSを中心としてマンガ好きの間では話題になっていた“僕ヤバ”。

そんな本作が今回のアニメ化にあたり、主題歌にヨルシカ「斜陽」が抜擢された点も注目を集めています。

アニメ『僕ヤバ』OPにヨルシカが抜擢されたわけ。「斜陽」は山...の画像はこちら >>

アニメ『僕の心のヤバイやつ』メインビジュアル

若い世代を中心として、文学的な世界観と軽やかで切なさを孕むサウンドが人気のユニット・ヨルシカ。彼らの音楽と『僕ヤバ』が起こす化学反応とは?

重度の二次元オタク兼ミュージシャン歴10年のライター・曽我美なつめが主題歌曲の魅力と物語そのものの魅力、両方から解説します。

陰キャ男子と天然美少女のほのかな恋

『僕の心のヤバいヤツ』は、陰キャで中二病な主人公・市川京太郎と、教室でも目を引く存在のクラスメイト・山田杏奈の交流と、徐々に近づいていく距離感を描いたラブコメディ作品です。

これまでにも「このマンガがすごい!2020」オトコ編第3位、「次にくるマンガ大賞2020」Webマンガ部門第1位など、様々なマンガ賞を度々獲得。今回のアニメ化を心待ちにしていたファンも、きっと多い事でしょう。

アニメ『僕ヤバ』OPにヨルシカが抜擢されたわけ。「斜陽」は山田と市川の距離感を表す?

『僕の心のヤバイやつ』1巻 (秋田書店)

本作の人気の理由のひとつが、非常に親近感を得やすいキャラクターたち。

主人公である市川の陰キャ&中二病感は、いわゆるオタクとして生きてきた人々の中にはどこか近しいものを感じる人も多いはず。
コメディタッチで描かれる彼の挙動に自分の“黒歴史”な学生時代を思い出し、つい頭を抱えたり“あるある!”と笑ってしまう人もいるのではないでしょうか。

一方でヒロインの山田も、雑誌モデルをつとめるような美少女にもかかわらず、お菓子が大好きであったり、時々かなりどんくさい行動を取ったりと、マイペースでツッコミ甲斐満載のどこか抜けている女の子です。

良くも悪くも見た目のイメージから、大きく乖離した行動を時折繰り広げる山田。当初は見ているだけの存在だった彼女に対し、「つい目が離せない」「思わずツッコんでしまう」という形で、市川の関心が少しずつ高まっていくのです。

同時に、内気な性格の一方でややずれた大胆さを持つ市川のことを、山田もまた関わりを持つ中で「面白いクラスメイト」と認識するようになります。

互いへの好奇心に近い気持ちから始まった、市川と山田の関係性。それが様々なクラス行事や同級生との関わりを経て、ゆっくりと恋心に変わっていく。思春期独特の名前にしがたい二人の心の揺れ動きが、多くの読者の目を惹きつける本作のポイントでもあります。

アニメ『僕ヤバ』OPにヨルシカが抜擢されたわけ。「斜陽」は山田と市川の距離感を表す?

『僕の心のヤバイやつ』8巻 (秋田書店)

太陽の山田と夜の市川。ふたりの関係性を“斜陽”で表す

マンガ原作では、恋愛要素と同様にコメディ色が強く描かれていた本作。主題歌アーティストが抒情的な世界観を得意とする“ヨルシカ”だと知った際、少しの違和感を覚えたファンもいたのではないでしょうか?

ですが、ギャグ色をやや控え青春モノのイメージがより前面に押し出される形をとったアニメ版。

まだ恋とは呼べない、互いへの淡い気持ちを持つ二人。そんな彼らの物語をさらに鮮やかに彩るのが、今回の主題歌であるヨルシカ「斜陽」なのでしょう。

ボカロPとしても高い人気を誇っていたコンポーザー・n-bunaと、ボーカルsuisの二人組ユニットであるヨルシカ。文学性のある歌詞と軽やかなサウンドや旋律、そしてsuisの穏やかで優しい歌声。それらが組み合わさったどこか切ない響きやメロディが、ヨルシカの曲の大きな魅力でもありますね。

今回の「斜陽」の書き下ろしにあたり、コンポーザーであるn-bunaは公式サイトにて「言葉にするには難しい関係にはシンプルな比喩が合うように思います」とコメントしています。


