
JR飯田橋駅からほど近い雀荘を取材場所に指定された。
舞台は37年の歴史を誇る「東南荘」。
オーナーが変わっても連綿と営業を続けているらしい。
中に入りますよ。
看板娘、発見。
さっそく、ご登場いただきましょう。
「よろしくお願いします」。
こちらは、名古屋市出身の松嶋 桃さん。現在、プロ競技麻雀の世界では5つの主要団体があり、プロ雀士の数は約2500人。
3歳ぐらいの頃の桃さん。
麻雀を覚えたきっかけは何だろうか。「麻雀好きのおじいちゃんですね。小学校に入る前の冬休みに、静岡のおじいちゃんの家に遊びに行った際、『そろそろ麻雀をできないとな』と言われて教え込まれました」。
人生を決めたおじいちゃんと清水みなと祭りにて。
以降、定期的に家族麻雀の卓が立つ。
やがて、3歳下の弟も参戦するように。
小学校を卒業すると中高一貫の中学校に進学した。「髪の毛が濡れるのがダルい」という理由で水泳部を辞め、「スパルタ指導が辛い」という理由で次に入った器楽部も退部。のんびりとした割烹部で残りの中学生活を送る。「料理はまったくできないんですが、メレンゲを泡立てるのだけは上手いと言われていました。部活がない日は友達とマックで3時間ぐらい喋ったり。その帰り道に本と漫画を買って家で読むという感じです」。勉強はほとんどしなかったが、高校2年生の終わりになるとさすがに大学受験が意識せざるを得なくなる。桃さんは猛勉強を始めた。
京都での麻雀ライフを満喫する桃さん。
「サークルではボロい一軒家の2階を借りて部室にしていたんです。そこに行けば対戦相手がいるという環境で。でも、先輩が卒業したり行方不明になったりで、だんだん卓が立たなくなり、そのあたりからひとりでフリー雀荘で遊ぶように。同時に雀荘でバイトも始めました」。
ボリュームたっぷりで、ソースは10種類以上から選べる。
お次は塩ホルモンの先駆け的存在の「アジェ」。「名物は『ホソ塩』で、関東ではホソって聞いたことがないので、どこの部位かはいまいちわかっていませんでしたが脂がジューシーで本当に美味しい。あの店でしか食べられない味です」。
昨年8月には有楽町に東京1号店を出店。
さらに、「ちょっとお高いので、いいことがあったときに行っていた」というのは「天壇」という有名な焼肉店。「数年前に赤坂にもお店があることを知って、めちゃめちゃ通っています。火は通っているのに食感がかなりレアで臭みもない『レアステーキユッケ』が本当に最高。ご飯に乗せて食べたい一品です」。
つい最近も赤坂店を訪れて幸せを噛みしめる桃さん。

「まあ、何とかなるでしょう」という表情。
雀荘のバイトは続けているものの、身の振り方は決めないといけない。考えた末に、桃さんはロースクールに入学した。「そこも卒業できたんですが、つくづく法律は向いていないと思って。じゃあ、麻雀プロになろうかなという流れです」。こうして、桃さんは日本プロ麻雀協会の試験を受ける。試験内容は麻雀の知識と一般教養を問う筆記、受験生同士で卓を囲んで打ち方を見る実技、そして人となりや志望動機を評価する面接。当時の合格率は50%ぐらいだったというが、一発で合格した。以降、リーグ戦の対局、各種イベント出演、スポーツ新聞の麻雀問題考案、YouTubeの収録などプロ雀士として活躍するほか、テレビのクイズ番組にも多数出演してきた。
桃さんは斎藤さんのアシスト役として出動。
「彼女はプロ雀士に必要な実力はもちろん、人間性を兼ね備えています。見ていてすごいと思うのは、麻雀業界を発展させたいという強い思いも持っていて、そこに向かって最短で走る筋道を考えて、しかもきちんと実行しているところ」。そう、斎藤さんが直接声をかけられて指導している研修、多くのイベントやテレビ番組への出演、これらすべては麻雀業界の発展につながる活動なのだ。もうひとつの重要な仕事は、ひと握りのトッププロだけが出場できる麻雀プロリーグ戦、「Mリーグ」の実況。これに担当できるのは桃さんを含め、3人しかいない。
視聴者の目線を大切にした実況が評判。
また、意外なところにも桃さんファンがいる。そのひとりが足立区綾瀬の人気ラーメン店、「陽はまたのぼる」の店主だ。「TwitterでMリーグのことを書いてくださっているのをたまたま見たんです。さらに、知り合いがこのお店の常連だったので連れて行ってもらいました。限定メニューの日にしか行ったことがないんですが、種類も豊富でとても美味しいです」。
看板メニューは特製の煮干しダシに贅沢に使用した「煮干しそば」。
麻雀の話に戻そう。桃さんのうち筋はおっとりとした性格とは真逆の攻撃型。「京大式小型肉食獣」という愛称で親しまれている。「いろいろと研究した結果、対戦では攻撃型のほうが勝率が高いという結論に達しました。ホンイツ、チンイツなどの染め系が好きですね」。役満でも国士無双(コクシムソウ)や四暗刻(スーアンコウ)などは割とよく見るというので、小粋な映える役を作ってもらった。
出た、緑一色(リューイーソー)四暗刻(スーアンコウ)のダブル役満。
全自動卓の普及によって、桃さんが家族麻雀でやっていた手積みの卓でプレイすることはもうない。
サイコロも自動で回ります。
店内には翻数ごとの得点表も掲示してあった。
そこそこ麻雀好きの筆者も、いまいち把握しきれていない。
プロ雀士に固定給はない。ギャラは仕事の依頼先から出る。生き馬の目を抜く世界で週に6日は仕事をしているという桃さん。癒やしのひとときは何ですか?「マルチーズとトイプードルのミックス犬を飼っているんですが、なぜか散歩が嫌いでインドア派。家でその子と遊びながら麻雀動画かクイズ動画を見ながらダラダラしているときがいちばん幸せです」。
ボール遊びが大好きな「ののちゃん」は2歳半の女の子。
今日はありがとうございました。「京大式小型肉食獣」の桃さん、最後に読者へのメッセージをお願いします。
5万人以上のフォロワーがいるTwitterアカウントはこちら。
[取材協力]日本プロ麻雀協会https://npm2001.com