20世紀後半のプーマを知っている人ならたまらないスニーカーが発売される。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“...の画像はこちら >>

このたび復刻された「スリップストリーム スネーク」。

「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」。2万7500円/プーマ 0120-125-150


「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」だ。

プーマが今、バスケットボールのコートでじわりとその存在感を高めている。

ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたばかりのラメロ・ボール(シャーロット・ホーネッツ所属)を獲得したのもプーマなら、高校バスケ界の期待の大型新人、マイキー・ウィリアムズを獲得したのもプーマだった。高校生がスポーツメーカーとエンドースメント契約を結んだのはこれがはじめて。

今やプーマには未来のドリームチームを担う面々がずらりと揃っている。ラメロやマイキーのほかにも、ディアンドレ・エイトン、マイケル・ポーター・ジュニア、RJ・バレット、カイル・クーズマといったプレーヤーがプーマ・ファミリーに名を連ねる。あと数年もすればアメリカのバスケットボール業界はプーマ一色になるかも知れない。

そんなプーマを象徴するのが「フュージョン ニトロ」であり、「コート アンド ライダー」だった。


プーマが自信を持つ2つのモデル

「フュージョン ニトロ」はみずから“他に類をみない”と胸を張ったフィット感を実現するフュージョンフィット、反発性とクッション性を両立させたニトロフォームというプーマ自慢のテクノロジーを搭載した一足。東京オリンピックで金メダルを獲得したアメリカのスカイラー・ディギンス・スミスとブレアナ・スチュワートが履いていたのがこのモデルだった。

「コート アンド ライダー」はやはりプーマが編み出した高反発素材のライダーフォームと耐久性のあるラバーアウトソールを掛け合わせた一足で、軽量性の面でも群を抜いている。Bリーグではおなじみのモデルだ。


スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる



この流れを加速すべく、今年リリースされるのが「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」である。
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スパイク・リーetc. ブラックカルチャーを象徴するモデル

「スリップストリーム」はNCAAのカレッジ向けのトップモデルという位置付けで1987年にローンチされた。見どころはアンチショックシステムと呼ばれるカップインソール構造にある。

ベースをポリウレタンとし、加重がかかる踏みつけ部のみEVAを充填することで安定性とクッション性を両立させた。

それまでポピュラーだったラバーゾッキは安定性こそあるものの、硬度があり、クッション性には欠けていた。アンチショックシステムは文字どおり画期的なインソールだった(「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」は街履きとしての用途を踏まえてEVA素材のカップインソールを採用している)。

スネークのエンボシングレザーをまとった「スリップストリーム スネーク」はストリートでバッシュが履かれるようになったムーブメントに応えるかたちで翌1988年にローンチされた。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

1988年当時のカタログ。左の「ザ・ビースト」も気になる。


背景にはスパイク・リーに代表されるブラックカルチャーの盛り上がりがあった。ストリートの気分を的確にかたちにした「スリップストリーム スネーク」は熱狂的に支持された。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

プーマはブラックカルチャーの盛り上がりを足元から支えた。


日本でもカタログに載り、展示会にも並んだが、残念ながらドロップ。
その頃の日本においてはまだ、ストリートカルチャーは緒に就いたばかりであり、時期尚早と判断されたためだ。

案に相違して、正規ルートに乗らなかった「スリップストリーム スネーク」は高値で取引された。ブランドコミュニケーションマネージャーを務める野崎兵輔さんもその熱気にあたったひとりである。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

野崎さん私蔵の「スリップストリーム スネーク」。


「学生だったわたしは渋谷のキャットストリートにあったレッドウッドフットウェアで手に入れました」。


ストリートの流儀を重んじながらのアップデート

35周年を機にローンチされる「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」はその歴史ではじめてローカット・モデルを採った。ハイカットよりもローカットを好む日本のカスタマーを念頭においてのことだった。

レースステイの間隔を広げたこともこのモデルのこだわりだ。オリジンは研究が進んだ現代の設計思想に照らし合わせれば狭かった。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