曲タイトルの斜陽は、西に傾き始めた夕日を指す言葉。太陽が沈み昼から夜へと移り変わる日暮れの情景を思い起こさせる言葉です。

人との交流を避け、根暗な性格で独りであることも厭わなかった市川。そんな彼が興味を惹かれたのは自分と真反対の、明るく太陽のような存在の少女。そんな二人の対比を夜と昼で表し、徐々に二人の距離が縮まっていく様を昼夜の境目である夕方、「斜陽」の煌めく時間として表現したのが、今回の主題歌というわけですね。
今作のOPも、上記の描写が非常にわかりやすく示された映像ともなっています。

また同時に陽の傾き始める夕暮れは、時間にして一瞬で過ぎ去ってしまう短い時間。
どこか儚くセンチメンタルな情景を思わせる点も、気づけばあっという間に過ぎ去ってしまう短い青春時代とのリンクを感じさせます。

物語で描かれる二人の一瞬一瞬の交流の瞬間が、今この時にしかない尊い時間であること。
「斜陽」はそんな作品の魅力にも気づかされる、非常に叙情的な楽曲でもあるのでしょう。

本来はラブコメディ色の強い作品の別の一面として、青春の切なさを上手に切り取ったのは、やはり繊細で丁寧な楽曲づくりを得意とするヨルシカならでは。
マンガで元々ストーリーを知っている人々にとっても、新たな作品の魅力に気づくきっかけとなる。

今回の「斜陽」は、そんな主題歌でもあるのかもしれません。

一見正反対の存在のように見える、主人公・市川とヒロイン・山田。
二人が関わるようになったきっかけから、周囲を取りまくクラスメイトも交えつつ、彼らの関係性はここからどのように変わっていくのか。これからの展開を暖かく見守りましょう。

(執筆:曽我美なつめ)

TVアニメ「僕の心のヤバイやつ」作品情報

アニメ『僕ヤバ』OPにヨルシカが抜擢されたわけ。「斜陽」は山田と市川の距離感を表す?

2023 年 4 月よりテレビ朝日系全国 24 局ネット“NUMAnimation”枠・BS 朝日にて TV アニメ放送開始!!

【イントロダクション】
“尊死“続出で大反響!今一番応援したくなる、青春初恋ラブコメ!!コミックス累計発行部数は 260 万部を突破。
「このマンガがすごい!オトコ編」に 2 年連続ランクイン、「次にくるマンガ大賞 2020 Web マンガ部門」では 1 位を獲得し、注目を集めている『僕の心のヤバイやつ』。
大人にも刺さる甘く切ないストーリーながら、くすりと笑える展開に中毒者が続出し大きな話題を呼んでいる。そしてついに、2023 年 4 月に TV アニメが放送決定。監督を務めるのは叙情的な演出に定評のある赤城博昭(『からかい上手の高木さん』)。
シリーズ構成・脚本は細やかな人物描写を得意とする花田十輝(『ラブライブ!』『響け!ユーフォニアム』)、
キャラクターデザインは勝又聖人(『五等分の花嫁∫∫』)、音楽は牛尾憲輔(『映画「聲の形」』『チェンソーマン』)が担当。
アニメーション制作は色彩の美しさに定評のあるシンエイ動画が務める。さらに市川京太郎役に堀江瞬、山田杏奈役に羊宮妃那を迎え、市川と山田が織り成す初恋模様をリアルに表現。原作の紡ぐ世界観、そしてもどかしいほどゆっくりと近づいていくふたりの心を丁寧に描いていく。【ストーリー】
市川京太郎は殺人にまつわる猟奇本を愛読する、重度の中二病男子。
同じクラスの美少女・山田杏奈をチラチラと見ては、ヤバめな妄想を繰り返していた。
そんなある日、山田が市川の聖域・図書室にやってくる。
一人だと思い込み、大口でおにぎりを頬張ったり、機嫌よく鼻歌を歌ったりと、思うままに振る舞う山田。
予測不能な行動を繰り出す姿に、市川は徐々に目が離せなくなっていき......。【スタッフ】
原作:桜井のりお(秋田書店「マンガクロス」連載)
監督:赤城博昭
シリーズ構成・脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:勝又聖人
音楽:牛尾憲輔
制作:シンエイ動画【キャスト】
市川京太郎:堀江瞬
山田杏奈:羊宮妃那
小林ちひろ:朝井彩加
関根萌子:潘めぐみ
吉田芹那:種﨑敦美
足立翔:岡本信彦
神崎健太:佐藤元
太田力:福島潤
原穂乃香:豊崎愛生
市川香菜:田村ゆかり
南条ハルヤ:島﨑信長■公式HP:https://bokuyaba-anime.com/
■公式Twitter:@bokuyaba_anime
■権利表記:©桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会