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オールシーズン使える定番アイテムで、ワードローブの1軍スタメン的存在のロンT。しかしこの赤い一着は単なるロンTではない。


注目は背中に宿るアートワーク。

人差し指で天を突き、もっさり頭の人物が背負っているのはナンバー10と“KASHIMA”の文字。パンツの丈が太腿までのシルエットに時代が現れている。

なんてことまで感じとる読者はきっとオーシャンズ世代。そう、このアートワークは現役時代のジーコなのである。


ジーコが背中で躍動するロンT

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望



サッカーフリークには説明不要の偉大な人物であるジーコは、ブラジル代表の10番を背負い、3度のワールドカップに出場したプロサッカー界のレジェンド。

その素晴らしいキャリアから“サッカーの神様”とも呼ばれ、それでいて1991年にはまだプロサッカーリーグのない日本へやってきた。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

今も鹿島アントラーズの要職に就き、日本サッカーとの結び付きを大切にしているジーコ。


アマチュアリーグに属するチームに身を投じ、のちにJリーグが開幕してからも、鹿島アントラーズで“プロとはなんたるか”を日本のサッカーフィールドに染み込ませていった。

さらに引退後の2006年には監督として日本代表をワールドカップのドイツ大会へ。長きにわたり日本サッカーの成長に尽力してきた人物なのだ。


すべてのサッカー好きに届けたい3つの理由

このグラフィックだけでグッとくるロンTだが、さらにサッカー好きを熱くするポイントが3つある。

ひとつ目は、このロンTがジーコが長く10番を背負い、今もクラブアドバイザーを務める鹿島アントラーズ自身が進めるプロジェクト「FLIP SIDE」によって生まれていること。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

茨城県の鹿嶋という小さな海辺の街がホームのアントラーズは「地域に根ざしたスポーツクラブ」というJリーグの理念を最も体現するチーム。

地域に愛され、そして強い。


ふたつ目は、プロジェクト全体の指揮を、日本を代表するファッションブランド「サカイ」でクリエイティブディレクションなどを担う源馬大輔さんが行っていること。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

ファッションもフットボールも世界基準を知る源馬大輔さん。


3つ目は、特徴的なアートワークを、その線画のアートが国内外から高い評価を得ているアーティストの長場 雄さんが描いたこと。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

かねてより親交のあった源馬さんから声がかかりプロジェクトに参加した長場 雄さん。アントラーズの試合を一緒に見た際には、「学生時代にキーパーをしていた源馬さんの的確な解説を聞きながら観戦するという贅沢な機会になりました」と振り返る。


つまり、サッカー、ファッション、アートの3者越境コラボで誕生したのが、このロンTなのである。
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サッカーをライフスタイルにする

もう少し、このロンTについて説明していこう。まずはFLIP SLIDEについてだ。

FLIP SIDEとは、レコードのB面や対照的といった意味を持つ言葉で、鹿島アントラーズと源馬さんが今年から取り組む共同プロジェクトだ。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

胸に宿る「KASHIMA ANTLERS」の文字は、紛れもなくプロサッカークラブが秀逸なアパレルを手掛ける証となる。


その中で、源馬さんは鹿島アントラーズが手掛けるアパレル「F.D.」の監修を新たに担当。

 F.D.はアントラーズの恒久的なスローガン“FOOTBALL DREAM”を意味するもので、アパレルやキャップ、バッグパックなどを揃えるコレクションを通して、ファンの日常におけるサッカーの存在感を強めたい思いから2020年に始まった。


いわばサッカーをライフスタイルとする試みだと言っていい。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