オリジン(左)に比べ、アイレットの間隔が広いのがわかるだろう。


「かつてのストリートではワンサイズ大きいスニーカーを履くのがクールでした。シューレースをぎゅっと締めて足に合わせていたんです。この履き方であればレースステイが多少窮屈でも問題ありません。


しかし、フットウェアというものはジャストサイズを前提に設計されている。正しく履こうと思えばレースステイをそのままにしておくことはできませんでした」(野崎さん)。

ひとえにそれはスポーツメーカーとしての良心である。長時間の歩行も快適なEVAのカップインソールも、TPUからガラスレザーへ変更して耐久性を高めた踵回りをホールドするパーツも、すべては同じ文脈でとらえることができる。 

一方でシューレースは織り感の強いオリジンのナイロン混ではなく、しなやかなコットンを選んだ。なぜならば当時のストリートで好まれたシューレースだったからだ。履き心地を損なわないかぎり、オリジナルに忠実に。それがこのモデルの勘どころだ。

しかしなんといっても驚かざるを得ないのは往時のそれを再現したスネークのエンボシングレザーだ。斑が寸分違わず再現されているのがわかるだろう。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

スネークレザーのエンボシングレザーは斑のサイズやバランスも忠実に再現されている。


生産は日本である。

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いまや世界に轟くMIJ(MADE IN JAPAN)

「プーマはその初期より日本で造ってきました。本国の方針で生産拠点は絞り込まれましたが、グローバル認可を受けた工場には継続して生産をお願いしてきました。スネークの生産を委ねているのもその工場です」(野崎さん)。

斑の美しさは、革づくりから一気通貫の生産態勢を整えている工場だから可能となったものなのだ。

グラマラスなシルエットもまた、日本製のプライオリティ。木型の起伏を正確に再現したそのシルエットは釣り込みに手仕事を採り入れた賜物である。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」はプーマが全幅の信頼を置く日本の工場でつくられている。


「スリップストリーム ロウ VTG MIJ スネーク」はMIJに属するモデルだ。MIJはかつては匠コレクションの名で展開していたMADE IN JAPANを謳うコレクション。日本の職人技の確かさを伝えんとするコレクションである。

継続は力なりを証明するような話だが、現在では本国でもなにかにつけてこの日本製を推す声が多くなっているという。

スネーク柄の「プーマ」復刻。これを機に今年、バッシュ業界が“プーマ元年”になる

ウォルト・フレイジャーのシグネチャーモデル「プーマ クライド」。のちの「プーマ スウェード」だ。




20年ぶりにバスケットシーンに帰ってきた

フットボールをはじめとしたフィールドのスポーツでその名を知られたプーマがバスケットボール市場に参入したのは1960年代後半とのこと。アメリカというマーケットを考えたときに、バスケットボールは避けて通れないスポーツだったからだ。

プーマは「プーマ クライド」と「ラルフ・サンプソン」を引っさげてバスケットシーンの牙城にいともたやすく食い込んだ。種まきを終えたプーマが満を持してリリースしたのが「スリップストリーム」だった。

このままコートでの存在感を高めていくかに思えたプーマだったが、史実によれば1998年、プーマはバスケットボール界から身を引いている(完全撤退は2002シーズン)。ファッションヒストリーに詳しい人ならぴんときたかも知れないが、’98年はジル サンダーとのコラボレーションが始まった年だ。

そう、プーマはその年を境にファッション業界へと大きく舵を切ったのである。

2022年を生きる僕らなら、これがこよなく正しい選択だったことがわかる。ファッションデザイナーとのコラボに先鞭をつけたプーマはジル サンダー以降もミハラヤスヒロ、ニール・バレット、アレキサンダー・マックィーン、セルジオ・ロッシ、フィリップ・スタルク……と毎年のように気鋭のデザイナーとタッグを組み、従来のスポーツメーカーにないポジションを創造し、感性を研ぎ澄ましてきた。

そうして実に20年ぶりにプーマはバスケットシーンに舞い戻った。メジャーから攻める鉄板の戦略を採りつつ、ファッションという新たな武器を手に入れたプーマがそのダンクを外す未来はちょっと想像しにくい。


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