「F.D.」はオンラインストアにて購入可能。


思えば日本のスポーツは、競技とライフスタイル、カルチャーとの間に大きな溝があった。

そこに一石を投じるのがF.D.。いつでもどこでもファンとチームと繋がっていられるアイテムを送り出すプロジェクトなのである。

鹿島アントラーズでMD事業の責任者を務める根本謙司さんは「もともとは、ファンからの要望に普段使いできるアパレルや日用品に関する声が多かったことにあります。

そして、どのようなコンセプトで展開するかとなった際、アントラーズ色を薄めて『このウェア、格好いいな』と手にして、初めて製作しているのがアントラーズだと知る。そのような想定外の驚きや反響を目指してスタートしたんです」。
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街中にゲームシャツを着る人を増やしたい

今回のプロジェクトを指揮する源馬さんは、かつて英国・ロンドンに暮らしたことがあり、本場のフットボールも堪能したという。

そして東京に暮らす今も、愛するアーセナルFCをはじめとしたプレミアリーグの放送を楽しみしている。

「ロンドンではフットボールが人生の一部であり、生き甲斐だという人たちを多く見てきました。愛するアーセナルのホームゲームは6万人収容のスタジアムがフルハウス。
街中では試合を中継するパブに人が集い、平日でも週末の決戦に向けて熱く語るファンの姿がそこかしこに見られます。フットボールが文化であり、生活なんだと思いますね。

そのような光景を知っているので、今回の話をいただいたときには、まず鹿島の街を赤く染めたいと思いました。

そして制作するアイテムを通して、チーム関係者やファンの人たち、そして地域に、アントラーズがもっと広く深く染み込んでいくきっかけを作りたいと思ったんです」。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

人口6万7000人ほどの町に存在する約4万人収容のサッカー専用スタジアム。ホームゲームでは来場するファンによって場内が真っ赤に染まる。いかに地域にサッカーが根付いているのかがわかる。


そのためにもチームが強くなることは大切。チームの強化には資金が大切。そのサイクルの循環にFLIP SIDEを貢献させたいと、源馬さんは言う。

「やはりサッカーって、チームを強化するための資金がとても大事なんです。その原資のひとつがマーチャンダイズです。


この考えに関して、アントラーズの皆さんとはすぐに共鳴しました。プロサッカークラブとしての意識の高さは、8回のリーグ制覇を含め、国内最多タイトル獲得数を誇るチームだからこそだと思うし、関係者は誰もがチームに誇りと愛情を持ち、日々を戦い抜いています。

熱いですね、会社が。いい仕事ができると感じました」。

源馬さんの役割はプロジェクト全体のディレクション。デザイン面においてはオーセンティックであることを意識し、既存のファン、潜在的なファンたちのクローゼットに1枚はあるような存在になっていく物を目指した。

背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

今回のコレクションは、ロンTを中心に、Tシャツやスウェットも展開した。


「普段の街中で、アントラーズの赤いユニフォームを着ている人は、まず見かけないですよね。

でも街の中にチームのエンブレムのついたゲームシャツを着る人が増えてほしいというのが本音です。エンブレムには誇りが備わっていますし、着る人にはその誇りと共に生きてもらいたいですから。

そうした光景への第一歩。それがFLIP SIDEの立ち位置です」。


背番号10のジーコ、描いたのは長場 雄。このグラフィックに宿る、アントラーズの野望

クラブとファンの情熱を感じる「共闘」の文字。誇りを胸に、日本のサッカーに、スポーツに、新たな歴史を刻んでいく。


第一弾としてリリースされた今回のコレクションは、10月1日のクラブ創設記念日に合わせて今年作られたもので、残念ながら購入の受付はすでに終了している。

ただ規定枚数に至っていないアイテムは、今後オフィシャルショップなどで販売の可能性もあるというから、そのチャンスが来たら逃さず“シュート”で終わりたい。

しかしFLIP SIDEの取り組みは今後も継続していく。近く新しいニュースも発表されるというから、鹿島アントラーズによる、日本のスポーツ文化に一石を投じる次の挑戦を楽しみにしよう。


[問い合わせ]
鹿島アントラーズ
www.antlers.co.jp
「F.D.」オフィシャルオンラインストア
https://antlers.shop/collections/f-d
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